2012 Fiscal Year Research-status Report
低温プラズマ・イオン注入処理による高効率有機太陽電池の研究開発
Project/Area Number |
24560899
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
山根 大和 北九州工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (70332096)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 表面・界面制御 / 太陽電池 / ナノ材料 / 高効率太陽光発電材料・素子 / プラズマ加工 |
Research Abstract |
本研究では、化学的処理法であるゾルーゲル法と物理的処理法である低温プラズマ処理法やイオン注入法を用いたカチオンとアニオンのコドープ処理により、半導体酸化物ナノ粒子の表面をナノ表面・界面構造制御する技術と表面バンド構造を改善する技術を開発する。開発する技術によって、(無機/有機)複合材料における無機物質(半導体酸化物ナノ粒子)の表面・界面ナノ構造及び表面バンド構造が有機分子(色素)との間の電子移動・拡散に及ぼす関係が解明され、光電変換特性を向上させるための表面バンド構造の最適化を図ることを検討する。最適化した(低温プラズマ/イオン注入)複合処理によって色素増感太陽電池の高効率化を検討する。本研究で開発するチタニアなどの半導体酸化物表面・界面のナノ構造制御技術は、広範な半導体分野における革新的な表面・界面ナノ構造制御技術として発展することが期待される。 提案者は2つの観点からバンド構造制御を行っている。1つはチタニア伝導帯準位の上昇、もう1つは伝導帯の下方、すなわちポジティブ側にドナー準位を形成させることである。まずチタニア伝導帯の上昇は、開放端電圧を上昇させるためである。またドナー準位として、①ドナー準位の電子は熱または光吸収エネルギーによりチタニア伝導帯に励起される、②チタニア伝導帯に励起電子を与えた状態で、色素からの励起電子を受け取り、①と同様にこの励起電子はチタニア伝導帯に励起する、という2つの作用の発現がある。したがって作用①によりチタニア電極中の電子濃度が高くなり、光電流を増大させ、さらに作用②を有効に活用するためにドナー準位を制御できれば、現状の色素のLUMO準位よりもポジティブ側に位置する色素も使用可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では色素増感太陽電池の実用化を目指し、高効率化のために、短絡光電流(Jsc)と開放端電圧(Voc)の両方を増大させるTiO2電極への低温プラズマ処理、カチオンとアニオンの選択やコドープ処理条件を最適化する試験研究を実施している。これまで構築してきた(低温プラズマ/イオン注入)複合処理について高効率光電変換素子作製法の新規な手法の開拓を目指している。これまでの研究から、チタニアの伝導帯 準位の上昇については、チタニアにZrをドーピングすることにより、チタニアの伝導帯準位のネガティブシフトを起こすことを明らかにしている。ドナー準位の形成については、チタニア電極への窒素ドーピングにより、光電流が30%増大し、この原因としてチタニア伝導帯のポジティブ側にドナー準位として酸素欠陥準位が形成し、チタニア電極中の電子濃度が増大するためと考えている。 平成24年度の研究実施計画として以下の項目を実施した。 「試験項目」:①各種カチオン(Ta5+, Hf4+)ドープ処理の検討 「試験内容」:酸化チタン(TiO2)電極へのカチオンドープ処理は化学的処理法であるゾルーゲル法によって行った。数種類のカチオンドープ処理により開放端電圧(Voc)の増大を検討した。Taを添加したセルの場合に開放端電圧(Voc)が増大することが確認された。Hf添加量増加に伴うJscの増大が確認された。また、開放端電圧(Voc)の顕著な変化は確認されなかった。 「試験項目」:②(カチオン/アニオン)コドープ処理の検討 「試験内容」:カチオン(Ta5+, Hf4+)ドープ前処理した後、アニオンドープ後処理によって開放端電圧(Voc)及び短絡光電流(Jsc)の増大を検討した。アニオンドープ後処理には窒素(N)ドープを行った。Nイオン注入処理後は短絡光電流(Jsc)の増大が確認された。 以上の様に当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き、(カチオン/アニオン)コドープ処理によって調製されたチタニア電極を使用して作製した太陽電池の光学特性を評価することで光電変換効率の向上のメカニズムを詳細に検討する。これまでの研究(平成17年度~平成24年度)から、チタニアの伝導帯 準位の上昇については、チタニアにカチオンをドーピングすることにより、チタニアの伝導帯準位のネガティブシフトを起こすことを明らかにしており、すでに手がかりを得ている。チタニア電極への窒素ドーピングにより、光電流が増大し、この原因としてチタニア伝導帯のポジティブ側にドナー準位として酸素欠陥準位が形成し、チタニア電極中の電子濃度が増大するためと考えている。 平成25年度の研究実施計画として以下の項目を実施する予定である。 「試験項目」:①各種カチオン(Y3+)ドープ処理の検討 「試験内容」:酸化チタン(TiO2)電極へのカチオンドープ処理は化学的処理法であるゾルーゲル法によって行う。数種類のカチオンドープ処理により開放端電圧(Voc)の増大を検討する。「数値目標」:0.1V増(10%増) 「試験項目」:②(カチオン/アニオン)コドープ処理の検討 「試験内容」:カチオン(Y3+)ドープ前処理した後、アニオンドープ後処理によって開放端電圧(Voc)及び短絡光電流(Jsc)の増大を検討する。アニオンドープ後処理には窒素(N)ドープを行う。「数値目標」:光電変換効率(η)20%増 「試験項目」:③(低温プラズマ/イオン注入)複合処理の量子力学計算による電子構造解析 「試験内容」:量子力学計算(ハード・ソフト共に現有設備)による電子構造解析を行い、実験で求めた半導体表面バンド構造と比較検討する。また半導体表面構造と表面バンド構造との関係を明らかにすることにより、半導体の表面バンド構造制御技術を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の目標実現のために、平成25年度の設備備品費として「触針式表面形状測定器」の装置導入を予定していたが、平成24年度の補正予算により、以前から申請していた本申請装置同等品の導入が実現する予定である。したがって、代わりに「分光蛍光光度計装置」の導入を予定している。本装置は、プラズマ処理やイオン注入処理したナノ微粒子を使用して調製した金属酸化物(TiO2)半導体電極を有した太陽電池セルの光電変換特性を正確に評価するため使用する予定である。さらに、本研究で使用する消耗品としては、現有のプラズマ処理やイオン注入処理する装置を使用・維持管理のために「合成用真空部品」や「ガス類」等の消耗品が必要である。「ガラス器具」、高純度「試薬」は本提案実験を行う上で必須である。また、プラズマ処理やイオン注入処理したナノ微粒子を使用して調製した金属酸化物(TiO2)半導体電極の表面形態観察のため「原子間力顕微鏡用のカンチレバー」が消耗品として必要である。 また、本研究で申請する旅費等は、これまで通り「研究成果発表費用」としてホームページの作成及び更新、国内外の論文・学会発表を積極的に行っていくために「研究成果発表」用旅費として使用予定である。
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Research Products
(8 results)