2012 Fiscal Year Research-status Report
廃貝殻の有効利用による新規晶析型脱リン材および重金属除去材の開発
Project/Area Number |
24561011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩見 治久 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (60215952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩野 剛司 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30178850)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 廃貝殻 / 晶析脱リン法 / 炭酸カルシウム / リン酸カルシウム / 熱処理 |
Research Abstract |
平成24年度は研究計画・方法に従い,炭酸カルシウムの結晶構造を保持したまま,タンパク質を除去できる熱処理条件を検討し,リン除去能との関連性を調べた.まず,TG-DTAの結果より,貝殻中に含まれる有機物は約500℃でほぼ全量消失し,600℃から炭酸カルシウムの分解が始まり,約900℃でほぼ全ての炭酸カルシウムが酸化カルシウムまで分解されることが確認できた.この結果より,貝殻中には約1.5%の有機物が含まれることが明らかになり有機物の除去には500℃以上での熱処理が必要であることが明らかになった.この結果を受け,200℃~700℃で1時間熱処理した試料を作成した.粉末X線回折分析の結果より,600℃および700℃で熱処理した場合には,一部炭酸カルシウムが酸化カルシウムに分解することが確認でき,また,水中への浸漬時のpHの上昇も大きく,リン除去時にリン酸カルシウムの沈殿が発生したため,晶析型の脱リン材としての利用には不都合であった.なお,500℃までの熱処理においては,熱処理温度にかかわらず,ほぼ同程度の脱リン能を示した.これは,貝殻を粉砕することにより,炭酸カルシウムが表面に露出し,リン酸カルシウムの晶析サイトとして働くためであると考えられる.したがって,廃貝殻を微粉砕する場合には,熱処理は不要であるとの結論に至った. 次に,廃貝殻をカルシウム溶出源となる石膏と複合化し,晶析型脱リン材として用いる場合の貝殻粉砕条件と,石膏との配合割合の決定を行った.まず,貝殻微粉砕物の粒度を固定し,石膏との配合割合を検討した結果,リン除去能は,貝殻の配合量が多いほど高くなるが,体積割合で30%を超えると,硬化体の強度が低くなり,リン除去中に一部崩壊することが確認できた.なお,石膏に添加する貝殻の粒度は細かいほど,硬化体表面に露出する貝殻の割合が多く,リン除去能も高くなることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画に基づき,廃貝殻の熱処理条件の検討,カルシウム溶出源としての石膏と廃貝殻粉との複合顆粒の作成条件の絞り込みが行えた.貝殻には通常1~2%のタンパク質が含まれており,炭酸カルシウムの結晶構造を保持したまま,タンパク質を除去できる熱処理条件を決定することを目的で種々の温度で熱処理した貝殻粉を作成し,粉末X線回折分析による結晶構造の変化,水中に浸漬した場合のpHの変化,および脱リン性能を検討した.その結果,500℃でほぼ有機物の除去は完了し,炭酸カルシウムの結晶構造も維持されていることが明らかになった.また,この温度までの熱処理では,水中に浸漬した場合のpHの変化もほとんど確認できず,炭酸カルシウムの分解も起こっていないことが確認できた.リン除去性能については,500℃以上で熱処理した場合には,微細なリン酸カルシウムの沈殿が発生し,晶析型脱リン材としての利用には不都合であることが明らかになった.なお,500℃以下の熱処理においては,熱処理温度に関わらず,リン除去能に顕著な差は見られなかった.これは,貝殻の微細化に伴い,有機物に覆われていた炭酸カルシウムが表面に露出することで,リン酸カルシウムの晶析サイトが確保できたためと考えられる.この結果より.廃貝殻を微粉化して用いる上では,必ずしも熱処理を施す必要もなく,熱処理に必要なエネルギーの削減が可能であることが明らかになった. 次に,カルシウム溶出源としての石膏との複合化については,貝殻粉の配合割合が多いほどリン除去性能は高くなるが,顆粒の強度を考慮すると体積割合が30%以下にする必要であった.また,石膏と貝殻粉の複合顆粒のリン除去能を向上させるためには,顆粒表面に露出する貝殻(炭酸カルシウム)の割合を高くする必要があり,そのためには貝殻粉の粒度をできるだけ小さくすることが必要であることが明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の実験で,有機物を除去する目的で空気雰囲気中での熱処理条件の検討を行った.平成25年度は,炭酸カルシウムの活性化を目的とし,炭酸ガス雰囲気下での熱処理の検討を行う.空気雰囲気下では600℃から炭酸カルシウムの分解が始まり,酸化カルシウムが生成する.一方,炭酸ガス雰囲気中では,900℃まで炭酸カルシウムが分解せず活性化することが報告されている.そこで,炭酸ガス雰囲気下で熱処理を行うことにより,リン除去特性にどのような変化が起こるかについて検討する. 次に,リン除去材表面に析出したDCPDのHAP化条件を検討する.本研究で作成する晶析型脱リン材では,貝殻の主成分である炭酸カルシウムの表面にリン酸カルシウムが析出することによりリン除去が進行する.この場合,炭酸カルシウムがカルサイト型の場合にはDCPDが析出しやすい.DCPDにはイオン交換による重金属除去能がないことが報告されており,重金属除去のためにはリン除去後DCPDをHAPに変換する必要がある.ここでは,高濃度のリン酸溶液に貝殻粉砕物を浸漬し,表面に多量のDCPDを析出させた試料を用いてHAP化の条件を探る.まず,貝殻の粉砕物を1000ppmのリン酸イオンを含む酸性溶液に浸漬し,表面にDCPDを析出させる. その後,得られた試料を,種々のCa/P比に調整したリン酸およびカルシウムイオンを含む溶液に浸漬し,80℃~140℃の水熱条件下でリン酸処理をする.この場合,カルシウムイオン,リン酸イオンの濃度およびpHの影響についても検討する.以上のようなでリン酸処理を施した試料に付いて,TG-DTA,粉末X線回折分析を行いHAP生成を確認する.以上の実験を通して,DCPDのHAP化の条件(カルシウムイオンおよびリン酸イオン濃度,Ca/P比,温度,pH)を決定するとともに,重金属(PbおよびCd)の除去特性を調査する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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