2014 Fiscal Year Annual Research Report
植物の二次代謝物質がアリ共生型アブラムシの起源と進化に与えた影響について
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24570016
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八尾 泉 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 農学研究院研究員 (70374204)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アリーアブラムシ共生関係 / ブフネラ / 共生微生物 / 分子系統樹 / 遺伝的距離 / Tuberculatus属 / コナラ属樹木 / 体色 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブフネラは全てのアブラムシに内在する共生微生物であり,植物篩管液から必須アミノ酸を合成し,宿主アブラムシに供給している。またアブラムシにはアリと共生する種(アリ随伴種)と共生しない種(非随伴種)が存在し,アリ随伴の有無はアブラムシの形態・生理・集団遺伝構造などにその違いが生ずる。
本研究では,アリ随伴の有無とブフネラの系統に関連があるかどうかを調べた。主にコナラ属樹木の葉にコロニーを形成するTuberculatus属アブラムシ23種(アリ随伴11種,非随伴種12種)を対象に,それらの共生微生物ブフネラの遺伝的変異の幅を比較するために,ブフネラの16S-rRNA遺伝子(1331bp)をシーケンスした。最尤法によって構築された系統樹は,体色が薄い(白~黄色)非随伴種の系統のクレードと,体色が濃緑色のアリ随伴種(2種の非随伴種を含む)の系統のクレードの大きく二つに分かれた。これは,ブフネラに起きたある突然変異によって,宿主アブラムシの体色が濃緑色になることとアリ随伴を獲得した可能性があることを示唆するものである。また,系統関係を考慮した比較方法を用いて,体色(淡色か濃色)とアリ随伴(随伴か非随伴)が相関していることも明らかにした。さらにKimura's 2 parameterを基に計算した遺伝的距離は,アリ随伴11種間は非随伴種12種間のものに比べて,有意に小さかった。これはアリ随伴アブラムシのブフネラは,宿主アブラムシが種分化してからまだ時間が経ってないか,進化速度が遅いことを示唆している。
これらの知見は,アリ随伴の獲得がブフネラの進化・系統に与えた影響について探求するきっかけになった。今後は,アミノ酸代謝に関連した複数の遺伝子のシーケンスを行い,アミノ酸をコードする塩基置換において同義置換と非同義置換の割合を計算し,アリ随伴と非随伴で比較する予定である。
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Research Products
(7 results)