Research Abstract |
交尾器形態が分化したオオオサムシ類では,種間の交尾では交尾器が破損し,繁殖能力が失われることで生殖隔離が成立する.この 際に生じる自然淘汰を,二次的接触域の野外集団を継時的にサンプリングすることにより,直接測定する.新成虫が羽化する8~9月か ら繁殖期前の4月までは,自然淘汰が働く前の段階にあり,交尾器の破損はない.一方,繁殖期後期の6~7月は自然淘汰が働いた後の段 階にあり,交尾器が破損している個体が多いことが,先行研究と予備調査により判明している. 平成25年度は,マヤサンーイワワキ鈴鹿交雑帯,タキハラオサ孤立集団,ウガタオサ孤立集団,アゲマツオサ交雑由来集団にて,繁殖期前期から後期にかけての複数回サンプリングを行った.サンプルは冷凍保存し,順次形態測定とDNA抽出を進めている. 遺伝的解析については,交尾器形態に関連する遺伝子座(QTL)にどのような自然淘汰が働いているのかを,ゲノムクライン法により 明らかにすることを目論んでいる. これまでにマヤサンーイワワキ鈴鹿交雑帯のサンプルを中心にマイクロサテライト12遺伝子座について1000個体程度の遺伝子型決定を行ってきた.この方法は,交尾器形態QTLに連鎖した既知のマイクロサテライト遺伝子座を特定して解析できる利点があるが,遺伝子座数を増やす点では効率が悪い.一方,近年の次世代シーケンサーの急激な進歩は,網羅的な遺伝子型決定を,より低いコストで実現しつつある.今年度は,次世代シーケンサーによる遺伝子型決定を踏まえた基礎的解析を行った.
|