2012 Fiscal Year Research-status Report
分光学的手法による超高濃度トリチウム水の自己放射線分解反応の研究
Project/Area Number |
24561022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小林 かおり 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (80397166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 正憲 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 准教授 (00334714)
尾関 博之 東邦大学, 理学部, 教授 (70260031)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 核融合 / 分子分光 / 物理化学 |
Research Abstract |
国際熱核融合実験炉(ITER)をはじめとする核融合装置では水素の放射性同位体であるトリチウムの大量使用が考えられるため、トリチウムの高精度の計測によるモニターが必須である。トリチウムの重要な化学形であるトリチウム水は残留している酸素と反応して容易に生成される上に、人体への影響もトリチウム分子よりはるかに大きいといわれる。超高濃度のトリチウム水では、放射線化学反応を起こす可能性がある。その場で化学反応を追跡することが可能である分光学的手法による超高濃度トリチウム水の自己放射線分解反応を研究することを目的として、本年度は以下のような実験を行った。 まず二重管のセルを製作し、より安全に超高濃度トリチウム水の実験が行えるようにした。トリチウムの漏洩防止のために、真空テストを慎重に行い、トリチウム水の合成および分光実験での問題がないかを確認した。さらに重水素とCuOを用いた重水の合成実験(コールドラン)を行い、プラチナ触媒を利用することで、触媒のない場合と比較して低温で水が合成できることを確認し、より安全な実験条件を確立した。重水と軽水の混合物を利用した分光実験によって分光測定が行えることも確認した。以上により、放射性トリチウムを利用した実験準備を整えることができた。また、測定したトリチウム水の分光データはHTOか、T2Oかおよび、振動回転状態の帰属ができていなかったが、今年度、量子化学計算の専門家との共同研究により、帰属をつけることができ、ほとんどの遷移がHTOによるものであることがわかった。現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トリチウムは放射性物質であるので、真空テストに時間をかけたこと、また放射崩壊により減少するので、合成実験は今年度に持ち越すこととしたが、初年度(昨年度)はトリチウム水の化学反応実験のための準備を行う予定であり、真空テスト、分光テスト、合成テストを終えて、トリチウム水が合成できる準備が整ったため概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
トリチウム水を合成し、赤外域に吸収を持つ分子種として、放射性同位体であるトリチウム置換体を含めた水、特にこれまでの計測でほとんど測定されていないT2O、反応中間体であるOHラジカル、OTラジカルに絞って反応の研究を行う。これらの分子種は波長約1.4ミクロン前後に倍音の振動を有しており、これまでのシステムを有効利用した高感度近赤外分光を行う。T2Oやトリチウム化したOTラジカルの近赤外分光データは存在していないので、周波数予想の比較的容易なOTラジカルT2Oの分光データを収集する。本 実験で必要と考えられる1 Ci程度のトリチウムからは370億molecules/sの速度でOTラジカルが生成されと考えられる。しかし超高濃度トリチウム水条件下でのOTラジカルの寿命は不明であるため、反応速度が非常に速い場合には量が分光検出にかからない可能性がある。その場合には安定な生成物であるトリチウム化過酸化水素の生成速度から推定する手法に切り替えるなどする予定である。全圧も反応を推定するのに重要な手段であるので、こちらもモニターを行う
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
トリチウムは放射性物質であるので、真空テストに時間をかけたこと、また放射崩壊により減少するので、合成実験は今年度に持ち越すこととしたため、原料であるトリチウムの購入は今年度に持ち越した。
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