2013 Fiscal Year Research-status Report
廃貝殻の有効利用による新規晶析型脱リン材および重金属除去材の開発
Project/Area Number |
24561011
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩見 治久 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (60215952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩野 剛司 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30178850)
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Keywords | 廃貝殻 / 晶析脱リン法 / 炭酸カルシウム / リン酸カルシウム / 重金属除去 |
Research Abstract |
平成25年度は,平成24年度に行った廃貝殻中の有機物除去を目的とする熱処理条件の検討課題の継続として,さらなる炭酸カルシウムの活性化を目指し,炭酸ガス雰囲気下での熱処理条件の検討を行った.炭酸ガス雰囲気下では,炭酸カルシウムは熱力学的には900℃までは分解しない.そこで,未焼成および炭酸ガス雰囲気で,500℃~900℃まで熱処理した廃貝殻を石膏と複合化した硬化体を作製し,空気中500℃で熱処理した貝殻を用いた場合とのリン除去能の違いを検討した.その結果,炭酸ガス雰囲気下で熱処理した場合でも900℃まで温度が上がると,リン除去時に溶液のpHが上昇し,微細な沈殿が生成した.これは,炭酸ガス雰囲気下,900℃で熱処理した場合には,粉末X線回折では検知できないが,貝殻の表面が一部分解し,酸化カルシウムが生成していたためではないかと考えられる.800℃までの温度で熱処理した貝殻を用いた場合には,微細な沈殿の生成は認められず,700℃で熱処理した場合に最もリン除去能が高くなり,空気中500℃で熱処理した場合と比較しても高いリン除去能を示した.以上の結果より,廃貝殻の熱処理としては炭酸ガス雰囲気下700℃が本実験条件下では最適と考えられる. 次に,廃貝殻-石膏複合硬化体を用いたリン除去により,硬化体表面に析出したリン酸カルシウムによる鉛の除去について検討した.鉛濃度1000ppm,pH2の硝酸鉛水溶液にDCPDが析出した廃貝殻-石膏硬化体を浸漬したところ,DCPD特有の板状構造が崩壊し,花弁状の構造に変化した.その後,この花弁状の結晶上に針状の結晶が析出し,EDX元素分析,粉末X線回折分析の結果,リン酸鉛の一種であるヒドロキシパイロモーファイトであることが確認できた.以上の結果より,pH2の条件下ではリン除去で生成したDCPDをHAPに転換せずに鉛の除去が可能であることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画に従い,廃貝殻中の有機物除去を目的とする熱処理条件の検討課題の継続として,さらなる炭酸カルシウムの活性化を目指し,炭酸ガス雰囲気下での熱処理条件の検討を行い,未焼成および炭酸ガス雰囲気で,500℃~900℃まで熱処理した廃貝殻を石膏と複合化した硬化体を作製し,空気中500℃で熱処理した貝殻を用いた場合とのリン除去能の違いを検討した.その結果,炭酸ガス雰囲気下700℃で熱処理した場合に最もリン除去能が高くなり,空気中500℃で熱処理した場合と比較しても高いリン除去能を示した.以上の結果より,廃貝殻の熱処理としては炭酸ガス雰囲気下700℃が本実験条件下では最適と考えられる.この結果は,廃貝殻を晶析型脱リン材の原料として有効利用する場合の廃貝殻の前処理条件を決定するうえで極めて有用な知見であると考えられる. また,廃貝殻-石膏複合硬化体を用いたリン除去により,硬化体表面に析出したリン酸カルシウムによる鉛の除去について検討した.鉛濃度1000ppm,pH2の硝酸鉛水溶液にDCPDが析出した廃貝殻-石膏硬化体を浸漬したところ,DCPD特有の板状構造が崩壊し,花弁状の構造に変化した.その後,この花弁状の結晶上に針状の結晶が析出し,EDX元素分析,粉末X線回折分析の結果,リン酸鉛の一種であるヒドロキシパイロモーファイトであることが確認できた.以上の結果より,pH2の条件下ではリン除去で生成したDCPDをHAPに転換せずに鉛の除去が可能であることが確認できた.この結果は,従来リン酸カルシウムを用いた重金属の除去においてはHAP化する必要があると考えれれていたが,排水のpHを適切に選択することで,DCPDをHAP化しなくても直接鉛の除去が可能であることを示しており,今後の重金属除去の検討において非常に有用な結果と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,廃貝殻の熱処理条件として,炭酸ガス雰囲気中,700℃で熱処理することにより空気雰囲気中500℃で熱処理する場合よりリン除去能が高くなることが明らかになった.しかし,石膏と複合化する場合,廃貝殻の粒子径を小さくすればリン除去能は向上するが,硬化体強度が低下し,廃水中に浸漬した場合に表面が一部崩壊することが明らかになってきた.そこで,編成26年度は硬化体の強度向上を目的として,漆喰の技術を応用した硬化体の作製法を検討する.漆喰は石灰岩を焼成して得られる酸化カルシウムを主原料とし,水を添加して生成した水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と反応し,炭酸カルシウムが生成することにより強度が発現する.そこで,本研究では,廃貝殻-石膏複合硬化体作成時に,廃貝殻の一部を廃貝殻を高温で焼成することにより得られる酸化カルシウムに置き換え,硬化体を作製し,その後,炭酸化処理し,硬化体作成時に生成した水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに転換し,強度向上を目指す.実験では,酸化カルシウムの配合比率,炭酸化時の温度について検討し,最も強度の高くなる硬化体作成条件を決定する.得られた硬化体については,リン除去能,廃水への浸漬時の表面の崩壊状態について検討する. 次に,平成25年度からの継続課題として,リン除去後,DCPDが析出した硬化体による重金属の除去について検討する.平成25年度はpH2の硝酸鉛水溶液での鉛除去を検討した結果,ヒドロキシパイロモーファイトの生成により鉛イオンの除去が進行することを確認したが,詳細な析出過程は明らかになっていない.そこで,平成26年度は,ヒドロキシパイロモーファイトの析出機構の詳細な検討を行うとともに,廃水のpHが,鉛除去率に及ぼす影響を調べ,各pHでの鉛除去機構を明らかにする.また,カドミウムを含む廃水に対して,鉛と同様な除去効果があるかを検討する.
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