2012 Fiscal Year Research-status Report
多次元定量データに基づく天然出芽酵母の細胞形態多様性の分子機構の解明
Project/Area Number |
24570005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野上 識 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任准教授 (60332996)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞形態 / 出芽酵母 / 遺伝子多型 / 多様性 / 関連解析 |
Research Abstract |
平成24年度は、地理的にも環境的にも異なる場所から単離された S. cerevisiae 36 株を用い、細胞形態情報の定量化と解析を行った。これらの36株は共同研究者の Schacherer (CNRS, France) らにより精密な遺伝子多型マッピングが行われており、実験室酵母株を対照として約 65,000 箇所の SNPs, 約 200 個の欠失が報告されている (Schacherer ら (2009)) ため、 表現型の違いが遺伝子多型に起因するかどうかを関連解析により検討することができる。これらの 36 株および対照として実験室酵母株を加えた 37 株について細胞を培養・固定・染色し、顕微鏡観察により細胞外形・核 DNA・アクチン細胞骨格の形態情報を取得し、酵母細胞形態定量化プログラム CalMorph で細胞形態を501の形態パラメータで数値化した。37 株の細胞形態の違いを統計的に評価するために、各株 5 回ずつの独立実験データを取得した。 形態情報の解析として、まず細胞形態の類似性に基づく野生酵母のグルーピングを行った。研究代表者らが開発した手法を用いて、パターン変化の類似したグループをクラスター解析により検出し、グルーピングの妥当性を統計的に評価したところ、36株の野生酵母には形態の類似したグループが複数存在することが分かった。この細胞形態の類似性に基づくグルーピングが、他の観点からのグルーピング、例えば SNPs から推測される遺伝的系統や単離された生育環境、発酵特性や病原性といった有用形質と関連しているかを調べたところ、遺伝的系統を反映しているグループと反映していないグループがあり、今後関連解析を行う上で遺伝的系統を反映していない形態の取り扱いに留意する必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は解析に必要な天然出芽酵母株の顕微鏡画像を取得することに主眼を置いていた。当初計画していた37株の天然出芽酵母株および対照株について、計画通り統計的解析のために繰り返し実験を5回、のべ185回の細胞培養・固定・染色・顕微鏡観察操作を行い、全てのデータを取得完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、37 株間に存在する細胞形態の違いが遺伝子多型に起因するかどうかを調べるため、ゲノムワイド関連解析を行う。その際、以下の点に留意する。 (1) 本研究計画のように多数の SNPs、多数の表現型データを扱う場合、検定試験数が莫大となり検出力の低下を招く。そこで、一株にのみ存在する SNPs を除く、近接した SNPs はまとめて一つと見なす、標本内分散が大きい形態パラメータを使用しないなどにより、あらかじめ有効な SNPs および形態パラメータを選抜してから関連解析を行い、統計的ノイズの低減を図る。 (2) CalMorph で測定する形態定量データは形態パラメータごとに分布や分布域が異なる。このようなデータで二群間の表現型データの差を検出するために、Nogami ら (2007) ではノンパラメトリックな検定法である U 検定およびその変法を用いたが、本研究計画では37 株の表現型データの分布を混合正規分布にフィット (Fraley (2007)) することで 37 株を表現型に基づく二群に分割し、分割した二群と一致を示す SNPs を二項分布に基づく一般化線形混合モデル (GLMM) (Brostrom(2008)) で検出することで検出力の増加を計る。 (3) 37 株の一部は遺伝的に近縁な集団構造を形成していることがわかっており (Schacherer ら (2009))、37 株を等価に扱うと偽陽性が増加する可能性がある。そこで、SNPs の情報から遺伝的に近縁な集団を決定し、変量効果として GLMM に組み込むことで、偽陽性の減少を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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