2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24570019
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡邉 守 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80167171)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 無核精子 / 有核精子 / 精子移動 / 精包 / 精子活性 / 受精嚢 / 単婚制 / ジャコウアゲハ |
Outline of Annual Research Achievements |
鱗翅目昆虫の雄は有核精子と無核精子という2種類の精子を生産する。前者は通常の精子であるのに対し、後者は授精能力を欠くため、配偶子として機能しない。しかし、雄が雌に注入する精子の8割近くを無核精子が占めるため、無核精子は雄の繁殖成功度を高めるうえで、特異的な役割をもつと想定されてきた。これらの精子は、交尾の際、精包というカプセルに入れられて、雌の交尾嚢に注入される。交尾後まもなく、両型の精子は交尾嚢を出て、受精のための精子貯蔵器官である受精嚢に移動していく。この現象の説明として、受精嚢内の無核精子が雌の再交尾を抑制するという「cheap filler仮説」が有力視されている。 平成26年度は、受精嚢に到達した精子の運動活性の観察に重点を置いた。cheap filler仮説は、受精嚢内の無核精子が有核精子と同等の運動活性を示すことで、充分な量の有核精子が受精嚢に存在すると雌に誤認識させ、雌の再交尾を抑制するという機構を想定している。したがって、この仮説が成立するには、無核精子が受精嚢に到達し、受精嚢内で無核精子が高い運動活性を維持できていなければならない。 これまでに行なった無核精子の活性の研究は、多回交尾制の種(ナミアゲハとクロアゲハ)が対象だったので、本年度は、主として単婚制の種における無核精子の活性を調べた。即ち、アオジャコウアゲハとジャコウアゲハについて、無核精子の雌体内での動態を明らかにした後、ジャコウアゲハの雌体内における精子の活性を調べ、無核精子の役割の解明を試みたのである。その結果、受精嚢へ移動して1週間、有核精子の活性は衰えなかったものの、無核精子の活性は消滅することがわかった。したがって、単婚制の種の場合、無核精子の最後の役割として、婚姻贈呈や有核精子移動補助という従来の説の可能性が高いといえよう。
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Research Products
(10 results)