2012 Fiscal Year Research-status Report
蓄冷材・蓄冷器構造に注目した高性能極低温冷凍機の開発
Project/Area Number |
24561064
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Oshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
増山 新二 大島商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00287591)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼澤 健則 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (30354319)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究では,4K冷凍機の高性能化を目指しエネルギーの利用効率を高めることを目標として始まった。研究目的の概要は,①次世代セラミックス蓄冷材を使用した冷凍機開発,②新しい蓄冷材充填方法の性能評価,の二つである。 当初の研究計画では研究目的①から始めることになっていたが,平成24年度では順番を逆転し,②を中心的に実施した。その大きな理由としては,②の蓄冷材充填方法から派生した,さらに新しい充填方法による研究成果が,外部から高く評価されたためである。その充填方法とは,冷凍機の蓄冷器内の中心軸状にベークライト棒を挿入し,その周りに蓄冷材を充填する,というものである。本構造では,挿入されたベークライト棒の体積分だけ,蓄冷材充填量が減少する。つまり,蓄冷器の熱容量が小さくなる。 本来,蓄冷器熱容量が小さくなれば,蓄冷器効率が下がり,大幅な冷凍性能の低下につながると考えられてきた。しかしながら研究成果から,ベークライト棒を挿入することで,通常の蓄冷材充填方法と比較して,到達温度は若干上昇するものの,冷凍能力はほぼ同程度か,それ以上の能力を発生することも可能であることを見出した。 本構造を採用することで,蓄冷材分量を減少させることができる。これは,高価な磁性体蓄冷材を使う必要が求められている4K冷凍機のコストダウンにもつながると考えられるため,本研究結果の意義,重要度は高いと言える。さらに,入力電力が異なる同型式の2台の冷凍機で性能評価を行ったところ,ほぼ同様な性能が得られていることから,同型式の冷凍機であれば,全ての冷凍機に利用可能である指針を得ている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,二つの研究目的を掲げて実行されている。今年度の実施内容は,それらの内の一つである「新しい蓄冷材充填方法(同軸配置構造)の性能評価」に沿ったものであるが,申請書には記載されていない方法を評価した。この方法は,上記の「研究実績の概要」でも述べているが,蓄冷器内にベークライト棒を挿入するという,さらに新たな蓄冷材充填方法である。研究成果から,適したサイズであれば,ベークライト棒を挿入しても冷凍性能を悪化させることがないことが判明している。逆に,冷凍性能が向上するような条件も確認された。また,この方式は同型の冷凍機であれば,すべてに適応可能である指針を得ている。さらに,磁性体蓄冷材と通常の金属蓄冷材の二種類の蓄冷材で試したところ,同様な結果が得られている。 この方法の最大の利点は,冷凍性能を保ちつつ蓄冷材分量を減少させることができることである。特に,高価な磁性体蓄冷材を減少できることは,冷凍機のコストダウンにつながると考えられる。さらに,今後実施する「次世代セラミックス蓄冷材を使用した高性能4K冷凍機の開発」の研究目的に対しても,本構造は適応可能であると考えられる。 以上のことから,本年度実施した内容は,申請書に記載した研究目的には,完全に合致しないため,達成度は「概ね順調に進展している」を選択した。しかしながら,ベークライト棒を挿入する構造は,今後の冷凍機開発の進展に大きな影響を与える成果として高く評価できると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,第一の研究目的である「次世代セラミックス蓄冷材を使用した高性能4K冷凍機の開発」を実施する。使用するセラミックス蓄冷材はGdAlO3(GAP)とGd2O2S(GOS)の二種である。さらに,ホロミウム銅(HoCu2)と鉛(Pb)を組み合わせ,性能評価を行う。まずは,これらの蓄冷材を通常の充填方法である四層構造(GAP, GOS, HoCu2, Pb)として性能評価を行い,それらの最適割合を見出す。今までの研究経験より,磁性体を蓄冷材とする場合,大きな比熱を有する磁気比熱の転移温度付近で冷凍能力が向上するものの,それ以外の温度領域では比熱が小さくなり冷凍性能が低下することが分かっている。したがって,磁気比熱のピークが3.6KのGAPと5.2KのGOSが低温側に充填されているため,それらの温度付近では性能向上は見込まれるが,逆にそれらの間の4K付近では,性能低下につながる可能性がある。 そこで,第二の研究目的である「新しい蓄冷材充填方法(同軸配置構造)の性能評価」と組み合わせる。それは,GAPとGOSを同軸配置構造とすることである。この構造の特徴は,見かけ上,二つの材料の物性値を利用することができることである。したがって,3.6~5.2K付近で大きな冷凍能力を有する冷凍機開発が可能であると考えられる。 以上の研究を実施した後は,上記の蓄冷器内にベークライト棒を挿入し,蓄冷材分量をどの程度まで減少できるかを検討する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,蓄冷器内にベークライト棒を挿入することで得た研究成果を国内(低温工学・超電導学会)および国際会議(Cryogenics Engineering Conference & International Cryogenic Materials Conference 2013)で発表することが決定している。したがって,そのための参加費,旅費を使用する。また現在,この成果の研究論文を投稿(低温工学)しており,掲載が決定すれば,掲載料や論文別刷料の支払いをする。 また,今年度の研究に必要な消耗品である,高純度ヘリウムガスや蓄冷材等の購入にも使用する。さらに研究成果により,学会発表,研究打ち合わせ等の旅費にも使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)