2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
茂木 正人 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (50330684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷村 篤 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (10125213)
高橋 邦夫 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (50413919)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 南大洋 / 中・深層性魚類 / ハダカイワシ類 / 食性 / 個体発生 |
Research Abstract |
本研究の大きな目的は、ナンキョクオキアミを鍵種とした生態系とは別の、中・深層性魚類が重要となる南大洋の生態系の特徴やその変動を把握することにある。そのデータのひとつとしてハダカイワシ類をはじめとした、優占4種(とくに発育初期)の食性を明らかにすることにある。 本年度は、ナンキョクダルマハダカ(166個体、3.3~31.4 mm)とナンキョクソコイワシ(53個体、8.6~58.4 mm)の消化管内容物の解析を行った。さらにナンキョクソコイワシについては、形態学的・骨学的な手法を用いて発育の特徴を明らかにした。 ナンキョクダルマハダカについては、これまで変態期(約20 mm)より前の発育段階における食性の知見は皆無であり、本研究が最初の報告となる。20 mm以降では従来カイアシ類やオキアミ類が重要な餌となることが知られていたが、20 mm以下の変態前の個体ではクラゲ類や貝形類が重要であることが分かってきた。ナンキョクソコイワシでは25~30 mmで変態が行われ、変態をはさんで摂餌・遊泳能力が向上し、それにともない食性が多様化することなどが明らかとなった。 これらの形態発育・変態にともなう食性の変化は、分布深度とも関連しており、それぞれの魚種が生態系における役割を発育にともない変化させていることを示唆している。このことは、南大洋のなかでもナンキョクオキアミが少ない海域の生態系を理解するうえで重要で、従来多様性が低いと考えられていた南大洋の外洋域の生態系がより複雑である可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定通り2種について解析結果が出てきており、発育にともなう餌生物組成の変化などが明らかとなってきた。これらの結果は第3回極域科学シンポジウムで発表が行われたほか修士論文としても公表された。しかし、餌生物の種同定が進んでいないことから、更なるデータの解釈を行うには現段階では不十分である。同様に、一部については湿重量の測定も行われていない。ナンキョクソコイワシについては解析を予定していた個体数は完了したものの、空消化管個体が多かったことがあり、質のよいデータを得るには更なる解析が必要である。 餌生物の種同定については、研究分担者の協力を得る予定であったが、その前段階の作業において技術的な習得に手間取った。
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Strategy for Future Research Activity |
大きな研究の進め方に変更は無いが、以下の点について修正する。1)当初計画では4種の解析を目指していたが作業に遅れが出ているため、これまで解析を進めてきた2種に加え、ナンキョクナメハダカを加えた3種の解析を目指す。2)50個体を目標としていた解析個体数を増やし、空消化管個体を除いた個体数を50以上とする。追加個体についは2011~2013年の3航海で得られたサンプルがあるため十分に確保できる。 種同定作業の遅れについては、前段階の作業は完了しているので、25年度から着手が可能となっている。また、新たに解析を進める1種についても作業手順が確立しているため、今後は順調に進むものと期待される。データの取得・解析は25年度内に終了させる予定で、10~11月に行われる学会・シンポジウム等で発表を行う。 26年度は予定通り、データ解析やワークショップ、論文の公表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画に変更は無いが、次年度使用額(B-A)は研究協力者等への謝金に充当する。
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