2013 Fiscal Year Research-status Report
東北地方太平洋沖地震の潮間帯群集へのインパクト:地震前後の大規模調査による解明
Project/Area Number |
24570012
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野田 隆史 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (90240639)
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Keywords | 地震 / 岩礁 / 潮間帯 / 固着動物 / フジツボ / 加入 / 海洋 / 個体群 |
Research Abstract |
【研究目的】東北地方太平洋沖地震が岩礁潮間帯生物群集に与えた影響とその後の群集の回復過程を明らかにするために,①地震による岩礁潮間帯生物群集の変化とその後の回復過程,②地震による加入過程の変化,③地震後の小規模撹乱後からの回復過程の変化を明らかにする. 【25年度の研究内容と成果】調査は三陸沿岸に存在する5海岸のほぼ垂直な25岩礁に作成した3種類の固定調査区(加入区と遷移区と対照区)で行った.これらの調査区のうち加入区は固着動物の幼生の加入量を,遷移区は局所撹乱からの群集の回復過程を,対照区は群集動態を,それぞれ追跡することを目的としたものである.2013年の5月,7月,12月に,対照区と遷移区において移動性の底生動物の種別の個体数と固着生物の種別の被度及び存否を測定し,加入区ではフジツボ類の加入量を測定した. 得られた対照区と加入区のデータを地震前の複数年に同地点で同様の調査によって得られたデータと合わせて解析し,固着生物の最優占種であるイワフジツボを対象に(1)幼生加入の空間パターン(2)湾単位及び三湾全域における加入量と底生個体群サイズ(3)岩礁間の個体群成長率の違いの決定要因としての幼生加入の重要性,の3点について地震前後の変化を検討した.その結果、 幼生の加入パターンには地震前と比べて顕著な変化は見られなかったが,湾単位及び三湾全域での加入量は地震後に増加し,その変化は底生個体群サイズの増大に伴って生じていたことが明らかになった.また岩礁単位での個体群成長率は,地震前には加入量に依存していなかったのに対し,地震後には強く依存するように変化したことが判明した. 以上の結果は,地震がイワフジツボ個体群に対して(1)ストック-リクルートメント関係を介したメタ個体群レベルでの幼生供給量の増加と(2)局所個体群成長率の幼生供給量への依存性の上昇をもたらしたことを示す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた野外調査をすべて行うことができた.また得られた対照区と加入区のデータを比較・解析し,固着生物の最優占種であるイワフジツボを対象に(1)幼生加入の空間パターン(2)湾単位及び三湾全域における加入量と底生個体群サイズ(3)岩礁間の個体群成長率の違いの決定要因としての幼生加入の重要性,の3点について地震前後の変化を検討することで,本種の個体群に対する地震の影響について明らかにすることができた.これらの結果と関連する成果を2014年3月の日本生態学会大会において3件の講演として発表することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
26年度については,野外調査では全調査項目を前年度と同様の内容で行う.得られたデータに地震前のデータを合わせて解析することで,①地震後のメタ群集の変化と回復過程(対照区のデータを利用),②地震による局所群集の構造と動態の変化(対照区のデータを利用),③地震による加入過程の変化(新旧加入区のデータを利用),および④地震後の小規模撹乱からの回復過程の変化(新旧遷移区のデータを利用)を明らかにする.
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