2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560890
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山本 厚之 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70220449)
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Keywords | アルミニウム合金 / 圧延 / 再結晶 / 同一視野観察 |
Research Abstract |
H25年度には,1050アルミニウムの圧延変形に伴う結晶回転の解析に重点を置くとともに,3000系アルミニウム合金および無酸素銅における回復・再結晶挙動の解明も行った.1050アルミニウムに,1パスあたり約30 %の圧下率での圧延を5パス施し,総圧下率84 %とした.その間,同一視野に注目してSEM-EBSD観察を行った.今回は,圧延を続ける必要上,試料は切断できず,各圧延パス後,イオンシンニングの代わりに電解研磨で表面研磨を行った.84 %まで識別できたのは,9個のみであったが,初期方位として代表的な立方体方位と,圧延集合組織を引き継いだ方位の2種類が含まれていた.これらについて,以下が明らかとなった.(1) 30 %程度では,結晶回転は,圧延方向に向かう.(2) 50 %を越えると,結晶回転は圧延方向の逆方向にも向かう.(3) その後,結晶回転は往復運動を示す.(4) 70 %を越えると,結晶方位は,二つに分裂する.分裂したうちの一つは,圧延方向から45°回転した立方体方位であり,他の一つは,{111}面方位であった(雑誌論文1, 3, 6).3004アルミニウム合金における圧延後の回復・再結晶挙動は,1000系および6000系とさほど変わらず,圧延によって形成された転位セルが成長して再結晶粒になる,という機構で解釈できた.3004系では,介在物が多く,粒子誘起核生成が観察された.これも『核生成』と呼ぶのはふさわしくなく,粒子の周囲に形成された転位セルの一つが再結晶粒に成長するだけであることが示された(雑誌論文2).無酸素銅においてもやはり同様に,転位セルから再結晶粒への成長が観察された(雑誌論文4).圧延の方向は,圧下率が高い場合には結晶回転に影響を与えないことも示された(雑誌論文5, 7).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルミニウムおよびその合金について,再結晶粒は,転位セルが成長したものであることを明瞭に示すことができた.『ブロック仮説』として60年前からよく知られていた機構であるが,これを実際に組織変化として示したのは,本研究グループがおそらく初めてであろう.また,fcc金属として代表的な純銅についても同じ機構で再結晶粒が形成されることも示し得た.再結晶粒が『核生成』機構で形成されるならば,その方位の制御は困難であるが,転位セルの方位がそのまま再結晶粒に引き継がれるならば,圧延の仕方によって再結晶粒の集合組織制御が可能となる.これにより,少なくともアルミニウム合金の集合組織制御の方向性を明らかにすることができた. 1050アルミニウムについて,圧延をある程度の圧下率まで行った後,中間焼鈍を施し,その後再び,圧延して最終的に焼鈍して再結晶組織にする,という手法を試みた.この結果は,口頭発表のみ(学会発表4)の状態であるが,1パスあたりの圧下率次第で,最終焼鈍後の再結晶集合組織は,中間焼鈍後の圧延で形成された集合組織にもどる,という興味深い結果が得られた.圧延によって伸びた結晶粒の一つに注目し,最終焼鈍後にそれに対応する位置に形成されたいくつかの結晶粒の極点図を圧延後の極点図に重ねると,ほぼ同一箇所に極があることが示されたのである.一般的には,圧延集合組織と,再結晶集合組織は異なる,とされているが,その解釈の基盤はX線回折法によるものであり,本手法のように結晶粒個々について解析すると,新たな解釈が可能となるのである. 純銅については,双晶境界の密度を増加させることで,種々の特性向上が図れるとされているが,圧延中の双晶境界の移動,双晶境界上での再結晶粒の形成については,まだ未解明である.
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで行ってきた研究および今後も本申請から離れて行っていくことになる研究の最終的な目的は,{111}面方位の多いアルミニウム板材の作製条件の確立である.この集合組織を有する板材が,成形性に優れることはよく知られた推察である.この作製が困難なことも良く知られており,したがって,推察されるだけである.一方,板材の表面から1/3程度の厚さの領域には,「表面集合組織(剪断集合組織とも呼ばれる)」が形成され,その集合組織の一つの成分は,{111}//ND面であることもよく知られている.板厚全体に形成されなくとも,表層近傍に{111}面が多ければ,成形性の向上が期待される.そこで,H26年度は,表面集合組織形成に及ぼす1パスあたりの圧下率の影響と,中間焼鈍の影響を解明を行うこととする.口頭発表程度の結果はすでに得られており,1パス10%と,30 %で,総計80 %程度までの圧延を行うと,後者の方が,表面集合組織が形成されやすいことは明らかになっている.1パスあたりの圧下率をさらに増加させた場合の微細組織変化をまず明らかにする.1パス30 %で84 %まで圧延を施した際の結晶回転は,雑誌論文1, 3で示した.1パス10 %の場合の結晶回転を解析して,これらとの差を明らかにする.さらに,80 %程度まで圧延したのち,中間焼鈍を施して,再結晶組織を形成させた際の集合組織の変化もある程度把握しているので,その後,再度1パスあたりの圧下率を変えて圧延を行い,最終焼鈍を施すことで,表面集合組織を引き継いだ再結晶組織が形成されるか否かを明らかにして,本申請案件のまとめとする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額が1307円と,非常に少額のため,適切な用途がなく,残った. H26年度分として,当初から物品費として計画的に使用する.
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Research Products
(11 results)