2013 Fiscal Year Research-status Report
M期凝縮染色体の構築原理の解明:コンデンシン複合体は染色体上で何をしているか
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24570006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須谷 尚史 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30401524)
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Keywords | 染色体 / 染色体凝縮 / 染色体分配 / 染色体高次構造 / 細胞周期 / 転写 / 分裂酵母 |
Research Abstract |
染色体DNAは細胞分裂期(M期)になると凝縮してコンパクトな棒状の形態をとり、この染色体凝縮は均等な染色体分配にとって必須である。コンデンシンは染色体凝縮過程において不可欠な役割を果たすことが知られるタンパク質複合体である。申請者は前年度までに、M期における遺伝子転写は染色体分配に阻害的であること、コンデンシンは M 期染色体上で RNA ポリメラーゼ II(pol II)と共局在していること、コンデンシンは遺伝子転写のもつ阻害的作用を中和すべく機能していること、を見いだしていた。今年度は引き続き、上述の発見のより詳細な分子機構を理解すべく解析を行った。得られた成果は次の通りである。 1、コンデンシンが機能していない M 期停止細胞中で転写や染色体構造を調べるための実験系を構築した。 2、構築した系を用いて、コンデンシンはM期の遺伝子発現レベルには影響を与えていないことがわかった。 3、にもかかわらず、コンデンシンは pol II の遺伝子上での動態を制御していることを見いだした。すなわち、M 期細胞で転写途中の pol II が遺伝子上から速やかに排除され転写終結点近傍に蓄積すること、この M 期特異的な分布様式はコンデンシンに依存していることがわかった。 以上の結果は、転写途中の pol II の存在が染色体分配に対して悪影響をもつこと、コンデンシンは pol II のより速やかな進行を促すことで M 期染色体上の進行中 pol II の量を減らすよう作用していること、を示唆している。凝縮染色体の構築には何が大切なのかについて手がかりを与える重要な知見だと考えている。現在、上述の解釈を支持する更なる証拠を得るため実験を続けている。結果の1については、その成果の一部(東京大学薬学部、川島茂裕博士との共同研究によるもの)を学術誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な技術的問題を乗り越え、きちんと機能する実験系を構築することに成功した。この構築した系を用いてコンデンシンが転写を制御する様子を明らかにすることに成功しつつある。当初の予定に見合うだけの進展を得たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
コンデンシンが pol II の伸長反応を制御しているという作業仮説を実証すべく、様々な手法による解析を行う。これまでに蓄積した結果は、コンデンシンが転写領域のクロマチン構造を制御することで、pol II の伸長を間接的に制御している可能性を強く示唆している。したがってクロマチン構造の解析に重点を置いて取り組みたいと考えている。MNase-seq, 3C, NET-seq などの技法を活用する。
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