2013 Fiscal Year Research-status Report
パワー半導体実装におけるナノテルミット反応接合法の開発
Project/Area Number |
24560883
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福本 信次 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60275310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 公三 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70135664)
松嶋 道也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90403154)
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Keywords | 反応拡散 / 銅 / 銀 / 錫 / 金属間化合物 / ヤング率 / 熱応力 |
Research Abstract |
本研究は次世代パワー半導体実装を目指し,銅/銅および銅/Siチップの接合を低温かつ低加圧力で達成することである.そこで従来の高温はんだ付けに代わる方法として,接合時に複数の相を反応させる反応接合を行った. 昨年度の主な結果であるCu3Sn層の形成は,強度および融点の観点において高温鉛はんだの代替接合部として良好なものであった.しかしながら,一方ではんだに比べると硬く,ヤング率が高いために接合部端部での高い熱応力が発生し,場合によってはチップ破壊に至る短所も明らかになった.そこで本年度は熱応力の低減をめざし, An-Sn系の固液反応を利用した接合を行った. まず,有限要素法解析を用いて,接合層の厚さと物性値が生じる熱応力に与える影響を検討した.接合層をCu3Snなどの弾性変形が主である金属間化合物と想定した場合,接合層を薄く,ヤング率・線膨張係数が小さいほどSiチップに生じる熱応力を低減できることを解析結果は示した. そこでCuの接合面にSn/Ag/Sn 3層薄膜を真空蒸着で積層し,銅同士を300℃で接合した.接合層はCu3Sn/Ag4Sn/Cu3Snの3層で構成されていることが透過型電子顕微鏡観察によって明らかになった.接合面に蒸着するSn/Agの積層体積比を変化させることで,Ag4SnとCuの間に生成するCu3Sn層を0.5μm程度と極めて薄くすることが可能になった.Ag/Sn系多層薄膜で接合した接合体は,Cu/Sn系の多層薄膜で接合した場合に匹敵する強度が得られた.またAg4Snのヤング率はCu3Snの50%程度であり,FEM解析の結果,Siチップにおける熱応力も20%低減できることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低加圧力下,可能であれば無加圧状態下で300℃以下の温度で銅同士を接合する場合,ナノ粒子による低温焼結接合や液相を介する固液反応接合などが提案されている.本研究では,テルミット反応を含む反応拡散によって接合部に高融点接合層を形成することを目 的としている.H25年度は,高融点かつ低ヤング率の接合層を形成し,接合層の厚さなどの構造設計も含めて,Siチップにおける熱応力の低減を試みた. 低融点金属としてSn,高融点金属としてAgを交互に薄膜積層することによって、接合過程の高温下において液相の出現と消失を実現し,Ag4Snを主層とする接合層の形成に成功した。ダイナミック硬度測定から見積もられるAg4Snのヤング率は76GPaと比較的小さく,当初の目的であった熱応力の軽減に成功した.ミクロンオーダーでのギャップ制御を可能とする接合装置構成は不完全ではあるが、接合面への供給薄膜構成(積層順序、膜厚)を系統立てて変化させることで、接合ギャップの制御を図りつつある。その結果,約1-2μm厚さのAg4Sn接合層を形成させることができた. ただしこの系の反応熱,接合過程の詳細は不明な点も多く,今後の課題として残った.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、Siチップへの熱応力の低減を目指し,Ag-Sn 2元系多層薄膜の反応拡散接合を行った.Ag添加による接合層の機械的特性の改善は、金属間化合物接合層の新たな可能性を示唆していた。H26年度以降は、この結果をもとに以下のように研究を進める予定である。 1)合金系の探索:Ag-Sn系以外にAl-Zn、Cu-Zn系など比較的低温で液相生成が可能な元素についてそれらの反応熱、反応温度の熱分析を行い、接合層として適用可能な合金系を探索する。また,Cu酸化物の還元反応を利用した接合についても順次実験を進める. 2)接合層合金形成プロセスの明確化:接合層の形成過程はおもに走査型および透過型電子顕微鏡による断面観察をすることで明らかにする。熱分析およびX線回折などの結果と合わせてその液相、固相の共存状態の変化を調べ、接合メカニズムを明らかにする。 3)合金層の物性評価:本接合法で生じる接合部である金属間化合物は,その物性(ヤング率,線膨張係数,熱伝導率,降伏応力など)が不明なものがほとんどである.(4)で計画している有限要素法解析に必要なそれらの物性を得るために,アーク溶解などで合金創製を行い,その物性を測定する. 4)信頼性の評価:本接合法による実装を行ったチップ接合部の近傍の熱応力有限要素法解析を行い、接合層の厚さ、機械的特性、プロセス温度などが応力分布へ与える影響を調べる.これらの結果を接合条件、薄膜構成にフィードバックする。また、サーマルサイクル試験等の環境試験を行い、本手法による実装部の信頼性評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
接合層のギャップ制御の方法を装置制御で行わず,薄膜の積層構造を変化させることで試行したために当初予定していた予算よりも少なくなった.また発表予定の国内外学会の開催日時がH26年度であるために旅費,参加費等の支出がH25年度には含まれなかった. Ag,Cu,Al,Zn,酸化物,などの材料費,接合断面観察用の研磨材料(アルミナ粉末,ダイヤモンドペースト,エメリ紙など),埋込用資材(モールド樹脂,クリップ),薬品などの購入を予定している.また,接合用の治具の作製を予定している.論文投稿に際しての英文校正,投稿費,資料収集費用も見込んでいる.また,得られた成果を国内ではエレクトロニクス実装学会,シンポジウムMateで,また海外ではNMJ2014での発表を予定している.
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