2012 Fiscal Year Research-status Report
舶用ディーゼルエンジンに適用するPM低減システムの実用化に関する研究
Project/Area Number |
24560993
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toba National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
窪田 祥朗 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20290760)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 誘導加熱 / ソフトスイッチング / PM(粒子状物質) |
Research Abstract |
ディーゼルエンジンからの排気ガスには、NOx(窒素酸化物)、SOx(硫化酸化物)、PM(粒子状物質)といった有害物質が含まれており、自動車用の浄化装置は一部実用化されている。しかし、船舶における同様のシステムは未だ開発中である。NOxとPMは、一方を低減するともう一方が増加してしまうといったトレードオフの関係にあり、ディーゼルエンジン本体の改良だけでは、両方を低減させることが難しい。そこで、本研究では、NOxを低減するように改良した舶用ディーゼルエンジンにおいて、増加したPMを低減させるためのPM低減システムについて開発、検討している。このシステムを実用化するには、 (1)PM捕集と加熱に最適なフィルターの検討 (2)フィルター加熱に適した電源の開発 (3)舶用ディーゼルエンジン運転時におけるPM低減システムの信頼性、安全性、耐久性の確認 の3工程が重要である。本年度は、特に(2)のフィルター加熱用電源について検討した。高周波誘導加熱用電源として現在まで提案してきた回路トポロジーを礎に、ソフトスイッチングインバータを新しく開発した。フィルターには誘導加熱に適した強磁性金属を用いるが、温度変化に伴い誘導加熱等価負荷のインダクタンスと抵抗が大幅に変化するといった問題がある。そこで、本研究では誘導加熱用電源として、擬似可変コンデンサを用いた新しいソフトスイッチングインバータを提案している。擬似可変コンデンサを利用することによって、周波数を一定としたまま、負荷変動に対する共振追尾制御が容易になり、負荷となるフィルターの温度が変化し、誘導加熱等価負荷の値が変化したとしても、複雑な制御が不要となった。これにより、常にソフトスイッチングを維持することができ、スイッチングストレスが軽減されるといった特長を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディーゼルエンジンからの排出される排気ガス中のPMは、650℃以上に加熱すると燃焼分解されることが知られている。そこで、PMを金属フィルターにて捕集し、フィルターを加熱することでPMを燃焼させ、低減させるシステムとしている。本研究では、フィルターの加熱に誘導加熱を適用することが特長であり、これにより、フィルターの加熱温度が制御でき、フィルターの過熱や温度むらによる温度低下が原因のPM燃焼失敗がなくなる。 誘導加熱においては、強磁性金属を加熱する際には効率良く加熱できることから、本研究においてもPM捕集用フィルターに強磁性金属を適用する。しかし、強磁性金属はキュリー温度が存在し、キュリー温度以上に加熱すると常磁性金属に変化するため、誘導加熱等価負荷が急激に変化するといった問題がある。また、一般的に、負荷変動に対しては共振周波数追尾制御を用いるが、駆動周波数を制御すると、加熱部分も変化してしまうといった問題もある。 そこで、本研究ではこの誘導加熱等価負荷の変化に対して常にソフトスイッチングを維持するような共振追尾制御を、一定周波数で行うことでこれらの問題を解決している。これらを解決する方法として、擬似可変コンデンサを提案し、誘導加熱用電源に適用することで、フィルター形状、フィルター材質を変更しても、常にソフトスイッチングを維持することができる。その結果、PM捕集用金属フィルターの最適化を検討しやすくなり、今後は、フィルターの最適化に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ディーゼルエンジンからの排出ガスの中でPMは、非常に小さな粒子である。そのため、捕集フィルターは、小さい微粒子を捉えることができなければならないが、フィルターのメッシュを細かくしすぎるとすぐに目詰まりを起こす可能性がある。目詰まりを起こすと、ディーゼルエンジンの背圧が高くなり、エンジン出力への悪影響が懸念される。そのため、今後はフィルターの形状について、捕集能力と耐久性を検討していく必要がある。 フィルター材質としては、強磁性金属が適しているが、材質変化によって誘導加熱負荷の等価回路パラメータが変化したとしても、今までに開発した共振追尾制御を備えた誘導加熱用インバータであれば、安全に駆動可能である。 また、同時にPM低減システムを実際のディーゼルエンジンに装備する際に発生する諸問題の解決策を検討する。特に、誘導加熱用のワーキングコイルから発生する漏れ磁束に対する処置が必要と考えている。一般的に、舶用にかかわらずディーゼルエンジンの配管は金属で構成されていることから、漏れ磁束によって加熱される恐れがある。加熱されると、これは損失として計上されるため、誘導加熱用電源の出力を高出力化しなければならない。以上の理由から、漏れ磁束対策を施して、無駄な電力を軽減させる方策を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
提案するPM低減システムの加熱源に、誘導加熱を用いることが本研究の特長である。この誘導加熱用電源として、新しく開発したソフトスイッチング高周波インバータを適用する。提案するインバータのスイッチング素子としては、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を利用しているが、IGBTは、発注してからに納入までに時間がかかるため、購入を次年度とした。 また、新しいフィルター材料について、今年度は購入しなかったため、次年度に種々のフィルター材を購入し、検討していく予定である。
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Research Products
(2 results)