2014 Fiscal Year Annual Research Report
高分子電解質ブラシにおける低摩擦性の分子運動論と分子設計
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24560894
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
藤間 卓也 東京都市大学, 工学部, 准教授 (40392097)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノ摩擦 / 高分子電解質ブラシ / 走査型プローブ顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、高分子電解質ブラシの物性研究において近年注目されている低摩擦性の発現メカニズムを、分子運動論の観点から解明することを目的としている。これまでに、初年度に構築したSPMによる往復摺動摩擦挙動測定システムを用い、水中におけるポリスチレンスルホン酸ナトリウム(NaPSS)ブラシ表面の摩擦応答について、摺動振幅および垂直荷重依存性の詳細な測定を行ってきた。 最終年度である平成26年度は課題申請時の計画に従い、特にブラシのグラフト密度(被覆密度)を変化させ、その摩擦応答の荷重依存性を詳細に測定した。その結果、グラフト密度を高くすることにより摩擦は低減されるが、その変化は軽微であることが明らかとなった。この結果は、高分子電解質ブラシ表面における摩擦メカニズムが、グラフトされた高分子鎖末端の摺動対象(プローブ)に対する吸着脱離力であるという前年度の考察と矛盾するように思われたため、さらにインデンテーション試験を行った。その結果、グラフト密度が大きいと押し込みに対する反発力も大きく、低密度条件では反発力が弱まることが明らかとなり、ブラシ層内の浸透圧が大きく影響していることが示唆された。すなわち、高いグラフト密度では高分子鎖数は多いものの強く伸長しているため接触点数は密度以上に大きくは増えないが、低密度条件では浸透圧が下がるため伸長力が弱まり、同荷重条件でも接触点数が多くなる。 また、申請時に予期していなかった現象として、長時間摺動によってブラシが圧縮され、除荷してもすぐには戻らない現象が見出された。さらに低荷重条件では、この緩和現象が1段階であるが、高荷重条件で圧縮したものについては緩和が2段階であり、1段階目は低荷重条件と同程度の時定数をもつのの、2段階目が非常に長い時定数を持つことが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)