2012 Fiscal Year Research-status Report
バイオマスガス化ガス駆動燃料電池用高ロバスト燃料極の創成と耐タール特性
Project/Area Number |
24561063
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
波岡 知昭 中部大学, 工学部, 准教授 (90376955)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 固体酸化物形燃料電池 / 燃料極 / バイオマスガス化 / タール / メタルダスティングコロージョン |
Research Abstract |
本研究の目的は、燃料電池の燃料ガス中に含まれる炭化水素系不純物に対して耐性をもつ燃料極の開発である。炭化水素系不純物の混入が原因となる燃料極劣化メカニズムには「メタルダスティングコロージョン」と呼ばれる遷移金属の炭素腐食と電極上への「炭化物の析出」がある。本研究では特にこのメタルダスティングコロージョンに対する燃料極の耐性を高めることが目的である。特に本研究では耐性を上げるために2つの手法を採用することとした。一つは、燃料電池燃料極近傍での炭化水素の内部改質反応速度向上を目的とした、電極触媒ニッケルの微粒化による活性点数の増加である。もう一つが、ニッケルと機能性材料との合金化によるメタルダスティングコロージョン耐性の強化である。 平成24年度は前者の電極触媒の微粒子化を目的として、含浸法による電極作成方法に関する検討を行った。この方法は、予め電解質のみで作成した多孔体燃料極に対して硝酸ニッケル水溶液を滴下することで作成するものである。 はじめ、電解質のみで作成する多孔体燃料極がひび割れ、収縮等の問題が発生し、その検討を始めるところからスタートした。乾燥時間、昇温速度、焼成時間、電解質ペーストの塗布タイミング等を試行錯誤した結果、ひび割れの程度を最小にする条件を明らかにすることができた。 その上で、硝酸ニッケル水溶液を滴下することで金属を含浸させることとした。共沈法による検討も行ったが、共沈法では金属が多孔体電極内部に拡散しないことがわかり、含浸法を採用した。含浸法では電極内部まで金属を拡散させることは可能であったが、既存の方法によるニッケル濃度ほどまで高めることはできなかった。 また、上記の方法で作成した電極であるが、電極作成時はニッケルを微粒子化できていたが、900℃還元雰囲気ではシンタリングによるニッケル粒子の成長が生じることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画に対する到達度は90%程度ではあったが、含浸法による電極作成では予見できなかった問題が生じることがわかった。1点目は電解質のみで作成する多孔体燃料極担体の構造欠陥であり、2点目は微粒子化したニッケルのシンタリングによる成長である。電極触媒担体の構造欠陥は作成条件の最適化により、当初よりは減少させることができたが、完全に無くすことは困難であった。また、シンタリングは結果としてニッケル粒子径を1μm程度まで増加させてしまうために、結果として微粒子化が達成できていないことがわかった。このニッケルのシンタリングは滴下する硝酸ニッケル水溶液の濃度や滴下回数を制御しても生じることがわかった。 以上のことから、本法によるニッケル粒子の微粒子化は当初期待した性能を発揮することができないことがわかった。 このような観点から、タールに対して耐性をもつ電極の作成との観点からは達成度がやや遅れ気味の状態にある。
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Strategy for Future Research Activity |
新しいニッケルの微粒子化の方法として、グリシン-硝酸塩燃焼法による微粒子製造法を試みることとした。グリシン-硝酸塩燃焼法とは、簡便な操作で短時間に高収率で良結晶性複合酸化物が得られる特異な合成法として知られている。この方法で作成された粒子は50nm程度と数ナノオーダよりは大きくなるが、微粒子化しすぎるとシンタリングのおそれもある。そこで50nm程度を目標とすることに変更した。この方法は磁性フェライト粒子の製造分野で既往研究があるが、ニッケル粒子、ニッケル-銅合金などについてはほとんど知見がない。そこで、今年度の前半はこちらの合成法について検討を行う。ただし、当初の計画よりも遅れ気味であることから、こちらの微粒子製造法に関しては平成25年度前半に目処をつけ、含浸法と本法のメリット・デメリットを検討した上で、後半からは当初の計画通り、微粒子化が電極劣化抑制に及ぼす影響について実験的に検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年は、前半にグリシン-硝酸塩燃焼法の検討と後半に燃料電池のタール暴露実験を行い、主としてそれらの実験実行に伴う消耗品の購入に使用する。国際学会へは平成25年度後半か26年度前半に参加することを考えている。平成24年度から平成25年度に14764円の繰越金が発生しているが、これは大学の会計規則により、平成24年度の3月31日までの支出とならなかったものである。
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