2013 Fiscal Year Research-status Report
入射粒子に捉われない核破砕片生成モデルのための実験的研究
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24561051
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
佐波 俊哉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 准教授 (90321538)
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Keywords | 核破砕片 / 二重微分断面積 / ブラックカーブカウンター |
Research Abstract |
近年の加速器技術の発展に伴い、数10 MeV から数100 MeV のいわゆる中高エネルギーを持つ粒子線は、医療を初めとするさまざまな分野で利用されている。中高エネルギー粒子の照射影響評価のためには、相互作用の基礎データが必要である。中高エネルギー粒子の相互作用の特徴的なものとして、核破砕片生成反応がある。この反応により生成された核破砕片は単位長さあたりのエネルギー付与が格段に大きく、大きな照射影響を引き起こす。この核破砕片の放出を完全に記述するモデルとパラメータはない。本研究は核破砕片放出過程の系統性を入射粒子種やエネルギーも含めた包括的な実測データにより明らかにすることを目的としている。 本年度は、核子入射と原子核入射の場合の核破砕片生成の系統性を調査するための実験データの取得に係わる、検出器の作成と実験を行った。実験条件は、陽子入射25MeVと50MeVとした。ブラックカーブカウンターを用いて、ベリリウム、炭素、アルミニウム、チタン、銅ターゲットに加え、酸素、窒素から生成した核破砕片のエネルギーと角度分布の測定を行った。 この実験では、昨年の予備実験をもとに、ブラックカーブカウンターのエネルギー分解能を上げるために、前置増幅器を内蔵し、さらに半導体検出器を2式内蔵するような検出器を製作しおこなった、この検出器によりこれまで測定がされていた核破砕片に加え、陽子、重陽子、三重陽子、ヘリウム原子核のデータが同時に取得できるようになった 測定で得られた結果と比較するために原子核入射反応を記述するQMDモデルを用いた核破砕片生成断面積の計算を行った。陽子70MeV、ヘリウム原子核70MeV、炭素72MeV入射の実験結果と計算結果を比較し、ターゲットと入射粒子の違いに対する理論計算の再現性の違いについての結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定された、核子入射と原子核入射の場合の核破砕片生成二重微分断面積の系統性を調査するための実験データの取得である、入射粒子種を変えた実験について、陽子25MeV、50MeVのエネルギーについて、ベリリウム、炭素、アルミニウム、チタン、銅、酸素、窒素の各ターゲットについて実験を行った。これまでに得られているデータと比較可能なデータが取得できた。 また、昨年度の検出器の高エネルギー化のための検討に基づき、検出器を改良し、可測定粒子とエネルギーの拡充に成功した。この条件でデータ取得を行い、重粒子入射の際に前方に放出される、よりエネルギーの高い核破砕片に対応することが可能になった。 これらの進展により改良を予定しているターゲットチェンバーの設計を進めることが出来た。 また、測定で得られた結果とQMDモデルを用いた複合粒子入射に対する核破砕片生成断面積の計算結果の比較を行った。70MeVについて比較を行い、このエネルギー領域に対応する新たな核反応モデルが必要であることを明らかすることができた。 以上により、本課題はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に測定した実験データの整理を進め、追加の実験データを取得する。実験データの取得に際しては、本年度開発した高エネルギー粒子の測定に対応可能なブラックカーブカウンターと半導体検出器を組み合わせた検出器を利用して行く。 本年度開発した検出器の設置性と測定した実験データのターゲット依存性、角度分布を考慮し、ターゲットチェンバーとビームライン機器の製作、実装を行う。このターゲットチェンバーとビームライン機器は、ブラックカーブカウンターを複数台同時に設置し、より多くのターゲットをセットするとともに、ターゲット透過後のビームをモニターする機構を備えるものとする。また、ダンプを別に設置して測定のS/Nを上げる。 取得したデータについて引き続き系統性を整理する。整理のための表式は、核子入射による核破砕片生成を記述したマクスウェル分布にクーロン障壁の寄与を加えた式を基本に検討する。また、既存の多粒子輸送モンテカルロコードによる核破砕片生成二重微分断面積の計算も行い、その結果の入射粒子依存性について調査するとともに、実験結果がどの程度再現できるかについての確認を行う。以上をまとめ最終的な結果とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の使用予定額のうち物品比の散乱チェンバーの作成に係わる費用を次年度使用額とする。これは今年度改良した核破砕片検出器により拡充された測定対象粒子種に対応した測定対象角度の検討結果を作成に反映するためのものである。 本年度の測定データから測定対象角度範囲が定まったので散乱チェンバーの作成を行うために本年度から繰り越した物品費を使用する。旅費はビーム実験のための移動経費と、成果発表のために用いる。ビーム実験は放射線医学総合研究所のサイクロトロンを用いて行う。成果発表は日本原子力学会の秋の大会と春の年会、核データ研究会を予定している。
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Research Products
(4 results)