2013 Fiscal Year Research-status Report
生活型進化からみたハダニ類「属」分類の再検討と新系統仮説の構築
Project/Area Number |
24570014
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 裕 北海道大学, -, 名誉教授 (20142698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 桂 高知大学, 大学院総合人間自然科学研究科農学専攻, 准教授 (40582474)
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Keywords | ハダニ科 / スゴモリハダニ / 造巣行動 / 社会性 / 形態変異 / 分類学 / カシノキハダニ / 歩行器 |
Research Abstract |
ハダニ類のうち、特に分類学上特異的な位置を占める造巣性ハダニ属、Stigmaeopsis属の種について日本産5種、中国産2種をとりあげ、その生態、行動 形態について分析をすすめるとともに、Eotetranychus属の造巣性ハダニについても実験的な分析を行った。 本年度に明らかになった点は、まずStigmaeopsis属の巣サイズの変異が遺伝的なバックグラウンドをもっていること。それ故に、この生態状態は種を区分する重要な形質と見なしうることを論文として報告した。さらに、クマイザサとチシマザサに発生するケナガスゴモリハダニ2個体群の生殖隔離状態とDNAの比較から、これら2個体群がきわめて近縁な別種である可能性が判明した。また、ススキスゴモリハダニにはわが国に2形、中国に1形の合計3変異種が存在し、それらのオスの攻撃性の違い、防衛行動の違い、さらにオスの形態の違いが明瞭になってきた。これらの知見に従来の知見と併せて、現在「スゴモリハダニ類の社会進化(仮題)」という題で総説を執筆中である。 さらに、カシに寄生するカシノキハダニの行動から、この種にも巣を防衛する行動が顕著であり、またオス同士の殺し合いも顕著であることが明らかになった。現在こうした種間や属間の行動生態の違いが、寄主植物の資源分布の違いを通じて社会性変異につながったという新たな仮説のもとで研究を進めている。 また、日本各地で採集したハダニ類の糸・網形成行動と歩行器の形態の関係も逐次検討しており、それらの知見をまとめて「ハダニ類の糸はり行動と進化(仮題)」に関する総説を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者が中国において数ヶ月程度の招聘研究を行っていることもあって、国内での採集調査が当初計画よりは遅れているのが実情である。そのかわり、中国において日本には分布しないハダニ類の生態の観察が行えていることが、本計画にはプラスとなっていいる。またDNAによる系統仮説の構築には十分なサンプル(種数)が必要とされるが、まだ上記の理由で不完全なために、まとまった報告ができないでいる。ただし、研究成果は本年度だけで4本公表されるなど、十分な成果が出ていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度ということで、平成26年度は、精力的にハダニ類の採集を実施し、それらのDNA分析を行っていく。また、ハダニ類が糸をもちいて繰り広げる生活パターンについて、新たなメルクマールを導入することで、より客観的な類型化を行い、それらの機能を解明するとともに、ハダニ類全体の中でこうした行動の変異がどのような意味をもっていたのか、またそれが種分化にどのように重要であったのかに迫る。幸いにも平成26年度には国際ダニ学会大会が京都で開催される予定である。研究代表者、分担者ともに当大会のシンポジウムのオーガナイザーおよび招待講演者になっており、世界的に通用するハダニ類の分類体系について、そこで国際的なレベルでの情報交換・協議ができることが本研究にとって、おおいにプラスになると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
端数が生じ、次年度に有効に使用しようと考えた為。 調査旅費として使用する。
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Research Products
(4 results)