2012 Fiscal Year Research-status Report
パワー半導体実装におけるナノテルミット反応接合法の開発
Project/Area Number |
24560883
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福本 信次 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60275310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 公三 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70135664)
松嶋 道也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90403154)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 反応拡散 / テルミット反応 / 銅 / 反応速度 |
Research Abstract |
本研究は次世代パワー半導体実装を目指し,銅/銅および銅/Siチップの接合を低温かつ低加圧力で達成することである.そこで従来のはんだ付けに代わる方法として,接合時に複数の相を反応させる反応接合を行った. 本年度は,銅/銅の低温接合に適用する酸化還元反応の基礎的検討を行った.酸化銅II(CuO)および酸化銅I(Cu2O)とアルミニウム,錫などの金属との反応熱を示差走査熱量計によって測定し,X線回折による相同定とあわせて反応現象を調べた. また薄膜Cuと薄膜Snの固液反応拡散を利用した銅の低温接合を行い,少量の液相の枯渇現象を考慮に入れた固液反応過程を調べた.Sn単層およびSn/Cu/Sn多層薄膜をインサート層とした場合,どちらも接合時間および接合温度の増加にともなって接合層はCu6Sn5からCu3Snへと相変態した.ただし,Sn/Cu/Sn多層膜を用いることによって接合層全体がCu3Sn単相に変態するまでの時間を短縮することができた.Cu6Sn5は生成・成長すると同時に液相Sn中に溶解するが,その溶解量は形成するCu6Sn5に対して数%以下であり,ほぼ無視できうる量であることを明らかにした.Cu3SnはSnとCu6Sn5間の反応拡散で生成・成長し,その見かけの活性化エネルギーは約89.0kJ/molであった.この値は,これまでSn系のソルダリングで報告されてきた値とおおむね同じであり,Snの液相量に影響されないことが明らかになった. この接合法を銅/Siチップ間に適用した場合,線膨張係数差に起因する割れが接合層に生じた.そこでSiチップとの線膨張係数差の小さい,CIC板(Cu/インバー合金・Cu)を銅の代わりに用いることによってこの割れを防ぐことに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低加圧力下,可能であれば無加圧状態下で300℃以下の温度で銅同士を接合する場合,ナノ粒子による低温焼結接合や液相を介する固液反応接合などが提案されている.本研究では,テルミット反応および反応拡散によって接合部に高融点接合層を形成することを目的としている.H24年度は,①テルミット反応の基礎的データを得ること,および②複数金属元素間の固液反応プロセスを明らかにすることに主眼をおいた. ①については,酸化物として酸化銅(I)および酸化銅(II)とし,相手材にアルミニウム,亜鉛および錫を選定し,その反応にともなう熱分析を行った.また反応後はX線回折装置を用いて相同定をおこなうことにより,昇温過程におけるテルミット反応の進行挙動を調べている.亜鉛については,熱分析装置(DSC)を汚染する危険性があったため,熱分析はおこなっていないが,他の金属についてはほぼ必要としていたデータを得た. ②については,極微小量液相Snと固相Cuとの反応現象を明らかにするために銅上にSnを薄膜蒸着し,熱処理を行った.また液相量が反応速度に与える影響を明らかにするために,簡易的な電気炉を作製し,Sn溶湯とCuとの反応についても観察を行った.これらの実験から薄膜Snと薄膜Cuの反応拡散を熱力学的および速度論的に考察することができた.これにより次年度以降に展開する多層薄膜を介した反応拡散接合の最適制御に必要な基礎的知見が得られた. 以上のように,初年度はそれぞれの基礎反応現象を明らかにすることができたので,ほぼ目的は達成された.接合層の厚さ(ギャップ)制御については,今後の課題として残った.
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Strategy for Future Research Activity |
主に300℃の接合温度に適したテルミット反応系で炉内での接合を行う予定である.しかしながら,炉内でのテルミット反応接合では,系全体を昇温してしまうためにテルミット反応系における低融点金属は,Snのような低融点材料に限定されてしまう.テルミット反応熱の大きな酸化銅―アルミニウムのような系ではさらに高温が必要となる.そこでテルミット反応をレーザや電気放電などを使ってイグニッションする反応接合を試みる.インサート圧粉層の端部のみを瞬間的に加熱・溶融させ,自発的に反応を接合面全域に生じさせる方法の可能性について調査する.また通電によるイグニッションも試みる.抵抗溶接の電源を用いて数1000Aの電流を10msのオーダーで通電する.接触抵抗および母材発熱によって低融点金属が溶融し,テルミット反応の可否について検討する. これらのいずれの接合方法を用いても,そこで生じる接合層は金属間化合物が主となる.接合材の応力解析を行うためには,それら金属間化合物の機械的物性が必要となるが,信頼できる報告例が少ない.そこでアーク溶解および急冷法によって合金作製を行い,ヤング率,線膨張係数などの数値解析に必要な物性値の測定を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
半導体デバイスの電極接合に求められる接合部厚さは数ミクロン程度と極めて薄いため,接合中のギャップコントロールに精密さが求められる.そこで接合部のギャップをミクロンオーダで制御できる機構を接合装置に付加する. 消耗品として,酸化銅(I)および(II),Sn, Al,Cu粉末などの供試材料,接合断面観察用に研磨材料(アルミナ粉末,エメリ紙,コロイダルシリカ等),埋め込み樹脂,埋め込みモールド,クリップなど,エッチング用薬品およびビーカ類,などを購入する. これまでの成果を論文にまとめ投稿するための英文校正料および投稿料を予定している.また資料収集(複写料)の費用も見込んでいる. 本研究で得られた新接合プロセスとそれに付随する反応現象および接合メカニズム,信頼性について国内では溶接学会,スマートプロセス学会,エレクトロニクス実装学会,金属学会など,また国際会議での成果を報告を予定している.
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Research Products
(3 results)