2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24561037
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡本 一将 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10437353)
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Keywords | レジスト / パルスラジオリシス / 放射線、X線、粒子線 / 放射線化学 |
Research Abstract |
固体高分子の放射線環境下における応答性は、原子炉や宇宙空間での利用や高分子の改質・機能化といった様々な産業応用にとって重要である。さらに近年、その新たな産業応用として考えられるのが、レジスト材料を用いた極端紫外光や電子線を用いたリソグラフィ技術への適用である。本研究は、このように様々な用途が期待される固体極薄膜高分子中での放射線化学反応を明らかにすることが目的である。本年度は以下の研究を実施した。 1)自由電子レーザーを想定した高密度照射エネルギー場でのイオン化反応について、モンテカルロシミュレーションを行った。レジスト内に生成する対イオンの数を変化させ、その結果減少する対イオン数に関連する時間的挙動について調べ、昨年度報告を行った極端紫外自由電子レーザーのレジストへの露光、現像結果との比較検討を行い、イオン化密度増加による感度低下の要因を明らかにした。 2)固体高分子中の放射線化学反応を明らかにするために、ポリ(4-ヒドロキシスチレン)(PHS)をレジストモデル化合物とし、溶液濃度を高めることによって擬似的な固体レジストを再現した。これをサンプルとして、電子線パルスラジオリシス法を用い、PHSのラジカルカチオンからの脱プロトン反応について直接測定を行った。その結果、脱プロトン反応による減衰過程だけでなく、ラジカルカチオンの遅い生成過程も観察できた。これは、マルチマーラジカルカチオンの前駆体(会合していないモノマーラジカルカチオン)の脱プロトン反応が遅くなったことに起因している。さらに溶液粘度が上がることにより脱プロトン反応が遅くなることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である固体薄膜高分子中の局所的イオン化反応について、薄膜内のイオン化反応のシミュレーションを行うことにより、理論的な解釈を行えるようになった。さらに、固体サンプルをパルスラジオリシスで測定できる手法を確立できたことにより、詳細な放射線化学反応の追跡が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度同様にシミュレーションによるアプローチを積極的に進めるとともに、電子線パルスラジオリシスによる固体サンプル中での放射線化学反応を明らかにしていく。さらに固体中の高分子のイオン化ダイナミクスについて、動的光散乱を用いたアプローチを試みる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用額の90%以上は予定通り使用を行ったが、旅費で格安航空券の利用を積極的に行ったため、計画よりわずかに少なくなった。 消耗品:試薬を主に購入する。 旅費等:大阪大学においてパルスラジオリシス実験を行う予定であり、旅費が必要である。また、成果の発信として国内学会で発表を行うための旅費も計上した。論文発表を行うことを想定して、論文投稿料も計上している。
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Research Products
(16 results)