2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24561046
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
青柳 登 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究員 (80446400)
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Keywords | ウラン錯体 / レーザー分光 / イオン液体 / 機能材料 |
Research Abstract |
2年目の本年は、初年度で得られた有機ウラン結合での結果に関する知見を発展させ、特に、U-N配位結合に基づく新たな4価ウラン錯体の非水溶媒中での発光現象に注目した。まずハロゲン化物、UX4 (X=Cl, Br)の合成は石英反応管において酸化ウラン粉末をCX4ガスと400℃にて、フッ化物、UF4はニッケル反応管においてUO3をHFガスと600℃にてそれぞれ反応させて合成した。ヨウ化物、UI4は定量した金属ウランターニングとヨウ素とを石英管に真空封入し、250℃昇温下で反応させて合成した。結晶相は粉体PXRDで同定した。これらの液体と粉末はアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で接触させ溶解させた。この試料のUV-Vis-NIR(紫外可視近赤外)吸収スペクトルおよびTRLFS(時間分解型レーザー誘起蛍光分光)測定を行なった。 吸収スペクトルでは鋭い5f→5f遷移がジオキサン中で6,000-10,000 cm-1に、5f2→5f16d1遷移が16,000-37,000 cm-1に観測された。これらのスペクトルピークは既往の別の有機溶媒中における研究と対比して近い値を示した。イオン液体中では、高エネルギー側までピークが広がって検出された。化学組成が異なる結果、配位数もそれぞれ6や8となると考えられ、この状況下で特にイオン液体中では配位子の影響により空間的に軌道が広がっていると考えられる。 時間分解スペクトルからは同一試料からであっても、励起パルスからの遅延時間により変化することがわかった。これはナノ秒オーダーの発光寿命の4価錯体と数十マイクロ秒オーダーの6価錯体が混在することによるとみられる。4価錯体の発光寿命はジオキサン中で12. 8 nsイオン液体中では18.6 nsとなり、1.5倍程度長くなっていることからも上述の軌道の広がりを説明することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
有機ウラン骨格を主軸とした配位化合物の合成および光物性の測定に関しては概ね順調に進行している。特に、低酸化数のウラン化合物が非水溶媒中で吸収・蛍光ともに鋭い5f-5f遷移に伴うピークをみせることが確認された点は意義深い。しかしながら、交付申請書に記載した中には「イオン液晶」の創成を目指すとあり、現時点でこれには至っていない。液晶を観測する手法である偏光顕微鏡に設置する加熱冷却ステージは導入された。これらを総合すると、物性評価法のための分子設計および計測システムが達成され、液晶創成は今後ということで,研究の目的に関して5割は達成されたが、6割以上を合格点とすると、最終年度ではイオン液晶あるいはイオン液体の合成を達成することが新規化合物の創成には必要であり、課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
合成物(四ハロゲン化ウラン,UX4)の有機溶媒中およびイオン液体中における時間分解発光スペクトルを取得することに成功したものの、これを出発物質とした新規化合物の合成および物性評価までは到達していない。これまで二ヵ年にわたる研究結果により、U(IV)-N結合(ウラン(IV)-窒素)を元に分子設計した化合物が構造化された紫外可視近赤外吸収スペクトルおよび時間分解蛍光スペクトルを示すことがわかった。最終年度ではこの知見を元に、1-アルキル-3メチルイミダゾリウム誘導体およびチオシアン酸を含むイオン液体に注目し、ウラン(IV)-オクタキスイソチオシアネート塩を合成する。この時に、アルキル鎖長を適当に選定することで室温固体となる物質を合成し、単結晶構造解析を目指す。これにより分子構造と電子スペクトルの相関が明らかになる。この結果を分子設計にフィードバックし、発光イオン液晶の合成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末になって共同著者である研究発表(日本原子力学会春の年会)に急遽出席する必要が生じ、参加した。直前まで概算で余らせたせていたが、実際には日程を短縮することであまりが生じた。 学会参加費として使用予定である。
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Research Products
(11 results)