2012 Fiscal Year Research-status Report
保水機能を有する土壌改質用組成傾斜型球状中空粒子の創製
Project/Area Number |
24560893
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
遠山 岳史 日本大学, 理工学部, 准教授 (40318366)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 組成傾斜粒子 / 噴霧乾燥法 / 水酸アパタイト / マイクロカプセル / 保水材 / 耐水性 / 土壌改質剤 |
Research Abstract |
組成傾斜材料の創製は通常複雑なプロセスおよび時間をかけて行うが,本研究は溶解度の異なる2成分を噴霧乾燥する単純なプロセスである。噴霧乾燥の粒子形成メカニズムは,噴霧した液滴が乾燥する際に液滴の表面から水分が蒸発することで,溶解成分が局所的に濃縮され析出して中空壁を形成する。このとき,溶解度の異なる2成分が共存している場合には難溶性成分が液滴表面に,高溶解性成分が内部に連続的に析出する。本研究では,遅効性リン酸肥料として用いられている水酸アパタイト(HAp)を基材とした中空粒子の作製を目指すが,これまでの研究においてHAp中空体は機械的強度が低く,かつ,水中で崩壊するといった問題点が明らかとなっている。そこで,中空粒子の内側にSi-O-Siネットワークを形成するシリカを組成傾斜させながら析出させれば,粒子の機械的強度および水中安定性の向上が期待できる。本年度は第1ステップとして,HAp/ケイ酸カリウム系組成傾斜型球状中空粒子の作製を試み,以下の結果を得た。 難溶性HApに二酸化炭素を吹き込むことにより調製した高濃度HAp水溶液(従来の400倍以上の濃度)に,ケイ酸カリウム水溶液を溶解させた混合水溶液を調製し,この水溶液を温度100℃,噴霧圧力50~200kPaの条件下で噴霧乾燥を行った。得られた粒子は粒径1~3μmの球状粒子であり,さらに,この粒子をエポキシ樹脂に含侵させダイヤモンドカッターで切断して内部構造を観察したところ,内部に空洞を有しており,中空壁厚は100~300nmであった。破断面をEPMAにより観察したところ,粒子表面にHApに起因するカルシウムが,内部にはケイ酸カリウムのケイ素が組成傾斜しながら存在していることが確認できた。この粒子1粒の圧縮試験を行ったところ,圧縮強さは約17MPaであり,ケイ酸カリウム無添加と比較して約26倍に機械的強度が向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画通りに水酸アパタイト球状中空粒子内部へのケイ酸塩が析出が認められ,多くの時間を作製条件の検討に費やすことができた。このため,当初の計画よりも早く,短期間で学会発表を行うことができた。また,大学内の知的財産部と連携も取れ,特許を出願することが可能であった。 このため,研究期間の後半は次年度に検討すべき粒子1粒の圧縮試験に取り掛かることができ,次年度以降の問題点の洗い出し等の基礎的知見を早めに得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度,粒子1粒の圧縮強さ試験の基礎的知見を得ることができたため,今後は1)組成傾斜型球状中空粒子の水中安定性,2)吸湿・放湿特性,3)土壌中での保水効果,について重点的に検討を行う予定である。具体的には以下の通り。 1)得られた水酸アパタイト/ケイ酸カリウム系組成傾斜型球状粒子を純水中に浸漬させ,光学顕微鏡により粒子の崩壊過程を観察し,水中安定性について評価を行う。さらに,浸漬後の粒子を回収し,ダイナミック超微小硬度計により粒子1粒の機械的強度を測定し,水中安定性とケイ酸カリウム添加量の影響について詳細に検討を行う予定である。2)得られた球状中空粒子の吸湿・放湿特性については,水分計などを用いて中空粒子の含水量を測定する。さらに,デシケータ中で粒子の吸湿・放湿特性について詳細に検討を行う予定である。また,放湿特性については粒子の細孔分布測定結果なども用いながら評価することを検討している。 3)球状中空粒子の機械的強度,水中安定性,吸湿・放湿特の検討が終了後,プランター(約10 L)の土を使用し,土壌の水分量変化を1~3ヶ月間程度計測する予定である。ただし,土壌中への添加は多量の試料を必要とするため企業などと連携し,大量生産プロセスの開発も視野に入れた研究を行うことを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は水中安定性を評価するため,動画撮影可能な光学顕微鏡の購入を計画している。また,積極的に学会発表および論文の投稿を行い,研究成果を広く内外に広めるよう努力する。このため,学会参加費および旅費に50万円程度,英語論文の校正費として5万円程度計上する。また,粒子1粒の圧縮試験測定のため,外部業者に分析依頼を30万程度計上する。その他は,噴霧乾燥器の消耗品(ガラス製噴霧管,チューブ等の消耗品),合成試薬,分析用試薬等に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)