2012 Fiscal Year Research-status Report
炭化水素ガスの反応性熱CVD法による多孔性炭素-セラミック複合薄膜の創製
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24560926
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉岡 朋久 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50284162)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 対向拡散CVD / カーボン / ガス分離 / シリカ |
Research Abstract |
1.対向拡散CVD装置の作製 既存の一方向拡散CVD装置を改良し,膜下流側からも同時に原料ガスを任意の圧力・流量で供給できる製膜/膜性能評価装置を作製した.膜上流側からは窒素で希釈したC3H6ガスを供給し,下流側からは窒素で任意の組成に希釈した酸素ガスを所定の流量で供給した.操作圧力は常圧から0.2気圧程度の微加圧になる仕様とし,電子式マスフロー制御器を用いて,10 ~200 ml/minでの厳密なガス流量および組成制御を行った.炭素膜を蒸着させる基材としては,αアルミナ多孔質管に多孔性SiO2膜をコーティングした膜エレメントを用いた. 2.一方向拡散CVDおよび対向拡散CVDの操作条件の最適化 一方向拡散CVDでは過剰炭素の基材膜表面への堆積による厚膜化を防ぎ,かつ細孔に蒸着できるように,また対向拡散CVD操作では,シリカ膜細孔内でC3H6の酸化分解・蒸着反応が進行するように,それぞれ原料ガス圧力や組成・流量を調節する必要がある.本年度は,蒸着温度は400ºCとし,一方向拡散CVDでは,供給ガス流量:15~150ccm,C3H6ガス組成:10~40%,上流側圧力:0.15~0.25MPa,また対向拡散CVDでは,供給ガス流量20~40ccm,C3H6組成:50%,上流・下流側圧力:0.16MPa,という条件下で蒸着を行うことにより分子篩性を有する膜の作製が可能であった.蒸着前後でHe/N2透過率比は,9から33へと選択性の向上が見られた.一方,He/SF6透過率比は5700から1400へと減少した.蒸着炭素層はHeのような小さなガスの抵抗にはなりにくいが,窒素が透過するSiO2細孔は蒸着炭素により閉塞したと思われる.また,SF6が漏れるような大きなSiO2細孔は閉塞が進みにくいことが示唆された.蒸着量が多くなるとHe/N2透過率比は徐々に増加し,最大で186となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画として,「対向拡散CVD装置の作製」および「一方向拡散/対向拡散CVDの操作条件の最適化」を計画していた.装置作製を完了し,各種CVD操作に取り組んだ結果,分子ふるい性を有するカーボン-シリカ膜を作製可能な製膜条件の洗い出しに成功した.現在,2年目の目標の一部である,更に高選択性・高透過性を有するCVD膜のための作製条件の最適化に引き続き取り組んでいる最中であり,初年度の目標は概ねクリアできていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
・CVD操作条件の最適化,前駆体および基材膜細孔径の影響の検討 前年度に引き続いてCVD操作条件の最適化を行いつつ,次に,前駆体ガス種および基材膜細孔径を変化させて炭素膜を作製する.前駆体としては,C3H6よりも分子サイズが大きいiso-, 1-C4H8ガス,あるいはアルコール類・芳香族系有機化合物の蒸気が検討候補となる.また,基材膜細孔径によって透過性や分子篩性の改善が可能かどうかを明らかとする.上の検討のみでは良好な膜性能が得られなかった場合には,より大きい細孔径への制御が必要となる浸透気化膜,ナノ濾過膜としての可能性を調べることになる. ・蒸着炭素のキャラクタリゼーション 基材膜材料と同一の珪酸エチル(シリコンアルコキシド)を前駆体として多孔性アモルファスシリカ粉体試料を作製し,炭素膜のCVDと同一の条件下でシリカ粉体試料へも炭素蒸着を行い,窒素吸着法により蒸着前後の細孔構造の変化を明らかとする.また,蒸着炭素成分のXRD,FT-IR,密度測定より,炭素相の構造を評価する.前駆体の種類や蒸着条件(温度・組成・圧力)により炭素相の構造にどのような違いが現れるかを検討し,様々な仕様の炭素蒸着膜の気体透過特性との関連を明らかとする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,比較的順調に研究を遂行することができ,当初予定していた精密圧力制御システムを構築するまでもなく,製膜装置作製とCVD操作条件の検討を行うことができた.しかし,更なる膜性能の向上と製膜機構の検討のためには,より精密な操作因子の制御が必要であることは十分に考えられる.また,26年度に検討予定であった「分子動力学法による非晶質・グラファイト炭素膜構造の作製と気体透過シミュレーション」についても前倒しで予備的に検討を始めることで,25年度の目標である膜性能向上のための製膜指針に関する情報を得られるのではないかと期待される.精密圧力制御システムおよびシミュレーション用コンピュータとして次年度に研究費を使用する予定である.
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