2012 Fiscal Year Research-status Report
非軸対称核融合プラズマの周辺磁場領域境界形状診断手法の確立と実用化
Project/Area Number |
24561019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
板垣 正文 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30281786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 裕 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40360929)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 核融合 |
Research Abstract |
核融合装置内部のプラズマ境界または最外殻磁気面(LCMS)形状をReal-timeに知ることは、プラズマのMHD平衡に関わる情報を得るために極めて有用であると同時に運転制御上も重要である。JT-60等のトカマク型等の軸対称2次元プラズマに対しては、磁気センサー信号からプラズマ境界形状を同定するコーシー条件面法が確立されている。コーシー条件面(CCS)とは、プラズマ領域内にプラズマ電流の代わりに仮想的に置かれるDirichlet条件とNeumann条件が共に未知な面であり、解析上、真空磁場を仮定する。 核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)のような非軸対称3次元プラズマにCCS法を拡張適用することは困難が予想されたが、H24年度において周辺磁場領域(LCMSの外側から所謂stochastic領域の外縁部に至る領域)における特異な境界形状を外部磁気センサー信号のみから診断するシステムをほぼ完成できた。このシステムは3次元コーシー条件面法により逆推定される磁場分布に基づいて磁力線追跡を行い、周辺磁場領域形状を同定する。 ところで、大きいCCS断面ほどセンサー位置との距離は短く、センサー信号の情報を取り込むのに有利である。しかし、真空磁場を仮定するCCS法ではLCMSの内部で解が大きく乱れ、この乱れがプラズマ外部の磁場解析精度に悪影響を及ぼす。一方でヘリカル型装置のプラズマ断面形状はトロイダル方向に変化するため、従来の軸対称CCSでは円形断面の半径を0.075mより大きくできなかった。そこで、プラズマ形状がトロイダル方向に回転変化するのに応じて、CCSの断面形状も回転させる「ひねり型コーシー条件面(Twisted CCS)」を開発した。さらに、最外殻磁気面を抽出する画期的な数値技法を考案したことにより、「3次元コーシー条件面法」の実用性を一層高めることに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H24年度において、大型ヘリカル装置(LHD)の周辺磁場領域における特異な境界形状を、外部磁気センサー信号のみを用いて「3次元コーシー条件面法」によって逆推定される磁場分布に基づいて磁力線追跡を行って同定・診断するシステムをほぼ完成させることができた。さらに、プラズマ形状がトロイダル方向に回転変化するのに応じて、CCSの断面形状も回転させる独自の「ひねり型コーシー条件面(Twisted CCS)」を開発し、磁場逆解析精度の飛躍的な改善を確認した。また、得られた逆解析磁場に基づいて磁力線追跡を経て得られるポアンカレ・プロット(点の集合)を疑似的な磁気面関数の等高線分布に変換し、最外殻磁気面を抽出する画期的な数値技法を考案し、その実証を行った。実証においては、体積平均β値が2.7%のみならず、2%、1%の場合についても調べ、CCS法の適用が困難になると予想された低βプラズマ、すなわちプラズマ電流密度が極めて低い場合においても十分に有意な結果を与えることが確認された。さらに、磁気センサー信号にノイズが含まれる場合に逆解析精度に与える影響評価も行った。これによれば、少なくとも標準偏差が3%程度のノイズであれば、磁場分布の逆解析精度が大きく低下することはなく、「3次元コーシー条件面法」はロバストな手法であることが立証された。これらの成果はPlasma Phys. Control. Fusion誌に投稿、掲載された(Itagaki, M., et al. 2012 Plasma Phys. Control. Fusion 54, 125003.)。一連の手法は、LHDのみならず非軸対称性を持つ一般の3次元核融合プラズマに適用可能なものである。H24年度の研究進捗は予定通り以上であり、達成度は満足すべきものである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析では磁場3成分を同時に測定する磁場センサー440個、磁束ループ26個と多数のセンサーを配置しており、極めて非現実的である。解の精度を保ちつつコーシー条件面を形成する境界要素節点の数をどこまで削減し得るかを調べ、これに対応させてセンサー信号の数の削減を試みる。境界要素節点の数、すなわち未知数の数の削減に関連して、行列方程式を打ち切り特異値分解法によって解く場合、その特異値の打ち切り箇所を如何に最適化するかは重要である。これについて明確な指針を与えることをH25年度の最大の目標とする。 また、磁気センサーの配置については、LHD実機の現実のセンサー配置に準じたものに解析モデルを改善すること、ないしは、理想的なセンサー配置の低減を検討する。 核融合研および原子力機構へ出張し、これまでに得られた成果および疑問点について意見交換を行うとともに引き続き情報収集に努める。成果を、プラズマ・核融合学会、計算数理工学会等で発表する。また、境界要素法研究や核融合炉開発の分野における研究者との意見交換、最新の知見収集を図る目的で、成果を国際会議でも発表する。H25年度は英国で開催される第35回境界要素法等国際会議BEM/MRM2013に出席し、これまでの成果を発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、第34回境界要素法等国際会議BEM/MRM2012での研究発表を予定していたが、開催日が例年の9月から6月に変更となったために研究の進展が間に合わず、当該会議への参加を断念した。かわりに、平成25年6月11日~13日に英国で開催される第35回境界要素法等国際会議BEM/MRM2013に参加し、その出張旅費および関連経費として(B-A)を充当したい。
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Research Products
(4 results)