2012 Fiscal Year Research-status Report
マリンメタゲノム由来の生理活性ペプチチド探索およびシーズ遺伝子特異的濃縮法の開発
Project/Area Number |
24560964
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡村 好子 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (80405513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 祐見子 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00215568)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 海洋メタゲノム / GPCR / リガンドスクリーニング |
Research Abstract |
本研究は難培養微生物が生産しているオリゴペプチドに着目し、創薬標的として注目を浴びているGPCR (Gタンパク質共役型受容体)リガンド活性に基づいたスクリーニングによる取得と、その生成に関わる遺伝子の特異的取得方法の確立を目的としている。 具体的には、申請者らが構築したカイメン共生・共在バクテリアのメタゲノムライブラリーから、モチーフ検索によってアミノ酸リガーゼモチーフを持つクローンを選択し、スクリーニング対象を10万クローンから数十~百数十クローンに絞り、スクリーニングの効率化をはかっている。GPCR (MCHR1, BRS3)のリガンドアッセイは、ヒト胎児腎臓細胞由来HEK 293Tのゲノム内にBRS3を導入した安定発現株、およびプラスミドに挿入したBRS3をHEK 293T細胞に導入した一過性発現株を用いている。両者は発現量が異なり、リガンドに対する感受性が異なるので両株ともスクリーニングに使用する。またハムスター卵巣細胞由来CHO細胞はHEK 293Tと異なるリガンド感受性を示すことから、この細胞を用いた発現株も作出した。これらを用いて、120クローンの培養上清と反応させ、顕著なシグナルが得られたクローンをスクリーニングする。 また、本方法では、陽性クローンが保持する遺伝子の解析を行い、GPCRリガンド合成遺伝子を同定することが可能である。 さらに、環状ペプチド合成酵素であるNRPS遺伝子の全長をメタゲノム中から特異的に増幅して、取得する方法も確立する。 以上の研究によって、難培養性細菌のメタゲノムライブラリーを用いたペプチド性GPCRリガンドの同定と原遺伝子特定は、未利用遺伝子資源を有効活用する手法を提供し、メタゲノムソースを鋳型とするペプチド合成遺伝子の特異的遺伝子増幅と全遺伝子領域の取得法を確立することで、今後のメタゲノムからの創薬シーズ探索の発展を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、①ライブラリークローンの絞り込み、②GPCRのリガンドアッセイを目的としていた。①においては、120クローンに絞り込まれ、従来のスクリーニング効率より100倍効率を引き上げることが出来た。②においては、2株の陽性クローンを得た。これらはペプチド精製カラムによるHPLC分画後も活性が残存しており、確かにペプチドである可能性が高い。現在は、この2株に注目し、リガンドの精製に取り組んでいる。 さらに、平成26年度で計画している「細菌1細胞分離法および全ゲノム増幅法の確立」について、先行して基礎的に実験を行った。そもそも本計画で使用するrolling cycle amplificationはφ29DNAポリメラーゼを使用するが、混合菌での使用が困難なため、1細胞分離技術が必要であった。特異的プライマーの使用はワンサイト・プライミングであるため、確実にワンサイトを認識できるか確認することから始めたところ、確かにサークルを数百から数千回転して増幅した1本鎖DNAが得られることを確かめた。得られた1本鎖を異なるサイトで特異的にプライミングし、2本鎖化することに成功し、何よりも、大腸菌とNRPS保持菌とを混合したモデル複合系のなかで、NRPS保持菌のみを特異的に増幅することに成功したので、この手法を特許申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は予定通り、①リガンドの同定、②リガンド生成遺伝子の同定を行う。 ①リガンド同定には微量HPLCを用いて分画し、純化する。純化されたリガンドを、Orbi-Trap MS/MS解析により構造決定する。②同時並行して、クローンが保持しているプラスミドに挿入されているメタゲノム断片をプライマーウォーキングで全長を決定し、デリーションクローンを作製して、リガンドアッセイを繰り返し、当該遺伝子が含まれる領域を特定する。構造決定されたリガンドの構造と照会し、遺伝子(あるいは遺伝子クラスター)を決定する。 また、25年から26年にかけて、NRPS酵素遺伝子の特異的増幅および遺伝子クラスター分離法を確立する。これまでの予備実験ではメタゲノムの未知遺伝子のプライミングに縮重プライマーを使用すると縮重度が高すぎても低すぎてもPCRがかからないことが分かっている。φ29 DNAポリメラーゼは正確性の高い酵素のため、縮重プライマーの使い方を検討し、メタゲノム中よりNRPS保持菌のみの増幅を目指す。 最終的には、菌体のゲノム全体ではなく、NRPS近傍の領域の増幅を目指しているため、メタゲノムを物理的切断あるいは低頻度制限酵素で長鎖断片化し、自己環化させて、再度特異的プローブを用いてRCAを行うことで、当該遺伝子のみが増幅され、濃縮することが出来る。これを用いて調製したライブラリーで、GPCRリガンドアッセイ他生理活性スクリーニングを行うことで、高効率・高頻度でアッセイを行うことが可能となる。個別に得られる増幅DNAはクローニングと同様の意味を持つため、次世代シークエンサーによる解析に供することも可能であり、マイニングされた配列から合成生物学的に遺伝子産物を取得することも検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の消耗品に計上した物品は、φ29 DNAポリメラーゼ @270,000円, LA Taq DNA polymerase @80,000円他、プライマー合成、プローブ合成の試薬代、原遺伝子同定に関わる遺伝子組換え試薬代、増幅反応にかかるチューブ・チップ類のディスポーザブル製品および HPLC精製用有機溶媒、Orbi-Trap MS 使用料金を合計して、消耗品130万円を計上した。さらに本研究のメタゲノムライブラリーからの天然物スクリーニングに関して、BIT’s 3rd Annual Congress of Marine Biotechnology (WCMB-2013) において講演依頼があり、その旅費および国内学会旅費として20万円を計上した。陽性クローンのプラスミドのプライマーウォーキング受託解析に10万円計上した(その他)。 研究分担者は、リガンドアッセイのための動物細胞培養液、およびカルシウム検出レポーター試薬、アッセイプレート他の消耗品として総額20万円を計上した。
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