2013 Fiscal Year Research-status Report
DNA損傷トレランス機構の分子制御メカニズムの解析
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24570010
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
毛谷村 賢司 学習院大学, 理学部, 助教 (70464386)
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Keywords | DNA損傷トレランス / ゲノム動態 |
Research Abstract |
ゲノムDNA損傷によるDNA複製の阻害は、突然変異頻度の上昇などのゲノム不安定性や細胞死を引き起こす。一方で、生物は、複製阻害を回避するDNA損傷トレランス機構を備えている。その中心的な役割を果たす因子として出芽酵母ではRad18やRad5が知られている。また、DNA複製阻害に伴って引き起こされるクロマチンの動態変化は、DNA損傷トレランス機構の制御と密接に関わっていることが予想されるものの、その実体はよくわかっていない。そこで、本研究ではクロマチン動態変化の中核を成すヒストンタンパク質のコード遺伝子の変異ライブラリーを用いて、DNA損傷トレランス機構の制御に関与するヒストン変異体の同定を行った。ヒストン変異体とRAD18遺伝子欠損の二重変異株を解析した結果、DNA損傷剤に対する感受性に変化が見られたものが多数単離された。それらのヒストン変異体について、更に解析を行った結果、数種の変異体についてはDNA相同組換えに異常が見出された。このことから、ヒストンはDNA相同組換えを制御することでDNA損傷トレランス機構の制御に寄与していることが示唆された。 出芽酵母Mgs1は、高等真核生物まで高度に保存されている因子である。Mgs1はRad18と合成致死を示し、DNA損傷トレランス機構の制御に関与することが示唆されているものの、その分子機能はよくわかっていない。そこで、Mgs1とRad18の高温感受性二重変異株からマルチコピーサプレッサーの単離を行った結果、これまでに多数の候補因子が見出された。候補因子の中から原因因子の同定を行った結果、複数について遺伝子を含まないゲノム上の特定領域(非コード領域)が高温感受性株の抑圧に機能することがわかった。これらのことから、DNA損傷トレランス機構と同定した非コード領域とが密接に連携し、ゲノムの安定性を維持していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、DNA損傷トレランス機構の制御メカニズムの解明を目指して研究を遂行している。特にクロマチン動態変化とDNA損傷トレランスの関連性について調べた結果、クロマチン構造の本体であるヒストンがDNA相同組換えを介してDNA損傷トレランスを制御しているという重要な知見が得られた。この重要な知見は、新たな制御メカニズムの発見・解明に繋がるものと考えられる。また、サプレッサー解析においても、DNA損傷トレランス機構と非コード領域とが密接に連携し、ゲノムの安定性を維持していることが示唆された。そのため、今後の詳細な解析により、更なるDNA損傷トレランス機構の制御メカニズム解明に向けての進展が期待される。一方で当初計画していた研究内容の一部については、上記解析を優先的に進めたことにより、計画以上には進んでいない。以上の成果を総合すると、当初予想していた結果以上に興味深いことが明らかになっており、本研究の進捗状況としては順調に進行しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果を基づいて、さらに研究を展開・発展させて行く。研究内容については以下に記す。 1、DNA損傷トレランス機構の制御への関与が予想されるヒストン変異体の解析を行う。具体的には、DNA損傷依存的なヒストン修飾との関連性や、DNA損傷トレランス機構に関与する因子やタンパク質修飾との関連性などについて解析を行う。また、DNA相同組換え機構の異常の原因について詳細な解析を進める。 2、DNA損傷トレランス経路をレスキューするゲノム上の非コード領域について詳細に解析する。具体的には、同定した非コード領域がどのような役割をしているのか、また、どのような制御があるのかについて中心的に解析を行う。また、非コード領域の変異体の作製および解析も行う。さらに、未だ原因因子が同定されていない候補領域については、原因因子を特定するとともに、順次機能解析も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画の一部において非常に重要かつ興味深い結果が得られたため、そちらを優先して研究を進めた結果、当初予定していた使用額を少額であるが下回ってしまったことが原因として考えられる。 翌年度において、本研究の更なる進展のために、本年度の残額(122,538円)については使用する。特に物品費(消耗品)の消費が多く見込まれるため、翌年度に計画している物品費と合わせて使用する予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] A replicase clamp-binding dynamin-like protein promotes colocalization of nascent DNA strands and equipartitioning of chromosomes in E. coli2013
Author(s)
Ozaki, S., Matsuda, Y., Keyamura, K., Kawakami, H., Noguchi, Y., Kasho, K., Nagata, K., Masuda, T., Sakiyama, Y., and Katayama, T.
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 4
Pages: 985-995
DOI
Peer Reviewed
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