2012 Fiscal Year Research-status Report
メカノケミカルキャビテーションによる表面・界面制御技術の開発
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24560898
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
吉村 敏彦 呉工業高等専門学校, 機械工学分野, 教授 (20353310)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メカノケミカルキャビテーション / 表面界面制御 / 表面不活性化 / リサイクル技術 |
Research Abstract |
従来の表面不活性化処理としては、機械的処理を付与するか、化学薬品による化学的処理、加熱などの熱的処理を付与する方法がとられてきたが、一長一短あり決定的な技術にはなっていない。このような技術では、表面・界面の制御により信頼性を向上するとともに、プロセスの短縮化を求められている。ウォータージェット噴流、特にメカノケミカルキャビテーション噴流は、上記目的に適合する可能性の高い技術になると期待される。 従来の技術では、キャビテーションの崩壊圧力に伴う機械的処理のみにより表面改質を行っていた。一方、本研究では、薬品を含有したメカノケミカルキャビテーション(MC)による機械的処理と化学的処理を同時に行い、両者の相乗効果により、信頼性の高い表面・界面制御技術を開発する。 高圧水に副流を取り込むことが可能なエゼクタノズルの副流に極低濃度の薬品を含有させて、メカノケミカルキャビテーションを発生させた。腐食試験では、工業的に幅広く活用されている炭素鋼を腐食試験材料とし、薬品は次亜塩素酸ナトリウムを用い、MC処理の耐食性向上について検討した。 未処理材、化学薬品への浸漬(C)、ウォータジェット噴射のみ(M)及びウォータジェット噴射後化学薬品への浸漬(M+C)処理と比較した結果、次のことが明らかになった。(1)高湿度試験では、MC処理を行うと、粗さの変化が少なく、最も局部腐食を抑制する効果がある。(2)水浸漬後に生成した赤錆のミクロ組織観察では、MC処理を行うと、表面の酸素/鉄比の比率や、赤錆と下地金属間の酸化膜における酸素/鉄比が低くなる。(3)水浸漬試験において、MC処理材やM+C処理材は未処理材に比べて腐食ピットの数および直径が小さくなる。(4)水浸漬試験において、MC処理やM+C処理を行うことにより、赤錆の発生が抑制される。(5)MC処理による耐食性向上の効果には、薬品濃度の閾値が存在する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
エゼクタノズルから発生するメカノケミカルキャビテーション(MC)を各種条件で噴射し、耐食性試験を行った。また、耐食性向上に有効なメカノケミカルキャビテーション処理の噴射条件も明らかにした。MCの機械的処理効果としては、腐食の起点となる表面欠陥(き裂、格子欠陥等)の封止効果がある。MCの化学的処理効果としては、不動態皮膜(耐食性膜等)の形成がある。これら封止効果と不動態皮膜の形成により、耐食性が向上する。また、相乗効果により、化学的処理単独で不動態皮膜を形成させる場合に必要な化学薬品の量に比べて、少ない薬品で不動態化できることを示すことができた。ここで、腐食試験は水浸漬試験と高湿度試験(温度、湿度制御)を実施し、表面観察・組成分析(SEM-EDS)や表面粗さ測定すること等により、多角的に腐食の進行度を評価することができた。 全体の研究目標としては、(1)金属材料の耐食性向技術の開発(H24年度)、(2)超高真空部材の低放出ガス化技術の開発(H25年度)、(3)液晶パネルのレアアース回収技術の開発(H26年度)の3項目である。これらの内、(1)をほぼ終了することができた。ただ、炭素鋼以外の材料については、現在も継続して実施している。 H25年度予定の(2)超高真空部材の低放出ガス化技術の開発の基礎試験を行い、良好な結果が得られた。当初の計画では、H25年度の低放出ガス化技術の開発に向けて真空放出ガス測定の機器や治具の準備のみを行う予定であった。実際には、真空放出ガス測定の機器や治具の準備のみならず、放出ガス低減に関する基礎試験を実施することができた。その結果、M処理やMC処理を行うことにより、金属表面から発生する放出ガスを抑制する傾向があることを明らかにした。以上のことより、当初の計画をおおむね達成していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
メカノケミカルキャビテーション(MC)処理前後の試験片の真空放出ガス測定を実施し、施工前後の放出ガス量の比較を行う。低放出ガス化の評価方法は、通電加熱による超高真空中での昇温脱離法を用いる。キャビテーションの崩壊圧力により、真空中残留ガスのトラップサイトになると考えられる表面欠陥(き裂、粒界、格子欠陥等)を機械的に封止する。また、超高真空中での残留ガスは主に水素であり、残留ガスの水素は真空容器内部から拡散によって表面から放出される。MC処理により酸化バリアを形成させることにより、内部からの水素ガス等の放出を抑制する効果が期待される。本技術が確立されれば、ベーキングレスでかつ短時間に高い真空度に到達する真空部材の表面処理技術を提供できる。H24年度の基礎試験では、低真空中での放出ガス量を比較し、MC処理の効果を確認することができた。H25年度はこの基礎試験結果を更に発展させ、超高真空中におけるMC処理効果の有無について検討する。 低放出ガス化の対象材料は、真空容器および真空部品として用いられているステンレス鋼(SUS304)およびアルミニウム合金(A5052)である。添加する薬品としては、上記金属に通常使用されている代表的酸化剤を使用する。例えばステンレス鋼では硝酸、アルミニウム合金ではりん酸塩等を使用する。上記方法により、各種施工条件における真空放出ガスのデータを構築し、低放出ガス化に有効なメカノケミカルキャビテーション処理の噴射条件を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
所属先が呉工業高等専門学校から山口東京理科大学に変更になった。本科研費で購入した物品は移管することができた。しかしながら、メカノケミカルキャビテーションを発生させる高圧ポンプ(マルヤマエクセル(株)製ポンプユニット MW7HP40Lx11kW、H20~H22年度 科研費基盤(c)研究課題番号:20510084「メカノケミカルキャビテーション噴流によるバラスト水処理技術の開発」において購入、1,428,000円)の移管ができないため、本科研費で再度購入する予定である。その他の設備備品としては、当初の計画通り、ワイドレンジ電離真空計を導入する予定である。 消耗品としては、真空配管部品、薬品類、真空ガスケット、論文校正費に使用する。当初研究成果を海外の国際学会で発表する予定であったが、高額の高圧ポンプを購入することになったため、国内で開催される国際学会で発表する計画である。本年11月1~5日に、所属する山口東京理科大学においてISTP-24(The 24th International Symposium on Transport phenomena)が開催されるため、本国際学会にて発表する予定である。
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Research Products
(1 results)