2013 Fiscal Year Research-status Report
放射光を用いたM-A組織中のオーステナイト相の結晶構造解析による相安定性の解明
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24560879
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺崎 秀紀 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (20423080)
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Keywords | ベインゾーン / 最密面グループ / 残留オーステナイトの炭素濃度 / 残留オーステナイトの相安定性 / 溶接熱影響部 / 高強度鋼 / 組織形態 / 結晶学的特徴 |
Research Abstract |
今年度前半においては、前年度に見いだした島状マルテンサイト(M-A組織)に関する知見に対して以下のように結晶学的特徴付けを行った。低炭素鋼の大入熱溶接熱影響部を模擬した熱サイクルによって形成されたベイナイトを対象に、バリアント解析を行い、ブロックが同一ベインゾーンに属するバリアントから形成される場合には、M-A組織が多く形成され(残留オーステナイトの相安定性が低い)、ブロックがシングルバリアントが順次生成して形成される場合には(高温レーザ顕微鏡観察により確認)残留オーステナイトが多く観察されることが分かった(残留オーステナイト相の安定性が高い)。放射光X線回折測定を用いて残留オーステナイトの炭素濃度を平均的に測定したところ、1.00mass%であることが分かった。大入熱溶接時の遅い冷却中にゆるやかにこの濃度に達するため、残留オーステナイト相が多く残り、一部、上記結晶学的特徴を有するブロック内の残留オーステナイトがM-A組織になることがわかった。さらに放射光X線回折測定結果より、冷却速度を速めると、残留オーステナイトが減り、炭化物が増えることがわかった。今年度後期では、この冷却速度が速い場合に形成される、ベイナイトおよびマルテンサイトからなる複合組織のバリアント解析を行い、結晶学的特徴付けを行った。その結果、高温での変態においては、同一ベインゾーンに属するバリアントが選択されるが、冷却中にマルテンサイト開始温度に達すると、バリアント選択戦略を変更し、同一最密面グループに属するバリアントが選択されることを直接観察およびEBSD解析により示した。これにより、入子状にベイナイトおよびマルテンサイトの混合組織が形成され、その形態に対して、結晶学的な説明をすることができた。以上の成果をMetallurgical and Materials Transactions A誌に二報発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
M-A組織の形成要件を、マトリックスの結晶学的特徴および炭素分配を含む相変態挙動の視点からに明示する成果を得られた。そのため順調に研究は進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の二点を今後研究の推進方策とする。 1,より局所的な炭素濃度を測定することにより、残留オーステナイトの安定性についてさらに検証する 2,じん性評価を行い、マトリックスおよび第二相の結晶学的特徴との関係を系統的に整理する。
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