2013 Fiscal Year Research-status Report
鉱山排水から簡易合成したゲーサイトと超音波酸化を用いた酸性領域における砒素の除去
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24561002
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
大川 浩一 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00375221)
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Keywords | 鉱山坑廃水処理 / 砒素 / ゲーサイト / 超音波化学 / 資源開発 |
Research Abstract |
旧松尾鉱山の坑廃水は硫酸酸性(pH2.2)で主に鉄、砒素、アルミニウムが含まれる。そのため坑廃水を河川に排出する前に、中和と毒性の高い砒素の除去を行う必要がある。本研究は松尾鉱山の坑廃水からゲーサイトを砒素吸着剤として簡易に合成する方法を提案し、それを使用して坑排水中の砒素を酸性領域で除去することを特徴とする。溶液中の砒素を吸着除去するにはその価数が5価であることが望ましいため、高周波数超音波を水溶液中に照射して得られる酸化作用の利用を検討した。 25年度は主に模擬鉱山廃水を作成し、砒素を効率よく超音波で酸化させる方法について検討した。超音波による砒素の酸化は周波数に依存し、周波数が高い方(200kHz)が、低い方(28kHz)に比較してOHラジカル生成量が多く、砒素の酸化に適していた。3価の砒素溶液(pH2, 10ppm, 35ml)を10分間超音波処理を行ったところ、200kHzでは48%、28kHzでは18%の酸化(5価の砒素)が確認された。また、pHと砒素の酸化の関係について調べたところ、pHが低いほど超音波による酸化は容易になることがわかった。しかしながら、鉱山廃水の処理を考えた場合、スケールアップが必要となる。そこで、より酸化が進むように、酸化剤の添加と超音波照射の併用を検討した。酸化剤は鉱山廃水の水質に与える影響ができるだけ小さいものとして、鉱山廃水中に含まれるイオン種で構成されたものを探索した。その結果、ペルオキソ二硫酸カリウムが見つかった。この酸化剤は超音波を照射している時だけ、酸化剤として働くことがわかった。また、酸化剤として働いた後はK+とSO4 2-になるので、水質に与える影響は少ないと考えられる。この酸化剤を超音波と併用したところ、超音波のみの酸化と比較して、その速度は10倍以上という良好な結果が得られた。今後、さらに、この併用方法について詳細を調べていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究は新しい発見があり実験項目が増えたが、当初予定していた目的をおおむね達成できた。水溶液中の砒素の超音波酸化について、多くのデータが得られた。その一方、松尾鉱山廃水から合成したゲーサイトの物性確認が不十分である。25年度はJOGMEC 旧松尾鉱山新中和処理施設を2回訪れることができ、廃水の採取と情報交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法は、主に研究実施計画通りに行う。25年度、ペルオキソ二硫酸カリウムと超音波の併用で、酸化速度が10倍以上大きくなることがわかった。この酸化剤は超音波照射時のみ酸化することも明らかになった。さらにこの酸化剤は低周波数の超音波と組み合わせても作用することから、26年度は、減衰が大きい高周波数の超音波(200kHz)の検討のみではなく、広範囲に作用する低周波数(28kHz)の超音波の利用も積極的に行う。また、この酸化剤を使用することで、松尾鉱山坑排水から合成したゲーサイトの吸着性能に影響がないか調べる。最終年度であることから、実験データを実験補助者と協力して迅速にまとめ、論文投稿、学会発表を行いたいと考えている。また、学会発表で結果の公表を行うとともに、研究の結果・考察に対して他の研究者から助言がいただけるように努める。これら研究活動を通して、最終報告書を年度末に作成する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は低pHにおいて砒素を超音波で酸化して、松尾鉱山廃水から合成したゲーサイトで吸着除去するものである。25年度は、圧力合成容器を購入して松尾鉱山からゲーサイトを合成する条件を検討することと、超音波による硫酸酸性溶液中の砒素の酸化について調べる予定であった。砒素の酸化を調べていく途中で、より酸化速度を上げる必要性を感じ、酸化剤との併用を考えた。その時に、松尾鉱山廃水に含まれている元素からなるペルオキソ二硫酸カリウムが超音波との併用で、超音波照射のみの酸化速度の約10倍という良好な結果を示すことがわかり徹底的に調べた。そのため、ゲーサイトの合成については一時保留となり、圧力合成容器の購入を見送ったため物品費の次年度使用額が生じた。旅費は、25年次男が産まれ(早産)、面倒を見る必要があり、予定していた出張が困難になった。長期出張や出張回数を抑制したため、次年度使用額が生じた。 物品費は、設備備品として圧力合成容器(994,000円)を購入する予定である。消耗品(850,531円)として超音波振動子、導電率計、pH計、薬品代、ガス代、ガス配管代、ろ紙代等を予定している。 旅費は国内旅費(204,876円)として、学会発表、研究打ち合わせに使用する。学会は資源素材学会 秋季(熊本)、春季(東京)、超音波シンポジウム(東京)を予定している。研究打ち合わせとして、旧松尾鉱山新中和処理施設(2回程度)、九州大学、新潟大学、東北大学を予定してる。 人件費・謝金(230,790円)は、実験補助者の雇用に使用する。その他の金額は、すでに当初の使用予定額を超過している(19,999円超過)。超音波発振装置の故障の修理代金によるものである。大学の共同施設の利用も研究上必要であるため、旅費および人件費に考えていた金額の一部(160,001円)を使用予定である。その他、論文投稿費、校正費などを予定している。
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Research Products
(7 results)