2013 Fiscal Year Research-status Report
クッションタンパク質を用いた高感度バイオ分子間相互作用検出システムの開発
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24560963
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
今中 洋行 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (10379711)
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Keywords | バイオ分子 / 固定化 / 相互作用 / 耐熱性 / タンパク質 / ペプチド |
Research Abstract |
固体表面親和性ペプチドおよびクッションタンパク質をスペーサーとして利用する新しいアイデアに基づいた標的バイオ分子の高度機能的固定化法の確立にむけて検討を進めた.まずTrpAのクッションタンパク質としての適用可能性について検討した.TrpA 基盤構造(β-barrel)の形成に関与しないと予想されるαヘリックスループ構造を利用して複数の部位・形態でリガンドペプチドの挿入を試みた.しかし,発現タンパク質がいずれも構造安定性を失ったことから,TrpAがクッションタンパク質として不適であることがわかった.そこで新たに耐熱性および構造安定性に優れた超好熱菌由来のCutA1をリストアップし,その適用について検討した.各種組換えCutA1を調製したところ,リガンドペプチドを構造内に束縛した状態で挿入しても,発現タンパク質の構造安定性は十分に維持されていたことから,有望なクッションタンパク質候補であることがわかった. 一方,金表面へのバイオ分子固定化に関し,ランダムペプチドライブラリーより単離・同定した金表面親和性ペプチド(Au-tag)を用いた固定化特性の比較検討を行った.Au-tagの連結様式がそれぞれ異なる各種組換え耐熱性Esterase (EstAf)を調製し,金表面固定化後の残存活性測定による機能維持効果を評価した.その結果,タグ連結末端の差異,タンデム化などの連結様式により残存活性に違いが見られ,固定化の配向性による構造変化の影響が示唆された.さらに,表面プラズモン共鳴法(SPR)を用いて吸着動力学パラメーターを決定し,固定化特性の比較評価を行った.その結果,Au-tag連結EstAfの濃度に依存した固定化形態のシフトが強く示唆された.これらの検討を通じて6アミノ酸からなるAu3が金表面への高い親和性を有するだけでなく,タンデム化などを通じて機能向上が図れる可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データベース検索等を利用した候補クッションタンパク質の新たなリストアップ,モデルクッションタンパク質をコードする遺伝子の各種超好熱菌ゲノムからの単離,精製タンパク質の調製,および耐熱性調査など,当初予定していた研究について特に遅れはない.また,金表面親和性ペプチドについても高親和性ペプチドを同定し,モデルタンパク質への連結様式が固定化特性に及ぼす影響について調べた.そして,同定したペプチドが想定どおりタンパク質の固定化配向制御に有用であることを示すとともに,連結様式のデザイン化による機能向上の可能性を明確にした.これらについても,当初の予定通り順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
CutA1をクッションタンパク質として用い,表面親和性ペプチドを連結した形の分子の固定化特性および固定化後の高次構造の詳細な解析を行う.相互作用検出に用いるリガンドペプチドの挿入部位として基盤構造の形成に関与しないと予想されるループ構造を利用する.また,クッションタンパク質の3次構造の変性を低減させ,固定化後の構造維持効果を狙い,Coiled-coil構造などのユニット導入の検討も行う.開発した表面特異的ペプチド及びクッションタンパク質を,ペプチド-タンパク質間相互作用の検出に適用し,リガンドペプチドの最適な挿入領域,挿入配列を決定する.さらに,同じ配列を有するペプチドを異なる形態で提示(固定化)させ,バイオ分子間相互作用検出の詳細な比較と汎用性の担保が可能となるシステムの確立を目指す.幅広い相互作用力スペクトルを対象とした相互作用検出システムの検証をSandwich ELISA により行う.順調に進めば,ペプチドに代わり,より大きな分子であるタンパク質の挿入可能性についても検討する.金表面に関しては表面プラズモン共鳴法や水晶振動子マイクロバランス法などを用いて,既往のバイオ分子固定化法との比較検証も行う.さらに,独自に単離した金表面親和性ペプチドとクッションタンパク質を用いたバイオ分子間相互作用検出の高感度化デザインを試みる.これらの検討を通じて,超高感度バイオ分子間相互作用検出システムの開発を進めるとともに,クッションタンパク質の実用化可能性について総合的に評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
クッションタンパク質として利用するための耐熱性タンパク質について,リガンドペプチド挿入による構造安定性を担保すべく,実験を進めていたが,構造安定性の維持ができなかったため,これを利用した解析に使用するバイオセンサーのセンサーチップの購入および委託加工予定を変更し,他の候補タンパク質のクローニングを進めることになった.そのため主な未使用額が生じた. 未使用額の繰越分については,設備備品の購入は予定せず,主に消耗品の購入への使用し,具体的にはセンサーチップの購入および金属加工の委託費に充てることとしたい.
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