2012 Fiscal Year Research-status Report
中性子斜入射小角散乱法のための高性能中性子多層膜ミラーに関する研究
Project/Area Number |
24561049
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
丸山 龍治 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究員 (90379008)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 原子力学 |
Research Abstract |
平成24年度は、高性能中性子スーパーミラーの実現に資するために成膜時におけるガス導入やイオンビーム照射方法に関する検討を進めた。その結果、成膜真空槽の雰囲気をモニターする際の圧力範囲が当初の予想より大きい(0.1Pa以下)ことがわかり、導入すべき質量分析器の仕様を再検討し最適なものに改めることができた。これは平成25年度に導入する予定である。 また、本研究の目的であり未だ確立された実験手法とはなっていない偏極中性子を用いた斜入射小角散乱法については、磁気多層膜の面内磁気構造解析を対象に実験手法としての確立を目的とし、中性子束及び実験装置の性能の面から斜入射小角散乱実験において有効なシグナルが得られる可能性の最も高いフランスのラウエ・ランジュバン研究所の中性子散乱実験装置に対して実験課題申請を行い査読を経て受理された。ビームタイムは平成25年度に割り当てられ、次年度以降も継続して研究を進める。さらに、実験手法としての確立が阻まれていたもう一つの要因である測定データ解析の複雑さについても、磁気多層膜の面内に横たわる直方体形状で磁気ドメインを仮定し歪曲波ボルン近似を用いて散乱断面積を導出した。これは散乱プロファイルのシミュレーション及び測定データとの比較による解析を可能にするものである。現在は上記実験に向けて準備すべき試料の層厚及び層数等の詳細を決定する作業を進めている。 以上のように、今年度は偏極中性子を用いた斜入射小角散乱法の確立を目的として様々な側面からのアプローチを進めた。次年度以降も目的を達成すべく上記研究を進展させる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要でも述べたとおり、多層膜成膜におけるガス導入やイオンビーム照射方法の再検討を行い、成膜室の雰囲気をモニターする質量分析器の最適な仕様の決定に至った。 また、本研究の目的である斜入射小角散乱法の実験手法としての確立に関しても、有効なシグナルが得られる可能性の高いフランス・ラウエランジュバン研究所の偏極中性子小角散乱装置に対して課題申請を行い、査読を経て受理されビームタイムを確保した。さらに、散乱過程が複雑であることから困難であった散乱データの解析についても、歪曲波ボルン近似から散乱断面積を導出し、散乱データのシミュレーションおよび実験データの解析が可能となった。 以上より、初年度終了時としては順調な達成度であると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の研究実績で述べたとおり、平成25年度以降も偏極中性子を用いた斜入射小角散乱法の実験手法としての確立を目標に以下の内容の研究を継続して進める。 1)入射中性子強度を稼ぐための高性能中性子集光スーパーミラーの実現のための多層膜界面構造の研究を進める。 2)磁気多層膜の面内磁気構造解析を対象とした偏極中性子を用いた斜入射小角散乱実験及びそのデータ解析を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、成膜装置の真空槽内の雰囲気をモニターするために平成24年度に仕様を決定した質量分析計の導入を予定している。費用の面ではこれが最も大きなウエイトを占める。また、斜入射小角散乱のデータ解析のための計算機を導入する予定である。
|