2012 Fiscal Year Research-status Report
超臨界溶体急速膨張法による微粒子形成のための基盤構築
Project/Area Number |
24560921
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
東 秀憲 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (40294889)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 急速膨張法 / 微粒子 / 粒度分布 / 平均粒径 / モデリング |
Research Abstract |
本年度は,染料や薬剤の溶解度を測定するとともに,超臨界溶体急速膨張法を用いる際に重要となる,高圧二酸化炭素存在下での染料や薬剤の融点降下を測定するための装置を新たに設計した.特に,溶質に混合物を用いた場合には二酸化炭素で加圧することで,共融点が大幅に減少することもあり,高圧二酸化炭素存在下で相状態を検討するには,融点降下を定量的に把握することが必要である.また,同時に捕集容器に大型の耐圧容器を用いて,実際に薬剤を用いた超臨界溶体急速膨張法による微粒子創製実験を行った.微粒種創製実験においては,溶解部の温度・圧力やノズル出口から微粒子捕集面までの距離などを変えて実験を行い,フィルタ上に捕集された微粒子の粒度分布および平均粒径などへの影響を検討した. この結果,溶解部の温度・圧力により溶解度すなわち過飽和度が決まり,過飽和度が大きいほど平均粒径の小さな微粒子が得られることが示唆された.また,ノズル出口から微粒子捕集面までの距離が長いほど,平均粒径の大きな微粒子が得られる傾向があったことから,この短い間でも粒子の成長が続いている可能性が示された.一方で,大型の耐圧容器は容量が大きいことと温度制御機能がないことでから,ノズル出口でのジュール-トムソン効果による温度低下の影響をかなり受けていることが判明した.このため,容積の小さく温度制御可能でかつノズル出口の様子が可視化できるような微粒子回収装置を設計し,製作することとした. さらに,過飽和度の大きさによって微粒子創製の支配過程が核化,凝集,凝縮と変化する粒子成長モデルを仮定し,ノズル内部から溶体噴出後の状態を計算することで,微粒子の成長過程をモデリングた.上記の3つの各過程が支配的となる過飽和度の境界を調整することで,計算で得られる粒径は実測値の平均粒径を良好に再現することが可能であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
流通型の測定装置による溶解度の測定はおおむね良好に行えているが,融点の測定はまだ常圧下でしか行えておらず,高圧下での適用にはいろいろと課題が多い.可視窓付きセルによる相状態の測定装置の設計には至っておらず,可視窓付きセルを用いた新たな微粒子創製手法である超臨界レーザーアブレーションの有用性を検討するにあたり,融点測定および相平衡状態の可視化実験を引き続き実施するかどうかも含めて今後の検討課題である.また,急速膨張法による微粒子創製実験では,微粒子創製に及ぼすいくつかの操作因子の影響を示すことができたが,微粒子回収部の改良が必要であることが確認されたため今後は新たな微粒子回収装置を用いた実験が必要である.微粒子成長モデルに関しては,3つの過程からなる微粒子成長モデルによる微粒子生成のメカニズムの解明においても,微粒子創製の主要因子である過飽和度の大きさにより,3つの過程の支配領域を調整することにより,計算によって平均粒径の実測値をうまく再現できることはできたが,モデルの妥当性と評価法に課題が残っている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,循環部に紫外可視分光計や赤外吸収スペクトル測定装置を取り付けることで,系を平衡状態に保ったままで,外部へのサンプリングを行うことなく,超臨界二酸化炭素中での溶質濃度の測定が可能である装置を作成し,流通型の装置では溶解度の測定が不可能な溶解度の小さな物質に対して適用する.また,超臨界流体を用いた新たな材料創製手段として,超臨界レーザーアブレーションに着目し,可視窓付きセルの窓を利用して,セル内に設置した金属やカーボンに外部からレーザー光を照射することで,金属の微粒子やカーボンの構造体の創製への超臨界流体場の影響の検討を行う.さらに,出来た微粒子等の回収にフィルタなどを利用した場合と急速膨張法を使用した場合とで回収される微粒子等の平均粒径,粒度分布,構造等への影響について検討する. 急速膨張法においては,特に,過飽和度が粒径制御のための最重要因子であることから,超臨界二酸化炭素に対する溶質の溶解度の把握および微粒子回収部での温度制御が非常に重要と考えられる.このため,溶解度の測定と微粒子創製実験は平行して行う予定である. 微粒子創製実験においては,新たに作成した回収装置を用いて実験を行うと同時に,回収容器内の雰囲気を微分型静電分級器(DMA)および凝縮核計測器(CPC)等を用いたSMPSなど,リアルタイムで粒子を分級し,粒度分布を計測するための装置によるサンプリングが可能か検討を行う. また,プロセス設計に必要なデータをすべてそろえることはできないため,温度・圧力条件が実験の範囲外へ変わっても溶解度が推定できるように,溶解度計算モデルの提案を行い,あらゆる条件下での溶解度の推算を行うことができるよう試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たな超臨界装置(循環型溶解度測定装置および超臨界急速膨張装置)の圧力制御のため圧力調整弁,背圧弁,配管材料などを購入するとともに,超臨界レーザーアブレーション装置の設計・製作のために研究費を使用する.また,急速膨張装置の微粒子回収部に設置が可能なリアルタイムで微粒子を分級し,粒度分布を計測することが可能なDMA,CPCなどSMPSを構成するシステム等の選定を行う.また,得られた結果を適宜適切な学会等で発表するため,および,最新の研究動向調査のために旅費として使用する.
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