2014 Fiscal Year Annual Research Report
多次元定量データに基づく天然出芽酵母の細胞形態多様性の分子機構の解明
Project/Area Number |
24570005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野上 識 東京大学, 理学系研究科, 特任研究員 (60332996)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 天然出芽酵母 / 細胞形態 / 多様性 / 量的形質 / ノイズ表現型 |
Outline of Annual Research Achievements |
地理的にも環境的にも異なる場所から単離されたS. cerevisiae 36株を用い、細胞形態情報の定量化と解析を行った。これらの36株は共同研究者のSchacherer (CNRS, France)らにより精密な遺伝子多型マッピングが行われており、実験室酵母株を対照として約65,000カ所のSNPs、約200個の欠失が報告されている(Schachererら(2009))ため、表現型の違いが遺伝子多型に起因するかどうかを関連解析により検討することができる。これらの36株および対照として実験室酵母株を加えた37株について細胞を培養・固定・染色し、顕微鏡観察により細胞外形・核DNA・アクチン細胞骨格の形態情報を取得し、酵母細胞形態定量化プログラムCalMorphで細胞形態を501の形態パラメータで数値化した。37株の細胞形態の違いを統計的に評価するために、各株5回ずつの独立実験データを取得した。 形態情報の解析として、まず細胞形態の類似性に基づく野生酵母のグルーピングを行ったところ、36株の野生酵母には形態の類似したグループが複数存在することがわかった。これらのグループの中には、遺伝的系統を反映しているグループとそうでないグループがあり、関連解析を行う上で遺伝的系統を反映していない細胞形態の取り扱いに留意する必要があることがわかった。 また、個々の細胞に着目すると、特定のパラメータにおいて同一株であっても細胞によって大きく値が異なる、すなわち標本内分散が大きいパラメータおよび株があることがわかった。さらにこの現象は株によって異なることがわかった。このような現象は表現型のノイズとして知られており、種分化や細胞応答の多様性の原因の一つとして最近注目されている。本研究により、ノイズの緩衝効果の表現型進化における役割についてその一端を明らかにすることができた。
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