2013 Fiscal Year Research-status Report
不均一系可逆的不活性化ラジカル重合プロセスにおける高分子構造の精密制御
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24560938
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
飛田 英孝 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30237101)
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Keywords | 重合プロセス / ナノ粒子材料 / 高分子反応工学 |
Research Abstract |
RAFT重合においてRAFT剤濃度増大に伴う抑制効果を説明するモデルとして(1)中間体と成長ラジカルの停止反応が生ずるとするIT(Intermediate Termination)モデルと(2)中間体の開裂が遅いとするSF(Slow Fragmentation)モデルの2つのモデルがともに2001年に提案されて以来、過去10年以上にわたりどちらのモデルが妥当であるのかについて論争が続いてきた。モデル識別が困難である理由の一つは、バルク重合においてはどちらのモデルも同程度に実験結果を説明できることにある。本研究において、数百nm程度以下の微小液滴系内にて重合を行うミニエマルション重合を用いれば、液滴径減少に伴い重合速度が増大すればITモデル、増大しなければSFモデルというきわめて明快な形でモデル識別が行えることを理論及び実験を通じて提案してきた。 H25年度は、パラメータの組合せを大きく変化させてもSFモデルでは、ミニエマルション重合における重合速度の増大が生じないことを数値計算により確認するとともに、未知の反応系に対してSFモデルでは重合速度の増大が生じないことを容易に確認できる簡便な式を提案した。本検討結果を報告した論文[Macromol. Theory Simul., 22, 399-409 (2013)]は、学術雑誌の表紙で取り上げられた。 また、上記の理論に基づいて重合条件を設定したジチオール系RAFT剤を用いたスチレンのミニエマルション重合実験を行い、液滴径減少に伴い重合速度が増大することを確認し、本反応系に対してはITモデルが妥当であることを実証した。本検討結果を報告した論文[Macromol. Theory Simul., 23, 136-146 (2014)]も高く評価され、学術雑誌の表紙で取り上げられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多様な可逆的不活性化ラジカル重合の内、対象をRAFT重合に絞ることによりRAFT重合のメカニズムをミニエマルション重合という微小反応場を活用してモデル識別を容易に行う方法を世界に先駆けて提案し、理論的的検討をほぼ終了するとともに、実験的にも本識別法の有用性を十分に示すことができた。これらの結果は、学術雑誌の表紙で取り上げられるなど高い評価を受けている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初から計画してきた分子量分布の検討、さらにジビニルモノマーとの共重合によるミクロゲル形成過程を理論及び実験的に検討する。また、今回の理論研究の中で見いだされた統計的濃度揺らぎ効果について実験的検討を加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H26年度の年度当初に海外研究機関との打合せ等で2度の海外出張の必要が生じたため使用予定を一部変更して、H25年度の使用を少なく抑えたため。 パソコンの購入約40万円、ソフトウエアライセンスの維持及び新規ソフトウエアの購入約30万円、研究打合せ及び学会発表等に約50万円、その他消耗品に約20万円の支出を予定している。
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