2012 Fiscal Year Research-status Report
M期凝縮染色体の構築原理の解明:コンデンシン複合体は染色体上で何をしているか
Project/Area Number |
24570006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須谷 尚史 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30401524)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 染色体 / 染色体高次構造 / 染色体分配 / 染色体凝縮 / 細胞周期 / 転写 / 分裂酵母 |
Research Abstract |
染色体DNAは細胞分裂期(M期)になると凝縮してコンパクトな棒状の形態をとり、この染色体凝縮は均等な染色体分配にとって必須である。コンデンシンは染色体凝縮過程において不可欠な役割を果たすことが知られるタンパク質複合体である。申請者は先行研究でコンデンシン複合体が分裂酵母のM期染色体上で RNAポリメラーゼ II(pol II)と共局在するという予想外の知見を得ていた。本研究課題ではこの知見を発展させ、コンデンシンが凝縮過程において染色体上で果たす役割を解明することを目的としている。今年度に得た成果は次の通りである。(1) コンデンシンおよび pol II の結合する遺伝子がM期に発現しているかを検討した。これら遺伝子はM期にも発現がおきている遺伝子であることが確かめられた。(2) 転写の抑制によりコンデンシンの結合は見られなくなった。また染色体上で異所的に転写を誘導するとコンデンシン結合が誘起されることも見いだした。(3) コンデンシンはヒストンと相互作用しうるという知見を踏まえ、結合部位に特異的なヒストン修飾を探索した。しかし、そのような修飾をこれまでに見いだすことはできていない。(4) コンデンシン変異株は制限温度下で染色体分配の欠損を示す。この表現型が転写阻害剤の添加により影響を受けるかを検討した。その結果転写阻害はコンデンシン変異体の表現型を相補することを見いだした。 以上の結果は、M期染色体上での遺伝子転写は染色体分配にとって阻害的な効果を持つこと、コンデンシンはこの阻害効果を中和することで均等な染色体分配に貢献していることを強く示唆している。凝縮染色体の構築原理に迫る重要な知見である。現在、この仮定される阻害効果の実体について、ならびにコンデンシンがその効果を中和する機構の詳細について、解明を目指した研究を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コンデンシンが RNAポリメラーゼと共局在することの生理的意味を明らかにすることに成功した。研究対象としている現象が生物にとって重要な事象であることが確かめられたといえ、その意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
コンデンシン変異体中の染色体上で生じていると思われる構造異常を検出するため、様々なDNA結合因子(ヒストンや単鎖DNA結合タンパク質)のChIP-seq解析を網羅的に行う。また、構造特異的ヌクレアーゼを活用したアッセイ系を確立し、それを用いた構造異常の検出も試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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