2013 Fiscal Year Research-status Report
高分子電解質ブラシにおける低摩擦性の分子運動論と分子設計
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24560894
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
藤間 卓也 東京都市大学, 工学部, 准教授 (40392097)
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Keywords | ナノ摩擦 / 高分子電解質ブラシ / 走査型プローブ顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究は、高分子電解質ブラシ(PEB)表面における低摩擦性のメカニズムを分子論的に解明し、その摩擦挙動を制御可能とすることを目的としている。研究課題2年度目にあたる平成25年度においては、初年度に構築した横振動摩擦力顕微鏡(LM-FFM)による力学的複素応答スペクトル測定システムを適用し、高分子電解質ブラシ表面上での摺動に対する摩擦応答特性の測定を行った。 具体的には課題申請時の研究計画に従い、前年度にポリスチレンスルホン酸ナトリウム(NaPSS)ブラシについて、水中における正弦波摺動に対する摩擦力応答波形を詳細に調べ、特に25年度は入力摺動振幅および垂直荷重に対する詳細な依存性を明らかにした。摺動振幅に対しては、小振幅条件では摺動にたいして線形的な摩擦応答を示すものの、大振幅では矩形波的な非線形応答を示し、これは、垂直荷重が小さい領域における非線形追従と同様であった。また、垂直荷重の増加させると線形応答に変化し、これらの線形・非線型応答が、ブラシ側の高分子鎖先端とプローブとの接触・吸着状態によって転移的に変化することが示された。 前年度より検討していた、矩形波型摺動を入力することによる多周波同時測定については、正弦波摺動によって得られた応答スペクトルと一致するスペクトルは得られないことが分かった。これは、周波数帯域によって、高分子ブラシの追従応答が線形的である領域と非線形となる領域が混在してしまっているためと考えられる。 また、NaPSSブラシについてグラフト密度および解離基導入率を詳細に制御する手法を確立した。これは今後、正弦波摺動に対する摩擦応答特性について、両条件に対する依存性を明らかにする重要な実験的基盤となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時の研究目的に対して第2年度以降には、初年度に構築した測定システムを活用し、摩擦応答の分子量・摺動振幅・摺動周波数依存性を測定することを計画しており、上述の通り、これらについて実験的な知見を詳細な依存性に至るまで明らかにしつつある。 特に摺動振幅および周波数への依存性については、既に詳細なデータを得ており、既に国際会議での発表、学術誌への投稿を行っている。今後、グラフト密度および解離基導入率に対する依存性など、さらに詳細な検討を要する項目は残っているが、全体として本研究課題は概ね計画通りに進行している。 平成25年度に得られた上記の知見は、本研究課題において、ナノ摩擦応答の挙動と共役となると考えられる高分子鎖の分子運動を明らかにし、摩擦メカニズムを解明する重要な手がかりとして非常に有用である。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時の計画に従い、平成26年度はPEBのグラフト密度および解離基導入率に対する摩擦挙動の変化を明らかにしていく。これらの知見とこれまでに実施した既述の結果より、PEB上における摩擦挙動のメカニズムを、ブラシ内の高分子鎖の分子運動性から解明していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度については、研究を進める中で、サンプル合成用薬品等の消耗品に関し、次年度に購入すべきという判断をしたため、残額が生じた。 研究費について、物品としては引き続き試料を作製するための化学薬品類、器具類および消耗品である測定用カンチレバーを購入する必要があり、また、成果を公表するための国内外学会への参加・発表および論文投稿等の費用を要する。
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