2013 Fiscal Year Research-status Report
酸化物被覆による溶融アルミニウム用フィルタの耐食性の向上
Project/Area Number |
24560908
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
櫻田 修 岐阜大学, 工学部, 教授 (10235228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 道之 岐阜大学, 工学部, 助教 (70431989)
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Keywords | アルミニウム / アルミニウム溶湯 / 溶融アルミニウム / ろ過フィルタ / 酸化イットリウム / 酸化物 |
Research Abstract |
アルミニウムはリサイクルの優等生とも言われており,資源の有効活用に適した金属である。今後リサイクルが進み,回収されたアルミニウムの再利用率が高くなることが予想され,従来以上にアルミニウムを再溶融した時の介在物の除去が重要な課題となってくる。アルミニウムの製造の際に溶融したアルミニウム(アルミニウム溶湯)中の介在物を除去するためにアルミナ質セラミックスを骨材とした「チューブフィルタ」(Rigid Media Tube Filter, RMF)が産業界で広く利用されている。このチューブフィルタについて,申請者らが見出した酸化アルミニウムおよび酸化イットリウム系化合物前駆体水溶液を用いて表面処理を行うことによる耐久性改善を検討することとした。 アルミニウム溶湯中の介在物除去を目的としたフィルタの材料開発にあたり,①従来のフィルタへアルミニウムに対して耐食性の効果が期待できる酸化アルミニウムおよび酸化イットリム系酸化物のコーティング,②さらに,申請者らが見出したホウ酸アルミニウム9Al2O3・2B2O3(以下『9A2B』)というフィルタの基材となるアルミナ質セラミックスを結合させる結合材のかわり,あるいはそれにさらに添加する材料として,酸化イットリウム系酸化物の適応性の検討を行った。初年度に引き続き平成25年度は,a)酸化イットリウム系酸化物のアルミニウム溶湯中での安定性の検討に加え,b)9A2Bを結合として作製したフィルタ表面に酸化イットリウム系酸化物のコーティング方法の検討を行った。現在、そのようにしてコーティング処理を行ったフィルタとアルミニウム溶湯中での浸漬試験を開始したところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
a) 酸化イットリウム系酸化物のアルミニウム溶湯中での安定性の検討 モデル実験として,アルミニウム溶湯中にイットリウム系酸化物膜をコーティングしたステンレス基板を種々温度,時間浸漬して,コーティング膜の有無によるステンレスの耐食性評価を行った。アルミニウムの製造でアルミニウム溶湯が利用される温度700℃でモデル基板として用いたステンレスをアルミニウム溶湯に浸漬後,すぐに腐食がはじまり,アルミニウム溶湯中に1日もたたずに溶けてしまうことがわかった。イットリウム系酸化物膜をコーティングすることで,実際にアルミニウム溶湯を取り扱う温度よりも高い800℃でも1日以上浸漬しても基板は溶けず,その耐食性が著しく向上する結果が得られた。しかし,実際にフィルタとして利用するには長時間の安定性が求められ,耐食性の向上にコーティング膜の緻密化が問題となることがわかった。 b) 9A2Bを結合として作製したフィルタ表面に酸化イットリウム系酸化物のコーティング方法の検討 上述a)で示したように平成25年度でイットリウム系酸化物のアルミニウム溶湯中での安定性が認められた。そこで、私達が見出したアルミニウム溶湯用フィルタの骨材である粗粒のアルミナ質セラミックス粒子を9A2Bで結合して作製したフィルタにイットリウム系酸化物をコーティングする方法について検討した。現在のところ、前駆体水溶液をフィルタに含浸した後、フィルタの気孔に残る前駆体水溶液を真空引きすることによって除去し、熱処理を行う操作を繰り返して行うことによって、フィルタの気孔径を損なわずにコーティングできることを見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
a)イットリウム系酸化物コーティングフィルタのアルミニウム溶湯中での浸漬試験 現在、イットリウム系酸化物の緻密膜をコーティングしたフィルタを作製し、実際に種々の温度のアルミニウム溶湯に種々時間浸漬する実験を開始し始めたところである。浸漬時間変化によるフィルタ構成粒子表面の酸化イットリウム系被膜の表面状態、フィルタの内部構造変化などを走査電子顕微鏡の観察、表面層の結晶相の変化をXRDで評価を行い、最適条件の確立のための検討を行い,フィルタの長期間の安定性を目指す。(櫻田,吉田,大学院博士前期課程学生) b)イットリウム系酸化物のアルミニウム溶湯フィルタ付近の部材への有効性について 残念ながら昨年度までの検討結果から,我々が報告した9A2Bを結合材として利用する場合と同様の手法ではイットリウム系酸化物では,ろ過フィルタとして利用するための十分な強度が得られなかった。イットリウム系酸化物をフィルタだけでなく、アルミニウム溶湯処理で用いる部材へ適用性の可能性を検討する。(櫻田,吉田,大学院博士前期課程学生,山川(研究協力者)) 以上の検討結果から本研究をまとめる。
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