2013 Fiscal Year Research-status Report
浮体式洋上風力発電システムの多目的最適制御による浮体動揺と発電出力変動の安定化
Project/Area Number |
24561059
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
涌井 徹也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40339750)
|
Keywords | 浮体式洋上風力発電 / 最適制御 / 動特性解析 |
Research Abstract |
本研究は,今後の導入が期待されている浮体式洋上風力発電システムがトレードオフ関係として抱える『浮体の安定性』と『出力変動抑制』を,数値シミュレーションを通して解決し,風力発電の更なる普及促進を図るものである.風力発電システムは,一般的に高風速域で発電出力を定格値に保持するために出力制御を行うが,浮体式システムでは浮体動揺に対する減衰効果も保持する必要がある.そこで,浮体式風力発電システムを多入力・多出力システムと捉え,2つの制御目的を共に達成しうる多目的最適制御アルゴリズムを提案することを目的としている. 本年度は,前年度に構築した浮体式風力発電システムの動的挙動シミュレーションモデルを用いて,風速および波変動下での動的挙動の解明を行い,陸上設置式システムの風速変動下での動的挙動との比較も行った.多目的最適制御アルゴリズム構築への知見とするために,浮体動揺に対する負性減衰の低減を重視した制御パラメータ(システムA)と,高風速下での発電出力の制御性能を重視した制御系パラメータ(システムB)を採用し,動的挙動の分析を行った. まず,風速一定の下で波の周期および波高が浮体式システムの動的挙動に及ぼす影響を分析した結果,波周期の影響が大きいことを明らかにした.また,風速水準に応じたピッチ角操作(出力制御)の有無により,浮体動揺に対するダンピング効果が大きく異なり,動揺挙動に大きな影響を及ぼすことを確認した.さらに,風速および波変動下での動的挙動を分析した結果,浮体の動揺周期は風速一定下の場合とほぼ同様であるが,風速変動により動揺が大きくなることを確認した.システムAでは浮体の動揺は小さいものの,発電出力の変動が大きく,システムBでは高風速域で良好に定格出力が保持できるものの,浮体の動揺は大きくなり,発電出力の変動と浮体動揺のトレードオフ関係を明らかにすることができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究目的は,平成24年度に構築したシミュレーションモデルを用いて,浮体式風力発電システムの動的挙動(特に浮体動揺)を解明することであったが,研究実績の概要に記載の通り,風速変動および波変動下での動的挙動を明らかにすることができ,さらに,制御系パラメータの設定が及ぼす影響も明らかにすることができた.得られた知見は,発電出力と浮体動揺の多目的最適制御アルゴリズム構築の基礎となるため,概ね目的を達成することができたと考える.制御系パラメータを大域的に変化させた時のシステムの特性の把握はまだ十分ではないため,次年度の研究の一環として進めていきたい.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の成果である浮体式風力発電システムの動的挙動分析結果に基づき,平成26年度は浮体式風力発電システムの多目的最適制御アルゴリズムの構築を行う. まず,浮体式風力発電システムを多入力・多出力システムと捉え,その多目的最適制御アルゴリズムとしてモデル予測制御を導入する.そのためには,浮体式風力発電システムの動的挙動を予測する内部モデルを同定する必要があるが,「風速変動」と「浮体動揺」の入力に対して,「風力タービン負荷トルク」,「ピッチ角」,「ヨー角」および「フラップ角」を操作した時の「発電出力」と「浮体動揺に対するダンピング効果」を推定する非線形回帰モデルの導入を検討する. 次に,内部モデルを用いたモデル予測制御アルゴリズムを構築する.入力変動に対する最適な操作量は凸二次計画問題を解くことにより得られるため,解法の高速化を検討し,多目的最適制御の効果を明らかにする.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初,スペイン バルセロナ市で開催されるEuropean Wind Energy Conference 2014での成果発表を予定し,論文の提出も行っていたが,国際会議参加期間中に学内での重要な職務が予定外に入り,出張の取りやめを余儀なくされた.そのため,海外出張旅費および会議登録費の支出を行えなくなり,次年度への繰越金が多くなった. 平成26年度は成果発表を行う国際会議として,7月に東京で開催されるGlobal Renewable Energy 2014での発表を予定しているが,さらに,2015年3月にデンマーク コペンハーゲン市で開催されるEuropean Wind Energy Association Offshore Conference 2015での成果発表を行うことを計画している.これにより前年度からの繰越金は予定通り支出できるものと考える.
|