2012 Fiscal Year Research-status Report
常圧から超臨界圧における液中レーザー誘起プラズマナノ構造物質合成
Project/Area Number |
24560882
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
クリニッチ セルゲイ 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00623092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 剛仁 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70452472)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レーザーアブレーション / 高圧力流体 / ナノ構造物質 |
Research Abstract |
本研究では、液中レーザーアブレーションを用いたナノ構造物質合成プロセスにおける圧力の効果に関して研究を行う。臨界圧よりも高い高圧力流体雰囲気でのレーザーアブレーションを行うことで、局所的に高温・高圧の超臨界流体状態が生成でき、超臨界流体雰囲気をともなうレーザーアブレーションが、超臨界水などで問題となる反応容器の耐食性等を気にする事無く、容易に実現可能となる。 当該年度においては、高圧力流体雰囲気として高圧水を用いたZnレーザーアブレーションによるZnOナノ粒子合成に取り組んだ。圧力容器内に設置したZnプレートに、532 nmのナノ秒パルスレーザー(繰り返し周波数:10 Hz、パルスエネルギー:~30 mJ/pulse、パルス幅:3-5 ns)を、焦点距離3 cmのレンズによって集光照射した。アブレーションされたZnを含むレーザー誘起プラズマが生成し、周囲雰囲気である水との反応の後、ZnOナノ粒子が生成された。 X線回折測定(XRD)により、主な結晶性生成物は、ウルツ型構造を持つZnOであることを確認した。また、ナノ粒子のサイズは、約35 nm(大気圧)から圧力の増加とともに減少し、約7 MPa以上においてはそのサイズに極端な変化は見られず10-15 nm程度のサイズとなった。蛍光分光を行った所、圧力の増加に伴うエキシトン由来の蛍光発光の低波長側へのシフトが見られた。更に、欠陥に由来する550 nm近傍のブロードな発光が見られ、その発光割合は臨界圧力付近までは圧力の増加とともに増加するが、臨界圧力付近で急激な減少を示すといった興味深い現象を得るに至った。 上記不連続点が、臨界圧力近傍に存在することから、高圧水の局所的な加熱によって生成した超臨界水雰囲気(臨界温度:647.1 K)の寄与によるものと考えられ、本プロセスの特殊性の一端を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度、Znをターゲットとした高圧力水中レーザーアブレーションプロセスにとりくみ、生成ZnOナノ粒子が持つ特性の圧力依存性を示した。圧力が、ナノ構造物質の特性を制御する一つのプロセスパラメータとなり得ることを示したのみならず、臨界圧力近傍における蛍光特性の不連続性は、超臨界水雰囲気をプロセスに用いるといった、本研究の独創的アプローチの確証を既に与える結果である。また、上記結果には記載できなかったが、エタノール雰囲気やその水との混合雰囲気を用いたレーザーアブレーションによる系統的な研究も既に進行しており、H25年度には、更なる興味深い現象の報告ができるものと思われる。 初年度に既に査読付き論文を1件報告し、招待講演を含む3件の国際学会での発表、2件の国内学会での発表といった成果に結びついている。 研究の発展状況、また、比較的豊富な初年度の業績から、非常に順調に研究が進行していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度に引き続き、エタノール、水の混合比および圧力を変化させた雰囲気によるZnのアブレーションを行う。雰囲気として、新たにメタノール雰囲気も導入し、ターゲット材料としてはTi材料から新たに導入する予定である。更に、S元素を含む雰囲気におけるアブレーションにも取り組む予定である。 生成物質の評価は、フォトルミネッセンス、走査電子顕微鏡、X線回折、ラマン分光、透過電子顕微鏡等を用いて行う。 シャドーグラフ法や発光分光法を用いた反応雰囲気の診断にも取り組み、ナノ構造物質の特性と反応雰囲気との関係を明らかにしていく。 表面修飾剤の適応などとともに、生成ナノ構造物質の経時変化・安定性に関する観察も行なっていく予定である。 様々な雰囲気、様々な材料による研究を通じ、圧力による生成物質の制御性およびそのメカニズムについて考察を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な物品としては、より効率的なナノ構造物質の分析を可能とするべく、遠心分離器の導入を予定している(15万円)。旅費としては、国際学会への参加(25万円)、研究打ち合わせや学会参加のための国内出張(20万円)を計上している。その他、ターゲット材料や化学薬品、レーザー用のフラッシュランプなどの消耗品を予定しており、予算額に沿った使用計画が立てられている。
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Research Products
(8 results)