2013 Fiscal Year Research-status Report
蓄冷材・蓄冷器構造に注目した高性能極低温冷凍機の開発
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24561064
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Research Institution | Oshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
増山 新二 大島商船高等専門学校, その他部局等, 教授 (00287591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼澤 健則 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (30354319)
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Keywords | 小型冷凍機 / 蓄冷材 / 蓄冷器構造 |
Research Abstract |
本研究では,4K小型冷凍機の高性能化を目指しエネルギーの利用効率を高めることを目標として始まった。研究目的の概要は,①次世代セラミックス蓄冷材を使用した冷凍機開発,②新しい蓄冷材充填方法の性能評価,の二つである。 H24年度は,研究目的②の方法から派生した,さらに新しい充填方式を中心に研究を行った。これは,冷凍機の蓄冷器内の中心軸方向に棒状のベークライトを挿入し,その周りに球状蓄冷材を充填する方式である。ギフォード・マクマホン(GM)冷凍機の2段目蓄冷器内にベークライト棒を入れ,鉛蓄冷材を充填させた時の性能評価を行った。 H25年度は,上記の研究成果を学会発表するとともに,投稿した論文が学会誌に掲載された。また,鉛蓄冷材の一部を磁性体蓄冷材であるホロミウム銅(HoCu2)と入れ替え,4Kレベルでの評価を行った。蓄冷に寄与しない棒状のベークライト棒を挿入すると,蓄冷材の熱容量低下に伴い,冷凍性能も減少すると考えられる。しかしながら研究成果より,適切なベークライト棒の挿入は,4Kレベルでの冷凍性能を低下させないことが証明できた。さらにこの方式は,蓄冷材分量の最適値を見出すこともできることが分かった。以上の成果を学会で発表しするとともに,投稿した論文が学会誌に掲載された。 さらに,研究目的①を達成するために,セラミックス蓄冷材による冷凍性能評価を入力電力が異なる2台のGM冷凍機を用いて行った。研究成果から,2台の冷凍機では,蓄冷材の最適割合や冷凍性能の改善度合いに差が生じることが分かった。これは,さらに詳細な研究が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度から開始された本研究は,二つの研究目的を掲げて実施されている。この2年間,目的の一つである蓄冷材の同軸構造から派生した,ベークライト棒を挿入した冷凍性能評価を中心に進められてきた。本研究成果から,4Kレベルでは約10%,20Kレベルでは約40%も蓄冷材の分量を少なくしても冷凍性能が保たれることが実証されている。これは,冷凍機のコストダウン,ならびに軽量化につながる。特に,4Kレベルの冷却を実現するために使用される磁性体蓄冷材は,そのコストが非常に高いため,本研究成果の意義は大きいと考えられる。これらの研究成果は,学会発表のみならず,論文にまとめられ,すでに二つの論文が学会誌に掲載されている。 この研究は,本研究の二つの目的には,完全に合致しないものの,最終目標である「4K冷凍機の高性能化」に向けて,確実に成果を挙げていると考えている。さらに,挿入されたベークライトの効果を定性的に検討した結果,次のステップへ向けた課題が見出され,現在進行中である。以上のことから,本研究の現在までの達成度は「計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成26年度は,以下の二点を中心に研究を進める。一点目は「棒状のベークライトを挿入することによる蓄冷器形状の等価的変化」である。これは,冷凍機の蓄冷器形状は,断面が一様な円筒形状であるが,蓄冷器内の蓄冷材温度,ならびに冷媒であるヘリウムガスの温度の物性変化を考慮した場合,円筒形状が必ずしも最適な形状ではないかもしれない。この点に着目し,研究を進める。しかしながら,実際に蓄冷器形状をパラメータとする実験は,その他の構成部品の形状もそれに合わせて変える必要があるため,簡単にはいかない。そこで,本研究で提案されている棒状のベークライトを挿入することで,等価的に蓄冷器形状を変化できると考えており,これを利用し蓄冷器の最適形状を見出す予定である。 二点目は「セラミックス蓄冷材による冷凍性能」を詳細に調査することである。現在得られている成果をもとに,運転周波数依存性,蓄冷器高温端温度依存性などを調査し,セラミックス蓄冷材の最適運転条件を見出す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画よりもヘリウムガスの消費が少なかったため次年度使用額が生じた。 平成26年度は,これまでに得られた研究成果を国内(低温工学・超電導学会)および国際会議(International Cryocooler Conference)で発表することが決定している。したがって,そのための参加費,旅費に使用する。 また,今年度の研究に必要な消耗品である,高純度ヘリウムガスや蓄冷材等の購入にも使用する。さらに研究成果により,研究打ち合わせ等の旅費にも使用する予定である。
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Research Products
(7 results)