2013 Fiscal Year Research-status Report
STOR-Mトカマクの外側垂直磁場コイルと非線形素子によるプラズマ電流延長実験
Project/Area Number |
24561026
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
御手洗 修 東海大学, 熊本教養教育センター, 教授 (00181925)
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Keywords | トカマク実験 / 鉄心 / スフェリカルトカマク / 電流立ち上げ / 国際研究者交流 / カナダ |
Research Abstract |
本研究の目的は,カナダ,サスカチュワン大学のSTOR-M鉄心トカマクにおいて外側オーミックコイルを用いてプラズマ電流をスタートし,鉄心飽和後もプラズマ電流を維持制御できるかの実験研究を行うことである.昨年度それが可能であることを示したので,当該年度は運転領域の拡大,巻き数依存性等を調べることにした. [1]中心オーミックコイルと垂直磁場コイルを切り離し,4巻きの外側オーミックコイルで運転領域の拡大を目指した.第3バンクのコンデンサーを昨年より高電圧に充電しテストしたところ,回路のダイオードが壊れ交換,修理に追われた.装置が古くなり絶縁が劣化していたのが一因である.修理完了後プラズマ生成を行ったが,リミターを交換していたため以前の放電が再現できなかった.放電洗浄を10日間以上行った後,良い放電が得られた.しかし放電の安定性は悪くプラズマ位置の変動に敏感だったので第一の実験は取りやめた. [2]外側オーミックコイルを6巻きに増やして昨年の4巻き実験と比較することを目標として,コイル上下一対を追加する工事を行った.このとき鉄心のヒステリシス曲線を調べた.当該年度は装置の種々のトラブルのため修理に時間を費やしたが,最終日になってプラズマ生成実験ができ18kA程度のプラズマ電流スターアップに成功した.第3バンクを印加する実験も行い,巻き数を増やすと鉄心の飽和時にプラズマ電流パルスを延長させることはやや難しくなる傾向をしめす結果が得られた.それは鉄心の未飽和から飽和への遷移時間が短くなり,制御が困難になるからと考えられる.鉄心を用いたST炉の設計において,鉄心から空心コイルへ移行するにはできるだけ巻き数を減らして鉄心との結合を弱くした方がよいという重要な知見が得られた.この種の研究は世界中どこも行っていないので,世界に先駆けた有用な研究結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)本実験で重要な外側垂直磁場コイル(外側オーミックコイルと同じ)による鉄心のヒステリシス特性を測定できた.これによって鉄心の磁気特性を詳しく知ることができ,本実験を的確に進めることができるようになり実験結果の正しい解釈が可能となった.実験前に行った回路計算と今までの実験結果より,垂直磁場を余分に生成する主垂直磁場コイルを使用しない方がよいことが明らかとなった.プラズマ位置は真空容器上に設置したフィードバック用の垂直磁場コイルで制御し,フィードバック制御が可能な時間内に鉄心を飽和させるためにバイアス電流をかけない運転方法を採用した.このことが第1年目の鉄心飽和実験の成功の鍵となった. (2)第3バンク放電回路の製作も1年目に終え,その印加実験も行えた.その結果,鉄心が飽和してもプラズマ電流を維持できることがわかり,世界初の原理検証実験が成功するに至った.結果は2013年バルセロナで開かれたISFNT国際会議で発表し,2014年1月Fusion Engineering Designに論文採択が決まった. (3)当該年度にはさらに種々の第3バンクコンデンサーを利用できるようになった.外側オーミックコイルの巻き数も4巻き,6巻きと選択できるようになり,多くのトラブルに見舞われたが運転領域拡大の試みが可能となった. (4)当該年度の外側オーミックコイルが6巻きの場合のデータと解析結果は2014年10月サンクトペテルスブルグで開かれるIAEA (Fusion Energy Conference)国際会議にて,O. Mitarai, et.al., Plasma current start-up experiments without central solenoid というタイトルで発表する予定である. 従って,「研究の目的」の達成度は良好である.
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Strategy for Future Research Activity |
第1年目の実験は大成功に終わり,第2年目の実験は困難ではあったが最後に結果を残せた.第2年目の実験時に本装置に用いられているコンデンサー回路に限界があり,大幅な拡張実験は困難なことが明らかとなった.それを解決するにはダイオード保護用のスナバー回路を取り付ける必要がある.現在その回路計算を行っている.しかしながら最適なスナバー回路の調整と付加は短期間では達成できない可能性が大きく,困難が予想される.そのため装置を安全に運転するために第3バンクコンデンサーの電圧を低電圧の150V程度で実験することを考えている. 従って,今後の実験計画は以下の通りである.(1)第2年目に実行できなかった外側オーミックコイルが6巻きの場合の最適化実験を低電圧で詳しく行う.(2)4巻きの場合には,バイアス電流のありなしでの放電を比較し,鉄心の未飽和と飽和時の比較検討を行う.(3)バイアスをかけてプラズマ電流の増大化と鉄心の飽和実験を行う.(4)鉄心飽和中のプラズマ位置を外部から制御し,放電のさらなる改善を図る. また,(5)実際に鉄心を用いたST炉を想定し,どのような鉄心にすればよいかを計算によって調査する. さらに将来的には以下のようなことが考えられる.鉄心が飽和後にプラズマ電流をさらに大きくランプアップする実験は本トカマク装置では不可能である.何故なら電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)によるプラズマの同時加熱が必要だからである.そのような実験を行うには,例えばEUのJETトカマクといった鉄心とECRHを有する装置との国際共同研究が考えられる.
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