2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560911
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
武部 博倫 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (90236498)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ケイ酸塩スラグ / リン酸塩 / レアアース回収 / 吸収特性 / 組成 / 溶出試験 / 赤外分光 / ガラス構造 |
Research Abstract |
本研究の目的は、溶融プロセスでスラグの一部にレアアースを濃縮するための、スラグ組成の開発とプロセス条件の確立を行うことである。具体的には、従来の非鉄製錬スラグ系であるケイ酸塩系にリン酸を添加したリンケイ酸塩系スラグにおいて、レアアースをリン酸と優先的に結合させ、さらに結晶化や相分離の微細構造を制御するための熱処理を施し、その後の湿式処理で選択的にレアアースを溶出させることを目的とする。 初年度は、Na2O-P2O5-SiO2系にNd2O3を添加し、ホットサーモカップル法及びルツボを用いた溶融急冷法でガラス状試料を作製した。分光光度計でNd3+の4f-4f軌道間電子遷移による吸収スペクトルを測定し、得られたスペクトルにおける各吸収帯の形状、ピーク波長及び吸光度からNd3+周囲の局所構造を推定した。このとき比較試料として、過去の研究により、EXAFS解析からのNd3+周囲の局所構造と、吸収スペクトルの形状等の双方が既知のアルカリケイ酸塩及びリン酸塩ガラスを用いた。その結果リンケイ酸塩ガラスにおいて、NdがPO4四面体に優先的に配位するときの組成条件を決定することが可能であった。また同組成のガラスについて、赤外分光法でネットワーク構造を評価し、NdがPO4四面体に優先的に配位するときのガラス構造を明らかにした。 さらにNdがPO4四面体に配位するリンケイ酸塩ガラスについて、超純水による30℃での浸出試験を行い、ICP-MSを用いて試験後の浸出液中のNd濃度を測定した結果、ガラス中の約90%のNdが選択的に溶出されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、アルカリリンケイ酸塩ガラスにおいて、吸収スペクトルを基に希土類がリン酸に優先的に配位する組成条件の絞込みを行い、浸出試験によって、リン酸と結合した希土類(Nd)が選択的に純水中へ溶出することを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前年度の成果を踏まえて以下の研究課題に取り組む。 (1)組成の検討:各種スラグの不純物成分のアルミナ(Al2O3)の添加効果や実在するスラグや工業ガラスの組成に近い模擬スラグ及びガラスについて調べる。 (2)熱処理条件の検討:模擬スラグ及びガラス融体について、温度と時間の組み合わせによる冷却・熱処理条件を検討し、模擬スラグ及びガラスの結晶化や相分離による微細構造を発達させ、得られた試料でのレアアースの分布を調べる。 (3)湿式処理条件の検討と評価:硫酸、硝酸等の水溶液中の酸濃度、pH、浸出温度と時間を条件として、代表的な試料について湿式処理条件を検討する。試験後、溶液はpHと溶出成分を分析し、スラグ試料は重量減少、微細構造観察、ラマン・赤外分光による構造解析で評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、主に消耗品を中心とした物品費と、学会等での成果発表・動向調査の旅費、論文掲載料に使用する。次年度は、試料組成を変化させたり、試料に熱処理を施すため、アルミナ、石英及び白金製のルツボ、耐火物、発熱体及び浸出試験のための各種消耗品などへの経費がかかることが予想される。 また順調な研究の継続と、速やかな学外への研究成果の公表のために、随時研究成果の学会等での発表と論文投稿を行う予定である。
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