2013 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ流体デバイスを用いたバイオフィルムモデルの作成とバイオレメディエーション
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24560956
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
加藤 紀弘 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00261818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 行子 (津田 行子) 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (00533663)
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Keywords | クオラムセンシング / バイオフィルム / 細胞間情報伝達機構 / 高分子カプセル / マイクロ流体デバイス |
Research Abstract |
シグナル分子濃度依存性の遺伝子発現機構である細菌間情報伝達機構クオラムセンシングでは、細菌の増殖に伴うシグナル分子の濃度上昇をセンシングする。クオラムセンシングは、グラム陰性細菌のバイオフィルム形成に関与する。医療器具表面を介した感染症、金属配管の腐食、水場周りのぬめりの原因になるなど、バイオフィルム形成を阻止する新手法の利用は広範である。そこでバイオフィルム形成の要因となるクオラムセンシングの抑制効果を試験するため、MEMS技術を利用し調製した高分子担体を利用した。 本研究では3次元マイクロ流体デバイスを利用して、アルギン酸とポリリジンのポリイオンコンプレックスにより構造を保持したマイクロカプセルを調製し、内部に細菌を封入した。クオラムセンシング機構を有するモデル細菌として、赤色色素プロディジオシンを生産するSerratia marcescensを用いた。プロディジオシン生産から追跡すると、マイクロカプセル内部で細菌増殖が可能で、クオラムセンシングが活性化される。シグナル分子N-アシルホモセリンラクトン(AHL)を酵素分解することで、クオラムセンシングを抑制可能である。AHLラクトナーゼを生産する遺伝子組換大腸菌とS. marcescensの2種類の細菌をマイクロカプセルに封入し培養すると、プロディジオシン生産が抑制されることから、高分子マイクロカプセル内部でクオラムセンシング機構を不活性な状態で維持可能である。単離・精製したラクトナーゼのAHL加水分解活性を確認し、活性を保持する固定化酵素を合成した。緑色蛍光タンパク質GFPを発現するPseudomonas aeruginosaをバイオフィルム形成菌として用い、カプセル内部における細菌層を共焦点レーザー顕微鏡により蛍光観察する実験系を確立し、固定化酵素担体表面へのバイオフィルム形成過程を追跡した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展していると考えられる。平成25年度計画では、AHL分解酵素としてBacillus族細菌からクローニングしたAHLラクトナーゼをEscherichia coli を用いて過剰発現させ、AHL分解細菌及び単離・精製したAHLラクトナーゼを用いてクオラムセンシング抑制試験を実施することになっている。種々検討した結果、由来の異なる2種類のAHLラクトナーゼを遺伝子工学的手法により大量取得した。 AHLラクトナーゼ生産菌とクオラムセンシング菌の2種類の細菌を、同軸型3次元マイクロ流体デバイスを用いて調製した高分子マイクロカプセルに封入し、これを培養することでカプセル内部でクオラムセンシング機構を抑制可能なことを実証した。固定化酵素カプセルの合成法を検討し、固定化酵素カプセル内部で緑色蛍光タンパク質GFPを発現するPseudomonas aeruginosaを培養することで、カプセル内部に形成するバイオフィルムを観察する実験系を確立した。以上のことなどより、平成26年度の研究はほぼ予定どおり開始できる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオフィルム形成試験を化学構造の異なるAHL存在下で試験し、高分子担体表面へのバイオフィルム形成に及ぼすAHL種、AHL濃度の効果を試験する。AHLはホモセリンラクトンと有機酸のカップリング反応等により有機合成し実験に用いる予定である。AHL濃度の測定は、AHL合成遺伝子破壊株を用いるバイオアッセイ法を用いて評価する。ゲルビーズ内部、ゲルカプセル内部の閉鎖空間におけるクオラムセンシング活性化条件を検討する。AHL加水分解酵素を利用するクオラムセンシング抑制効果とバイオフィルム形成の関連を調べるため、継続してデータを蓄積する。あわせて表面粗さなど表面構造の異なる高分子ヒドロゲル表面へのバイオフィルム形成過程を共焦点レーザー顕微鏡などで観察し、細菌の高分子担体への付着の程度、高分子表面に接する細菌懸濁液の液流と細菌付着量の相関など、バイオフィルム形成の初期過程を調査する。
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Research Products
(3 results)