2013 Fiscal Year Research-status Report
自動車用部品の肉厚変動部のレアアースレス薄肉球状黒鉛鋳鉄の開発
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24560904
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 一道 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60206191)
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Keywords | レアアースレス / 球状黒鉛鋳鉄 / 薄肉化 |
Research Abstract |
球状化処理法の変更による高強度球状黒鉛鋳鉄製造技術の開発として、前年度の結果から、最適な接種処理条件として導いた取鍋接種+注湯流接種を利用し、球状化材として添加するレアアースの含有量を、0%(レアアースレス)と2%(レアアース有り)と変化させ各種試験行により評価を進めた。階段状試験片による薄肉部の組織観察においては、肉厚5mmでのチル発生がなく、3mmのみチルが確認され、結果から5mmまでの薄肉化が可能となり、本年度の目標は達成できた。 また、同様に0%、2%の球状化材において組織がフェライト地(FDI)、鋳放し(PDI(30))、パーライト地(PDI)の球状黒鉛鋳鉄の薄肉板供試材を製作し、自動車部品等の構造用部材を評価する際に重要な疲労強度を平面曲げ疲労試験によって求めた。縦軸に応力(Stress),横軸に繰返し数(N)をとったS-N線図より疲労限度σwを示し、レアアース有りと比較してレアアースレスのσwが全て低下した。低下率はFDIで12%、PDI(30)で13%、PDIで23%となり、PDIの低下率は他の供試材よりも顕著であった。その要因を調査するため破断した試験片の破面を観察すると、レアアースレスでは内部に鋳造欠陥が多数観察された。欠陥の大きさを定量的に評価するために√areaパラメータモデルを用い、求めた√areaの値から、き裂先端における応力場の強さを表す応力拡大係数範囲⊿K、下限界応力拡大係数範囲⊿Kthを算出し評価した。レアアースレスとしたことで起因となる大きな鋳造欠陥が増加し、σwを低下させた要因となった。 今後自動車部品として使用可能な薄肉黒鉛鋳鉄の製造へ向けて、現在2%、0%としているレアアースの添加量を、チル化を抑制し、疲労試験において破断の起因となる大きな鋳造欠陥を発生させない最低限のレアアース添加量を検討する事が次年度以降の課題として考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
取鍋接種および注湯流接種を使用する接種方法を確立し、従来使用している2%のレアアース混入球状化剤に対し、レアアースを添加しない0%による階段状木型を用いた試験片製造から、球状化率および機械的性質の確認を行い製造法に対しての評価を行った。前年度は5mmおよび3mmの薄肉部においてチルが発生したことに対し、本年度は5mm程度まではチルの発生が確認できず、肉厚5mmまでの薄肉化が可能だと考えられ、前年度の結果を改善しており、本年度の目標は達成している。また、自動車部品等の構造用部材としての使用可能かを評価するため、同条件において薄肉試験片を製造し、疲労強度を測定しており、事業化を目指しての重要な要因となる部分の調査も同時に進めている。供試材の製造試験結果から球状化率、機械的性質などについては、従来のレアアースを使用した材料と遜色のない結果となっており、計画内容としては90%以上の成果を挙げている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降、製造時に発生する引け巣などの鋳造法案、レアアースレスでの今後3mm以降の肉厚での制御技術、最低限のレアアース添加量を調査検討することが、本事業化へ向けての次年度以降の取り組みとなる。また、実用化を目指した実体製品の製造確認として、複数の企業にこれまで得られた知見を元に同一製品の製造を依頼し、薄肉でのチル化、疲労強度の測定を行い、レアアースレスでの球状黒鉛鋳鉄の薄肉製造技術の開発および実用化を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究開発を進める中で、次年度に最低限のレアアース添加量を調査検討および実体製品の製造試験を行う必要性が検討され次年度以降に大量に試験片等の製造をする予算を確保する必要がある。そこで、本年度事業に関しては自費研究費による材料製造および加工、試験を行うことにより科研費での使用予算を制限し次年度以降に使用とした。 自費での研究を進めており、研究成果も上げ、開発は滞りなく進展している。 レアアース添加量を調整した複数の球状化剤の購入および実体製品製造のための原材料および試験片加工費用への使用。また国際学会での発表における旅費としての使用を検討している。
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Research Products
(3 results)