2013 Fiscal Year Research-status Report
予冷ターボジェットアフターバーナーにおける水素燃焼および窒素酸化物生成メカニズム
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24560971
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津江 光洋 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50227360)
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Keywords | 推進・エンジン / 予冷ターボジェット |
Research Abstract |
水素を燃料とする予冷ターボジェットモデルアフターバーナーの燃焼メカニズムの解明を目的とし,高エンタルピー風洞を使用して,水素火炎の温度測定試験を実施した.高温度における非接触温度測定手法を確立するため,主流水素にSiO2を主成分とする粒径が1μmの粒子を加えた.前年度,ブンゼンバーナーで確立した二色法による温度測定手法を,高エンタルピー風洞を用いた燃焼試験に応用した.ロンボイドプリズムを用いた光学系により二波長同時測定を可能とした.二色法に使用する波長として656nmと532nmの二つを選定した.インジェクタ噴口配置を,二列で配置した通常配置と,半周期ずつずらした千鳥配置で実験を行った.主流空気に対して当量比0.7の希薄,および当量比1.8の過濃条件に対して実験を行った.希薄条件において,噴口配置の違いによる温度分布の違いが観察された.この挙動は数値計算結果でも同様であり,燃料の貫通高さの影響であると結論づけられた.過濃条件では,通常配置では振動燃焼が観察されたが,千鳥配置では安定した燃焼が得られた.この時,噴射器直後は多量の水素によって温度が低く保たれていることが確認された.振動燃焼の場合には,測定に十分なS/N比を達成するため,露光時間を振動周期より長く設定する必要があった.そのため,平均温度しか測定することができなかった.また,現在の光学系を用いた二色法による温度計測の精度を明らかにし,粒子の放射率補正を行うため,単純な火炎形態である対向流水素/空気バーナーによる計測を試みた.しかしながら,本年度においては安定した平面火炎を作り出すことができなかった.数値計算においては,RANSモデルと水素素反応モデルを用いて解析を行った.二段噴射の上流と下流の噴射角度の違いによる燃焼効率の変化を調べた.二つの噴流の干渉による混合の様子と燃焼効率の挙動を明確にすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,水素を燃料とする予冷ターボジェットアフターバーナー内の燃焼メカニズムの解明と環境負荷物質の排出の少ない高効率の燃焼形態の実現を目標として研究を行っている.主流と燃料噴射形態の干渉が燃焼に及ぼす影響,窒素酸化物生成メカニズムの解明,および高温水素火炎に対する非接触計測手法の確立を目指している. 実験においては,主流全温1000K程度の高エンタルピー風洞にモデルアフターバーナーを設置し,種々のインジェクタを準備し,実験を実施している.現在,高エンタルピー風洞を用いた実験のノウハウを確立し,基礎データの取得が終了し,安定した応用試験の実施に至っている.主流空気に対する水素流量が希薄条件においては,安定した燃焼が確立されており,定性的な温度分布が得られている.過濃条件においては,振動燃焼の発現のため,瞬間的な温度計測はできていないものの,振動燃焼メカニズムの解明は非常に重要であり,現象として興味深い.この現象解明は理化学的および工学的に非常に有益である.今年度は1μm程度の微細な粒子に対して温度測定を実施し,定性的な温度分布の取得と応用の可能性を示すことができた.今後は,最適な粒子の選定と温度計測制度の向上が望まれる.現在,二色体温度測定において現在は灰色体近似を用いている.精度向上と放射率補正を目的とし対向流バーナーを用いた校正試験を試みたものの,安定した平面火炎を実現することができなかった.大幅なバーナー改良の必要性が考えられる.一方で,予冷ターボモデル燃焼器に対する水素素反応モデルを使用したRANSシミュレーションは予定より前倒しで実施されており,噴射形態の違いが燃焼に及ぼす影響や窒素酸化物の生成特性などに関して様々な知見が得られ始めている.以上を踏まえると,いくつかの問題があるものの,概ね研究は順調に実施されていると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
予冷ターボジェットのアフターバーナーにおける高効率燃焼,環境負荷物質排出の低減,窒素酸化物生成メカニズムの解明のためには燃焼状態の詳細な把握が必要である.燃焼状態の把握と化学反応メカニズムへの影響を考えるうえで,温度分布を高精度に測定する必要がある.本研究では燃焼メカニズムおよび窒素酸化物生成メカニズムの解明に加え,高温の水素火炎に対する非接触温度測定手法の確立を目指す. 本研究では,過濃水素燃焼に着目しているが,温度測定に関しては,白金ロジウム系の高温度に対応した熱電対等で測定できる上限を超越している.そのため,耐熱金属粒子を添加した,二色法による非接触温度測定手法を提案している.現状では,アルミナ粒子を用いているが,2300K程度までの大まかな定性的温度計測が可能である.当量比2.0程度の火炎では更なる高温状態になるため,粒子の選択が重要である.そのため,今後二色法に最適な粒子を試験する.酸化マグネシウムや炭化ケイ素などいくつかの粒子に対して試験を行う.また,灰色体近似を用いて温度を用いているが,対向流火炎など一次元的な標準火炎により,放射率の補正を行うための基礎試験を実施する.前年度は安定した平面火炎を達成することができなかったため,本年度はバーナーの大幅な改良を行う. 温度測定手法の確立と精度の向上を行った後,高エンタルピー風洞に接続したモデルアフターバーナーでの過濃水素火炎の温度測定を実施する.二色法により,振動燃焼を含む過濃水素火炎の燃焼メカニズムの解明を目指す.実験のみでは測定できるパラメータが限定されるため,詳細反応モデルを含む数値流体解析を同時に実施する.RANSモデルを用いた解析を実施することにより,火炎メカニズムの解明と窒素酸化物の生成特性に及ぼす諸パラメータの影響を明らかにする.
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Temperature Measurement using Two Color Optical Pyrometry in an Afterburner for a Pre-Cooled Turbo Jet Engine2014
Author(s)
Kita, S., Ianus, G., Iwata, K., Sakaki, K., Taguchi, H., Imamura, O., Nakaya, S., Tsue, M.
Organizer
The 7th Asian Joint Conference on Propulsion and Power
Place of Presentation
Korea・Jeju
Year and Date
20140305-20140308
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