2012 Fiscal Year Research-status Report
環境調和型プロセスの実現を目的としたゼオライト膜の構造制御
Project/Area Number |
24560927
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
熊切 泉 山口大学, 理工学研究科, 助教 (20618805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 一宏 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (30188289)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゼオライト膜 / 水熱合成法 / 液分離 / マイクロ波加熱 / パームポロメトリー / 結晶成長 |
Research Abstract |
合成法によるゼオライト膜の構造や膜性能の違いを検討するために、支持体や種結晶などを統一して製膜を行い、得られた膜の性能を同じ条件で評価した。具体的には、シリカ・アルミ濃度が希薄な液中で種結晶の成長を利用した製膜法(以下、CS法)と、シリカ源やアルミ源濃度が濃いゲルを用いた合成法(以下、ゲル法)により、A型、FAU型ゼオライト膜を合成した。加えて、マイクロ波加熱も用いた(以下、MW法)。さらに、フッ素を含む合成液を用いてロッド状結晶からなるMFI型ゼオライト膜を合成した。膜のFE-SEMやXRDによる分析や、分離性能や結晶間隙分布を測定した。 CS法とゲル法の顕著な違いは、前者は種結晶をA型からFAU型に変えることで、A型やFAU型ゼオライト膜が得られるが、後者では目的とするゼオライトに応じてゲル組成を調整する必要がある点である。これは、前者では種結晶の成長が膜形成に大きく寄与しているのに対し、後者ではゲル中の核発生やその成長も膜の形成に寄与していることを示唆している。膜の窒素ガス透過性はCS法で作成した膜のほうが、ゲル法で作成した膜よりも1桁以上大きかった。パームポロメトリーによる結晶間隙分布測定は、CS法で作成した膜により大きな結晶間隙(Kelvin径で2nm程度)があることを示した。一方、液体分離性能の合成法による違いは顕著ではなく、例えば、90wt%のエタノール水溶液を用いた浸透気化分離では両者の膜ともに高い水選択性(分離係数>1000)が得られた。ゲル中の核発生を促進するとされるMS法を用い、膜の合成時間を短縮することに成功した。MS法で得た膜はCS法やゲル法から合成した膜と同程度の選択性を持ちながら1.5~2倍の透過流束を示した。MS法ではより小さな結晶から膜が構成しており、結晶間隙量が多いことが高い透過性の一因と推測された。この結果は論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異なる合成法を用いてゼオライト膜を合成し、構造やガス・液の分離性や透過性の評価を行い、合成法と膜性能の関係を比較した。結晶間隙量をパームポロメトリーや、透過性や分離性の変化を結晶成長を徐々に行いながら追うことで評価した。オイルバスや恒温槽を用いた従来の外部加熱に代わる、マイクロ波加熱を用いた合成法を開発し、結果を論文として発表した。以上のように、これまでに、膜の合成法の改良や開発、合成法と結晶間隙の関係や分離性透過性の関係に関する知見を獲得しており、目的に沿って順調に研究は進行している。結晶間隙の測定装置の作成は、予定していた質量分析器の使用ができないため、H24年度には行えなかった。結晶間隙の評価は、パームポロメトリーによるサイズ分布の測定とガス透過量により代替した。
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Strategy for Future Research Activity |
膜を真空乾燥すると、エタノール水溶液分離に於いて選択性が約4倍、透過性が約2.5倍と大幅に向上するが、溶媒分離に於いては選択性も透過性も低下することを見出した。これは真空乾燥により結晶間隙の大きさや量が変化したためではないかと推測している。構造評価や、真空乾燥条件(温度や時間)が膜性能変化に与える影響の評価をH25年度に引き続き行い、この現象の理由を解明する。加えて、種結晶のサイズや担持状態が膜の構造や分離性、透過性に与える影響を検討し、より優れた分離性、透過性を持つ膜を再現性良く合成できる手法を確立する。さらに、ロッド状MFI型ゼオライトや、核発生を利用した基材細孔閉塞型ゼオライト膜の合成法を最適化し、ゼオライト構造と性能の関係を検討する。H25年度後半では、膜の後処理による結晶間隙の閉塞を試みる。後処理としては化学蒸着法や表面修飾法を試みる。これらを通して、結晶間隙が透過性や分離性に与える影響を、脱水のような吸着性が分離性に大きな影響を与える場合と、それ以外に分けて明らかにし、各々の場合でより高い膜性能を得る方針を得る。成果の発信は、論文や、国内・国際的な学会やシンポジウム、大学が主催するセミナーなどで発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、ゼオライト膜の合成や評価で使用する消耗品費と、成果の発表や調査に関する旅費に充てる。消耗品費の内訳は、試薬類、多孔質基材、ガス類、液体窒素、swagelok配管部品、XRD,SEM,ICPなどの測定資材である。旅費は、膜学会(東京、5月)、化学工学会秋季大会(大阪、9月)、化学工学会年会(岐阜、3月)や、国際学会・シンポジウム(スペイン、11月)などへの参加旅費や、研究調査旅費に充てる。 尚、1年目に予定していた結晶間隙の測定装置作成が行えなかったため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(7 results)