2013 Fiscal Year Research-status Report
炭化水素ガスの反応性熱CVD法による多孔性炭素-セラミック複合薄膜の創製
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24560926
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉岡 朋久 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50284162)
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Keywords | 対向拡散CVD / カーボン / ガス分離 / シリカ |
Research Abstract |
1.CVD操作条件の最適化,前駆体の影響の検討 C3H6よりも分子サイズが大きいiso-C4H8ガスを用いて炭素膜蒸着を行った.基材膜上流からiso-C4H8 : N2 =30:22.5 ccm,膜下流からO2: N2=30:30 の流量比で供給し,上流圧0.135 MPa,下流圧0.130 MPa,蒸着温度400ºС,合計30分間のCVD操作を行った.C3H6を前駆体として用いた場合,200℃においてHe透過率:3.9 ×10-7 mol m-2s-1Pa-1,He/N2 = 26.7,He/SF6 = 215が得られたのに対して,iso-C4H8を用いた場合,CVD操作後,C3H6の場合と同様に透過率は減少し選択性は増加したが,蒸着開始後10分における透過率の減少が大きく,200℃においてHe透過率:2.8 ×10-7 mol m-2s-1Pa-1,He/N2 = 73.9,He/SF6 = 343が得られた.C3H6(4.5nm)と比較してiso-C4H8(5nm)は分子径が大きく,熱分解反応により生じる炭素蒸着物の構造が大きい為細孔を閉塞しやすく,C3H6よりもiso-C4H8を用いた方が高透過選択性を有する膜となることが示唆された. 2.炭素含有セラミック膜のキャラクタリゼーション iso-C4H8を前駆体として一方向拡散CVDおよび対向拡散CVD法で作製した炭素蒸着膜のSEM観察およびEDX分析を行ったところ,いずれの場合も炭素成分の蒸着が確認され,基材表面上に欠陥のない蒸着層が形成されている様子が見られた.しかし,対向拡散CVD法で作製された膜の方が蒸着量が少なく,薄膜化できること示された.キレートとして炭素成分を添加することで作製した炭素含有セラミック膜では,ピンホールの閉塞によるHe, CO2などの透過選択性の向上が認められ,炭素成分の担持効果が確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の研究計画として,「CVD操作条件の最適化,前駆体および基材膜細孔径の影響の検討」および「蒸着炭素のキャラクタリゼーション」を計画していた.分子ふるい的な炭素蒸着膜の作製に適した蒸着温度,圧力,流量条件を見出しており,基材膜細孔径としては,現在使用している前駆体(C3H6, iso-C4H8)については,細孔径1~2 nm程度でピンホールのないものが必要であった.また,前駆体による製膜性の違いも確認された.炭素含有セラミック材料についてゲル粉体および膜の状態での評価・分析により,炭素を付加されたセラミック材料の特異的な細孔構造や気体透過特性も明らかとしている.3年目の目標の一部である,各種ガス分子の透過選択性にも着手しており,2年目までの目標は概ねクリアできていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
・分子動力学法による非晶質・炭素膜構造の作製と分子透過シミュレーション 経験的なカーボン構造を再現するポテンシャルなどを用いて非晶質相を有するカーボン構造を再現し,当研究室で開発した非平衡分子動力学透過シミュレーションシステムを用いて各種分子の膜透過シミュレーションを行う.膜構造と気体透過性の関係を明らかとし,特に二酸化炭素およびオレフィンガスの透過選択性に寄与する膜の細孔構造および膜表面に残存する有機官能基に関する知見を得る. ・炭素-セラミック複合膜によるCO2/N2,C3H6/C3H8分離実験 CVD法により製膜可能な最適と考えられる炭素-セラミック複合膜を作製し,CO2/N2,C3H6/C3H8(オレフィン/パラフィンガス)分離実験を行い,膜性能評価を行う.特にその膜の耐熱性,耐水蒸気性,耐酸素性などの実用的な安定性の検討を行う.また,気体分離膜としてのさらなる性能向上を図るために,現在の前駆体に代えて,室温下で液体であるような分子量の大きい前駆体を用いること,炭素蒸着後の後処理などによる細孔径制御について検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,比較的順調に研究を遂行することができ,当初予定していた精密圧力制御システムの代わりに簡易的なガス供給システムを構築することで,良好に製膜を行うことができた.そのため,本年度使用予定分は概ね計画通りに使用したが,昨年度に繰り越した分が次年度使用分として繰り越された. 炭素前駆体を適切に選ぶことで気体分離膜としての有用なカーボンCVD膜の作製が可能であることが明らかとなっため,更なる膜性能の向上と製膜機構の検討のために,炭素数の少ないC3,C4ガスの他に当初計画よりも分子量の大きい炭素化合物を前駆体として用いることを予定している.そのために前駆体蒸気発生部の仕様を変更し,より汎用性の高い装置に改良するために次年度に研究費を使用する予定である.
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