2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24570015
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 岳 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (30221930)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 気候変動 / 高山生態系 / 植生変化 / 生物多様性 / 送粉系相互作用 / 温暖化 / 大雪山国立公園 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高山生態系における急速な植生変化の現状把握とメカニズムの解明を目的としており、環境変動に対する生理特性の応答、繁殖特性の応答、個体群動態、植生構造の変化といった様々なレベルで生じている生態学的プロセスを解明するものである。最終年度は、気候変動に対するハイマツの応答についての野外実験を継続し、気温や日射量の変化に対するハイマツの成長応答の解析を行った。そして、ハイマツの生理活性の季節変動について生育地や標高の違いを蛍光光合成測定に基づき行った。また、高山帯で分布拡大を続けているチシマザサの刈取り実験を継続し、地上部刈取り後のバイオマス回復過程を定量した。さらに、花粉媒介昆虫(マルハナバチ類とハエ類)の季節動態と主要な高山植物の結実状況についての調査を行った。 以上の結果から、ハイマツの年枝成長は日射量の変動よりも気温との関連性が高いことが判明した。一方で、雪解け後の生理機能の回復は立地により応答が異なり、標高が高く雪解けが遅い立地ほど生理機能の回復に時間を要することが明らかにされた。高山帯で分布を拡大しているチシマザサは、繰り返しの刈取りによって地下部のバイオマスが減少し、生産性の回復に時間を要することが示された。従って、ササ刈取りにより高山植物相の回復が期待された。高山生態系で主要な花粉媒介昆虫であるマルハナバチは、季節的な活性変動が顕著であったが、ハエ類は季節を通じて活性が高く、高山植物の送粉機能の季節変動が小さいことが示された。すなわち、気候変動に対する送粉系機能の影響は、ハチ媒花植物で大きいことが示唆された。これらの成果は、生態学会で公表するとともに、複数の学術論文に投稿中、あるいは投稿予定である。
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Research Products
(5 results)