2012 Fiscal Year Research-status Report
浮体式洋上風力発電システムの多目的最適制御による浮体動揺と発電出力変動の安定化
Project/Area Number |
24561059
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
涌井 徹也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40339750)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 風力発電 / 洋上風力 |
Research Abstract |
本研究は,今後の導入が期待されている浮体式洋上風力発電システムがトレードオフ関係として抱える『浮体の安定性』と『出力変動抑制』を,数値シミュレーションを通して解決し,再生可能エネルギーを利用した風力発電の更なる普及促進を図るものである.風力発電システムは,一般的に高風速域で発電出力を定格値に保持するために出力制御を行うが,浮体式システムでは浮体動揺に対するダンピング(減衰)効果も保持する必要がある.そこで,浮体式風力発電システムを多入力・多出力システムと捉え,2つの制御目的を共に達成しうる多目的最適制御アルゴリズムを提案することを目的とする. 本年度は,申請者がこれまでに構築した系統連系用風力発電システムの連成解析モデルを改良し,浮体動揺に対する浮体式風力発電システムの動的挙動を解析可能なモデルの構築を行った.1点目の改良として,風力タービン空力解析モデルの改良を行った.翼素・運動量理論に基づく風力タービン(プロペラ型)の空力解析モデルを,浮体の動揺によってヨー角および風の上下流入角度が変化した時の風力タービンの空力特性を解析できるように改良した.また,翼の回転位置(アジマス角)に応じて,各翼のピッチ角を独立して操作できるように改良した. 2点目の改良として,浮体動揺解析モデルの導入を行った.浮体の動揺解析モデルは,波力,復元力,チェーン係留特性などを考慮した集中系モデルで構築し,前述の空力解析モデル,さらには動力伝達装置解析モデル,発電機特性モデルと連成させることで,浮体式風力発電システムの動解析モデルを構築した. 連成させる構成要素が増えることで,連立させる微分・代数方程式の数が大幅に増加したが,数値解法(ニュートン‐ラフソン法とルンゲ・クッタ法の階層的組み合わせ)の高速化により,計算コストの増加を極力抑えたシミュレーションが可能になった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目的は,浮体動揺に対する浮体式風力発電システムの動的挙動を解析可能なモデルを構築することであったが,研究業績の概要に記載の通り,既存の連成解析モデルに対する主要な改良点2点(空力解析モデルの改良と浮体動揺モデルの導入)を組みこむことができ,概ね目的を達成することができた.さらに現実的なシミュレーションを行うためには,現在準定常でモデル化している空力特性の動特性(動的失速やダイナミックインフロー)を考慮できるようにモデルを拡張することが重要になるが,次年度の研究の一環として進めていきたい.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に構築した浮体式風力発電システムの動的挙動解析モデルを用いて,平成25年度は,風速変動と浮体動揺に対する浮体式風力発電システムの動的挙動を解明する.さらに,動的挙動の解明を通して,浮体式風力発電システムの多目的最適制御のための内部モデルの構築を行う. 1)浮体式風力発電システムの動的挙動解明 システムへの入力である風速変動と浮体動揺に対して,定格発電出力と浮体の安定性を保持するために,ヨー角およびフラップ角をそれぞれ操作量としたフィードバック制御ループを組むことで,浮体式風力発電システムの基本的な動的挙動を明らかにする. 2)多目的最適制御のための同定モデルの構築 浮体式風力発電システムを多入力・多出力システムと捉え,その多目的最適制御アルゴリズムとしてモデル予測制御を導入する.そのためには,浮体式風力発電システムの動的挙動を予測する内部モデルを同定する必要があるが,「風速変動」と「浮体動揺」の入力に対して,「風力タービン負荷トルク」,「ピッチ角」,「ヨー角」および「フラップ角」を操作した時の「発電出力」と「浮体動揺に対するダンピング効果」を予測する非線形回帰モデルの導入を検討する.さらに,以上に述べた研究内容について得られた結果をまとめ,研究成果の発表を行う.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は111,517円の研究費を次年度に使用することとなった.これは,計算機の購入金額が当初予算を計上してた時の金額よりも安く済んだためである.本年度構築した空力解析モデルを準定常モデルから動特性モデルに拡張するためには,文献収集,翼空力特性データベースの入手が必要になるため、次年度使用額はこれらの費用に充てる予定である。
|
Research Products
(7 results)